計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

台風・熱帯低気圧の発生・発達と北上のプロセス

2020年09月01日 | お天気のあれこれ
 こちらのグラフは、台風の発生・接近・上陸数の月別の傾向を表しています。このグラフは、気象庁HPより「台風の平年値」を用いて作成しました。


「接近」は台風の中心が国内のいずれかの気象官署から300km以内に入った場合を指します。
「上陸」は台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を指します。

 このグラフによると、概ね7月~11月は台風の影響に注意が必要となる時期と言えます。特に8月~9月は上陸数のピークとなっており、一層の注意・警戒が必要な時期と言えるでしょう。しかし、これはあくまで「平年値」なので、年によってピークの時期が前後することもあります。

 この記事では、特定の台風についてではなく「一般的な」傾向を述べています。


 さて、台風や熱帯低気圧は(ざっくり言うと)熱帯(熱帯収束帯:ITCZ)の海上で雲が渦を描くように集まって形成されます。その際のプロセスを段階を追って解説します。


 熱帯付近の海上で、下層の暖かく湿った空気が、低気圧の渦を描きながら集まってきます。この渦は気圧傾度力・コリオリ力・遠心力で釣り合い同心円を描く風となり、海面摩擦により中心部に向かう収束となります。



 集まってきた空気は次第に上昇流を生じます。次から次へと空気が集まってくるので、行き場を失った空気は上方へ逃れようとするのです。そして、空気が上昇すると、今度はその中に含まれている水蒸気が凝結します。この相変化(凝結:気体→液体)の際に「潜熱」を放出します。



 この潜熱によって周囲の空気は加熱されるので、暖められた空気には「浮力」が発生します。この浮力に伴ってさらに上昇流を生じ、この空気に中に含まれている水蒸気が凝結します(以後、凝結→加熱→浮力→上昇→凝結…の繰り返し)。この過程で中心に現れる暖気核は台風発達に寄与する一方、周囲を巡る強風は摩擦で(下層の)収束を減じる効果を持っています。



 このような上昇を続け、やがて対流圏界面に達すると、それ以降は上方ではなく「水平」に広がります。下層での収束の際は反時計回りの流れとなりますが、上層での発散では時計回りの流れとなります。


 続いて、熱帯低気圧や台風がどのようなプロセスを経て北上するのか、について話題を進めていきましょう。


 低緯度の熱帯の海上で熱帯低気圧が形成されると、まずは「地球の自転に伴う効果」でゆっくりと北上します。この効果については、過去の記事「ベータ効果のイメージ」を参考にして下さい。

 そのままゆっくりと北上しながら、暖かい海面から熱エネルギーや水蒸気を持続的に補給されて、発達を続けます。やがて、中心付近の最大風速が約17.2m/s(34ノット)以上に達するようになると、「熱帯低気圧」から「台風」と呼ばれるようになります。これが「台風○号が発生した」と報じられます。

 中緯度まで北上すると、太平洋高気圧の縁辺の流れの影響を受けるようになります。北上のスピードも自転車に乗るような速度となります。台風が太平洋高気圧の縁辺流に乗って北上する一方、西から偏西風の波動が(主に「気圧の谷」として)近づいてきます。

 台風が高緯度に近づくと、次第に偏西風の流れに乗り換えます。偏西風の流れに乗り換えると進路は東向きに変わり、北上するスピードも増して自動車に乗るような速度となります。偏西風の影響を受けながら、台風の形は次第に崩れて行き、やがて温帯低気圧の形に姿を変えていきます。しかし、見た目の形は変わっても、もともと持っているエネルギーはそのままです。

 台風が温帯低気圧の形に変わったとしても、その破壊力・影響力が消滅するわけではありません。引き続き、注意・警戒が必要です。




 続いては、海面との関わりに着目してみます。熱帯低気圧や台風は、海面水温が26~27℃以上の暖かい海域で発生します。そして、海面から水蒸気と熱エネルギーの持続的に補給されつつ、発達しながら北上を続けます。

 やがて、高緯度地方に達すると海面水温は下がり、また自らが伴う強風と海面との摩擦によるエネルギーの損失も加わり、次第に衰弱します。その後は偏西風の影響を受けて、次第に温帯低気圧へと姿を変えて行きます。

 しかし、台風が温帯低気圧の形に変わったとしても、引き続き注意・警戒が必要なのは上述の通りです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

