パターソンさんは現在大きな工場を経営しているのよ。だから喜んで私たちの力になってくれるわ。大丈夫、私たちは誰かの世話になるわけじゃない。あなたが働くという決心をしてくれたら……」
この言葉に、ウィルキーは激昂して立ち上がった。
「ちょっと!」と彼は遮った。「どういうことですか。全く意味が分かりません。この僕にパターソン氏の工場で働けとお母さんは言っているのですか? ……そんな! はっきり言いますが、それは悪い考えですよ……」
ウィルキーの言葉、その口調、そのときの身振りにはもはや疑念を挟んだり幻想を抱く余地はなかった。彼はいわば、彼という人間を余すところなく赤裸々に暴露して見せたのだった。マダム・ダルジュレは自分がどんなに酷い思い違いをしていたかを悟った。目から覆いがはらりと落ちた。彼女は自分の夢想と現実とを取り違えていたのだ。自分自身の心の願いの声がそのまま息子のそれだと思っていた。
最初は打ちのめされたが、彼女は身をまっすぐに立て直すと、苦痛と怒りのため全身をわなわなと震わせながら叫んだ。
「ウィルキー! このならず者! お前は一体何を臆面もなく期待していたの?」
そして彼に答える時間を与えず先を続けた。
「さしづめ、愚かな好奇心ね。それに背中を押されてやって来たんだわ。お前が湯水のように遣って来たお金がどこから来るのか、どうしても知りたくなったのね。なら教えてあげる。お前が生きるためにどんな代償を払っていたか、お前の惨めな母親がどんな犠牲を払ってきたかを。ああ、それを一目見たかったのね。いいわ、見ればいい。ここは賭博の溜り場よ。身分の高い人々が集う悪所だから、警察も禁止できず無視している。聞こえてくるざわめきは博打打ち達のものよ。私の家で人は破産するの。ここから帰ると脳天をぶち抜く惨めな人たちがいる。礼節もなにもかなぐり捨てていく人たちもいる。でもそうやって私は儲けているの。百ルイのバンコが成立する度に私の金庫に一ルイ入る仕組なの。お前の懐を潤しているのはそういうお金なのよ……」
あれほど心弱ってぐったりしていたその後に続くこの怒りの爆発、あれほどの卑屈さの後に続いたこの威丈高な態度はウィルキー氏を多少驚かせた。
「ああ、どうか、あの、聞いてください……」と彼は繰り返し言い続けていた。しかしいくら彼女に聞いて貰おうとしても無駄だった。
「考えなし!」彼女はなおも続けた。「お前はここに来ることしか頭になかったのね。そんなことをすればお前の財源が干上がってしまうことになるのに。すべてが終わってしまうってこと、考えつかなかったのね。この私、マダム・ダルジュレに『ああそのとおり、お前は私の息子』と認めさせた途端に」2.28
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