それで説明は十分だと判断したのか、彼はフロランに向かって言った。
「着替えを手伝ってくれ。明日は早い時間に出発しなきゃならんのだ……」
この命令はシュパンの耳にもちゃんと入ったので、彼は翌朝七時にはド・コラルト邸の門の前に張りついて見張りを開始していた。そしてその日は一日中コラルト氏の後をつけた。まずド・ヴァロルセイ邸、それから事業関係の事務所、次にウィルキー氏宅、午後にはトリゴー男爵夫人のもとへ、そして夕方にはマダム・ダルジュレの館へと……。そして使用人たちに混ざり、館の前に次々と横付けされる馬車のドアを甲斐甲斐しく開けに行くという仕事を手伝いながら、母親と息子の間でたった今繰り広げられたばかりの恐ろしい諍いについて小耳に挟んだのだった。
やがてウィルキー氏が乱れた服装で出て来た。その後ド・コラルト子爵も出て来たのでシュパンは尾行を再開したのだが、ド・コラルト氏はまずド・ヴァロルセイ侯爵のもとに立ち寄ってから再びウィルキー氏を訪れ、そこに殆ど夜が明けるまで留まっていた。
そのような具合だったので、その翌日、火曜日の二時頃にシュパンがフォルチュナ氏のもとに出頭した時、彼はド・コラルト氏が操ろうとしている陰謀の糸をすべて掌握したと思っていた。
『相続人探しのプロ』たるフォルチュナ氏は、自分の部下が有能なことは分かっていた。が、これほどとは思っていなかったので、シュパンが詳細かつ明晰な報告をするのを聞いて、秘かな羨望を感じずにはいられなかった。
「私がやったとしても、お前ほどの幸運には恵まれなかっただろうな」と彼は報告を聞き終わったとき言った。しかし、それがどういう理由でなのか、いかにしてなのか、に言及する暇を与えられなかった。彼が口を開いて話し始めようとしたそのとき、ドードラン夫人が現れ、お待ちかねの若い御婦人が到着なさいましたと告げたのである。
「お通ししてくれ!」とフォルチュナ氏はさっと立ち上がって言った。「こちらに!」
フォンデージ家を抜け出し、フォルチュナ氏との面談に駆けつけるのに、マルグリット嬢は嘘を吐く必要はなく、口実を考えるまでもなかった。朝から『将軍』は自分の馬と馬車に試乗するため家を出ており、昼食はクラブで取るから、と言い置いていった。昼食後フォンデージ夫人は仕立て屋と室内装飾業者に用があると言い、夕食前までに帰宅することはないだろうと言い残し、同様にそそくさと出て行った。マダム・レオンはと言えば、昼頃、裕福な彼女の親戚からどうしても来てくれと要請されていたことを突如思い出した……。そして急いで支度をして出て行った。ジョドン医師のもとをまず訪れ、その後ド・ヴァロルセイ侯爵邸に行くつもりなのであろう……。召使い達の方でも、数時間は監視の目から逃れられると察知し、訪問客が呼び鈴を鳴らすかもしれないことなど意に介さず、てんでに好きなことをやりにどこかへ行ってしまった。1.22
「着替えを手伝ってくれ。明日は早い時間に出発しなきゃならんのだ……」
この命令はシュパンの耳にもちゃんと入ったので、彼は翌朝七時にはド・コラルト邸の門の前に張りついて見張りを開始していた。そしてその日は一日中コラルト氏の後をつけた。まずド・ヴァロルセイ邸、それから事業関係の事務所、次にウィルキー氏宅、午後にはトリゴー男爵夫人のもとへ、そして夕方にはマダム・ダルジュレの館へと……。そして使用人たちに混ざり、館の前に次々と横付けされる馬車のドアを甲斐甲斐しく開けに行くという仕事を手伝いながら、母親と息子の間でたった今繰り広げられたばかりの恐ろしい諍いについて小耳に挟んだのだった。
やがてウィルキー氏が乱れた服装で出て来た。その後ド・コラルト子爵も出て来たのでシュパンは尾行を再開したのだが、ド・コラルト氏はまずド・ヴァロルセイ侯爵のもとに立ち寄ってから再びウィルキー氏を訪れ、そこに殆ど夜が明けるまで留まっていた。
そのような具合だったので、その翌日、火曜日の二時頃にシュパンがフォルチュナ氏のもとに出頭した時、彼はド・コラルト氏が操ろうとしている陰謀の糸をすべて掌握したと思っていた。
『相続人探しのプロ』たるフォルチュナ氏は、自分の部下が有能なことは分かっていた。が、これほどとは思っていなかったので、シュパンが詳細かつ明晰な報告をするのを聞いて、秘かな羨望を感じずにはいられなかった。
「私がやったとしても、お前ほどの幸運には恵まれなかっただろうな」と彼は報告を聞き終わったとき言った。しかし、それがどういう理由でなのか、いかにしてなのか、に言及する暇を与えられなかった。彼が口を開いて話し始めようとしたそのとき、ドードラン夫人が現れ、お待ちかねの若い御婦人が到着なさいましたと告げたのである。
「お通ししてくれ!」とフォルチュナ氏はさっと立ち上がって言った。「こちらに!」
フォンデージ家を抜け出し、フォルチュナ氏との面談に駆けつけるのに、マルグリット嬢は嘘を吐く必要はなく、口実を考えるまでもなかった。朝から『将軍』は自分の馬と馬車に試乗するため家を出ており、昼食はクラブで取るから、と言い置いていった。昼食後フォンデージ夫人は仕立て屋と室内装飾業者に用があると言い、夕食前までに帰宅することはないだろうと言い残し、同様にそそくさと出て行った。マダム・レオンはと言えば、昼頃、裕福な彼女の親戚からどうしても来てくれと要請されていたことを突如思い出した……。そして急いで支度をして出て行った。ジョドン医師のもとをまず訪れ、その後ド・ヴァロルセイ侯爵邸に行くつもりなのであろう……。召使い達の方でも、数時間は監視の目から逃れられると察知し、訪問客が呼び鈴を鳴らすかもしれないことなど意に介さず、てんでに好きなことをやりにどこかへ行ってしまった。1.22
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