角運動量保存の法則

2020年08月26日 | お天気のあれこれ
 いま、回転軸の周りを半径r[m]、角速度ω[rad/s]で円運動する質量m[kg]の質点を考えます。この時、質点mの速度v[m/s]はv=rωで表されます。


 ここで運動量は「(質量)×(速度)=mv=mrω」で定義されます。また、運動量が保存される「運動量保存の法則」も高校の物理でお馴染みと思います。主に直進運動を考える場合です。

 回転運動の場合は新たに、角運動量「(質量)×(半径)×(速度)=mrv=mrω2」という物理量を考えます。この角運動量が保存される「(角運動量)=(質量)×(半径)×(速度)=(一定)」というのが「角運動量保存の法則」です。

 この考え方を空気塊の回転に応用してみましょう。ここでは、円筒形の空気塊が回転している状況を考えます。

 まず、左側の状態では回転半径が大きく、ゆっくりと回転しています。この空気塊が、何らかの理由で生じた上昇流によって、鉛直方向に引き延ばられる状況を考えてみます。

 すると、右側のように細長くなってしまいます。つまり、容積は一定のまま、回転半径は小さくなります。先の「角運動量保存の法則」の考え方に基づけば、半径が小さくなる分、回転速度が増すことになります。

(※厳密には、空気塊の状態までを考慮した「渦位」という物理量があります。この「渦位」については、気が向いたらまたの機会に・・・)

 このメカニズムが働く現象にはどのようなものがあるのか、2つの例を紹介します。


 竜巻は「積乱雲に伴う活発な上昇流」によって発生するものです。この上昇流によって、空気塊は鉛直方向に引き延ばされることで、強い渦が形成されます。

 一方、つむじ風(塵旋風)は「地面が日射によって加熱されることで生じる上昇流」によって発生します。この上昇流によって、空気塊は鉛直方向に引き延ばされます。

 両者は一見すると形が似ていますが、上昇流の要因は異なります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

気候変動と暖冬・寒冬

2020年02月10日 | お天気のあれこれ
 この冬(2019年末~2020年初)は記録的暖冬とも言われるほどの暖冬となっています。そこで、今回は「暖冬・寒冬に影響を及ぼす主な要因」について、(自分の勉強も兼ねて)ざっくりと整理してみます。

(1)エル・ニーニョ現象の影響

 エル・ニーニョ現象とは、太平洋赤道域の東部から南米沿岸にかけて海面水温が高くなる現象です。これに伴い熱帯の対流が東側にシフトすると、その影響は中緯度地方の偏西風波動にも伝わります。この結果、上空の寒気の南下する場所(トラフ)も、通常の状態より東側にシフトするため、上空の寒気も日本付近には南下しにくい傾向となります。


(2)ラ・ニーニャ現象の影響

 ラ・ニーニャ現象とは、太平洋赤道域の東部から南米沿岸にかけて海面水温が低くなる現象です。これに伴い熱帯の対流が西側にシフトすると、その影響は中緯度地方の偏西風波動にも伝わります。この結果、上空の寒気の南下する場所(トラフ)も、通常の状態より西側にシフトするため、上空の寒気も日本付近には南下やすい傾向となります。


(3)負の北極振動の影響

 北極振動とは、北極付近と中緯度の地上気圧が互いにシーソーのように変動する現象です。北極振動には「正の北極振動(AO+)」と「負の北極振動(AO-)」の2種類のパターンがあります。この両者を交互に繰り返しているのです。

 負の北極振動とは、北極付近の地上気圧が平年よりも高く、中緯度の地上気圧は平年よりも低くなるパターンと言います。北極付近に蓄積された寒気が、中緯度地方に向かって放出されます。つまり、北からの寒気の南下が顕著になりやすいので、日本付近で偏西風が南に蛇行すると、日本海側で豪雪に見舞われやすくなります。



(4)正の北極振動の影響(今回の暖冬の要因・その1)

 正の北極振動とは、北極付近の地上気圧が平年よりも低く、中緯度の地上気圧は平年よりも高くなるパターンと言います。北極付近に寒気が蓄積されます。つまり、北からの寒気の南下が顕著になりにくいので、日本付近でも寒気の南下が起こりにくくなります。この冬もこの傾向が現れました。


(5)正のダイポールモード現象(今回の暖冬の要因・その2)

 さて、太平洋赤道域の東部から南米沿岸にかけて海面水温の変動として「エル・ニーニョ現象」や「ラ・ニーニャ現象」が知られているように、インド洋にも海面水温が変動する現象があります。これが「インド洋ダイポールモード」現象です。

 ここで紹介する「正のダイポールモード現象」は、インド洋西部で海面水温が高くなる一方、インド洋東部では海面水温が低くなる現象です。インド洋西部の熱帯域で対流が活発になると、北側の偏西風の流れ方(蛇行の仕方)が変わり、日本付近では北に盛り上がるような形(リッジ位相)になります。つまり、日本付近では偏西風が北側に偏るため、上空の寒気も南下しにくくなります。

 この冬の暖冬傾向は「正の北極振動」と「正のダイポールモード現象」が主な要因となっているようです。ただし、いくら「暖冬」とは言っても、一時的に強い寒気が入って雪が降ることはあります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

梅雨前線からの距離と天気の傾向

2019年06月28日 | お天気のあれこれ
 梅雨前線からの距離と天気の関係を表す法則として「七五三の法則」がよく知られています。これは、梅雨前線からの距離が300km以内であれば「雨」、500km以内であれば「曇」、700km以上離れていれば「晴」の目安というものです。この「七五三の法則」は、対象となる地点が梅雨前線よりも北側にある場合に適用されます。

 一方、梅雨前線よりも南側の場合は、前線から約100~200kmほど南に離れた所で活発な対流が起こりやすくなります。梅雨前線の構造についてはこちらの記事をご参考下さい。

 この両者を合わせたのが下の図です。また、距離感を掴むために「佐渡島で何個分」に相当するかを併記しました。ここでは、佐渡島の南北の距離を約60kmとして計算しています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

層厚を用いた「高気圧の2段重ね」のイメージ

2018年07月21日 | お天気のあれこれ

 夏季の厳しい猛暑の折、その要因として「太平洋高気圧の上にチベット高気圧が重なって『高気圧の2段重ね』となる」という解説を良く見聞きします。簡単な絵に表すとこんな感じです。


 それでは、どうして暑さが厳しくなるのか。「層厚」の考え方を基に考えてみたいと思います。今回は、層厚のイメージについては、記事「層厚と温度風のイメージ」を前提として考えます。主なポイントは次の5点です。

1.空気の層を柱に見立てます。これを気柱と言います。
2.気柱は、ブロック状の空気の塊(空気塊)を縦に積み上げたものと考えます。
3.空気塊はその上に載っている空気の重さを受けて、断熱圧縮されます。
4.このため、気柱の上の方では空気塊は膨張し、下の方の空気塊は圧縮されます。
5.つまり、気柱の上から下に向かって、空気塊の温度は次第に上昇します。

 この考え方に基づいて、チベット高気圧と太平洋高気圧の層厚のイメージを模式的に描いてみます。

 チベット高気圧は、大陸の標高の高い所で形成され、次第に東へ広がってきます。一方、太平洋高気圧は海面上から上空にかけて厚みをもっており、西へ広がります。これを踏まえて、二つの高気圧を高さの異なる気柱として描いています。

 また、気柱の上端から下端に向かって空気塊の温度が上昇する様子を、色分けして表しています。



 二つの高気圧はやがて、部分的に重なります。太平洋高気圧の気柱の上にチベット高気圧の気柱の重さが圧し掛かります。このため、太平洋高気圧の気柱は圧縮され、さらに温度が上がります。



 この結果、この二つの気層は一つの重厚な気層になります。気柱の上から下に向かって、空気塊の温度は次第に上昇する構造が出来上がります。この時、気柱の底面の温度は、重なる前の太平洋高気圧の底面の温度よりも高くなっています。



 このようにして、太平洋高気圧だけに覆われる場合に比べて、太平洋高気圧とチベット高気圧の2段重ねの方が、より暑さが増すと考えることが出来ます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

梅雨前線の構造

2018年06月16日 | お天気のあれこれ
 中学生の頃、梅雨前線は「太平洋高気圧からの暖かく湿った空気オホーツク海高気圧からの相対的に冷たく乾いた空気がぶつかり合ってできる」と学びました。当時は何も考えずに「そんなものか」と受け止めていました(実は当時、天気には全く興味がなかった・・・と言うのも一つの要因です)。


 それから時が流れ、天気図を見るようになってからというもの「それにしては、随分と西側に延びているな・・・」と疑問に感じてました。

 その後、様々な学びの機会を経て、梅雨前線は「太平洋高気圧~モンスーン気団からの暖かく湿った空気オホーツク海高気圧や大陸気団からの相対的に冷たく乾いた空気がぶつかり合ってできる」と理解するに至りました。これなら、梅雨前線が西側に延びることも理解できます。


 さて、南から流れ込む「暖かく湿った空気」と北から流れ込む「(相対的に)冷たく乾いた空気」がぶつかる領域(収束域)では上昇気流となります。すると、その上空では雲が形成され、湿舌が現れます。また、梅雨前線の南側では大量の水蒸気が流れ込むため、発達した積乱雲が発生しやすい状況となります。

 つまり、集中豪雨は湿舌の南縁で起こりやすくなります。この構造を模式的に描いてみます。


 南から流れ込む「暖かく湿った空気」と北から流れ込む「(相対的に)冷たく乾いた空気」は100~200kmの幅を持つ領域でぶつかり合います。この領域を梅雨前線帯と呼び、上昇気流の場となっています。地上天気図における梅雨前線の記号は、梅雨前線帯の北端付近に沿って表記されます。

 一方、集中豪雨を引き起こす水蒸気の大半は、高度約1km以下の低い層の中に蓄えられています。南から流れ込む湿った空気が梅雨前線帯の上に乗り上げる際、梅雨前線帯の南端付近では積乱雲が発達します。これが集中豪雨につながりやすい要因です。

 また、梅雨前線帯の上空3km付近には湿った空気が広がります。この湿った領域は、梅雨前線帯に沿って舌状の形をしていることから「湿舌」と呼ばれています。これは、梅雨前線帯の対流活動の結果として、下層(1km以下)の水蒸気が上空(3km付近)まで運ばれたものです。

 湿舌については「湿舌と梅雨前線」で詳しく述べておりますが、水蒸気のイメージを描くと次の図のようになります。



 梅雨前線帯の南側から、南風に乗って水蒸気が運ばれてきます。この水蒸気はこのまま上昇流に乗って、さらに上空へと輸送されます。これに伴って、積乱雲が形成され、発達します。

 さらに下層から熱や水蒸気が持続的に供給されるため、積乱雲はどんどん発達します。また、上空に昇った水蒸気は、上空の西風に乗って東側に広がります。


 これまで、梅雨前線の南側では「暖かく湿った空気」が流れ込むと述べてきました。

 実は、この「暖かく湿った空気」も大きく分けて2種類あります。それは、中国大陸上に起源をもつ「大陸性湿潤気塊」、東シナ海上に存在する「海洋性湿潤気塊」です。

 梅雨前線帯の形成に伴って、大陸性湿潤気塊が東シナ海西部に流れ込むと、もともと東シナ海上に広がる海洋性湿潤気塊との間でぶつかり合いを生じます。この両者の境界として現れるのが「水蒸気前線」です。

 陸上と海上では供給される水蒸気量は異なります。このため、海岸線沿いに水蒸気量の境界が生じるようです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

南岸低気圧に伴う関東地方の降雪を考えてみる

2018年01月21日 | お天気のあれこれ
 普段は日本海側の地域の気象を見ていますが、今回は冬の気象に関連して「関東地方の南岸低気圧」について考えてみたいと思います。

 私が思うに、関東地方の降雪を考える上で大切なポイントは4つあります。それは、「上空の気温」「地上付近の気温」「降水現象の発生」そして「低気圧の進路」です。

 まずは「上空の気温」です。降水は上空の雲からもたらされますが、雲の中の水分は、多くの場合「氷の粒」の状態になっています。つまり「雪」の状態です。これが、その状態を維持しながら地上に到達する条件を考える必要があります。

 雲の中にある「雪」が落下すると、周囲の気温が上がるのに伴って、次第に融け始めます。やがて「みぞれ」になり、さらに融けると「雨」となって地上に到達します。この時、雪から雨に相変化(融解)する層を「融解層」と言います。



 さて、雲の中から舞い降りる氷の粒が「雪→みぞれ→雨」と融解していく時、その変化に必要なエネルギーを、周囲の空気から「潜熱」という形でもらっています。つまり、周囲の空気は「潜熱を奪われる」ため、自ずと冷えて(気温が下がって)行きます。


 上空の気温が十分に低いということは、融解層の(地上から見た)高度も低いという事です。もし、融解層の高度が高ければ、上空では「雪」であっても、地上に到達する頃には「雨」になってしまうからです。

 上空1500m付近でマイナス3~4℃以下の寒気が、一つの目安と言われています。

 続いて「地上付近の気温」です。もし融解層の高度が低くても、地上付近の空気が暖かいと「雪」から「雨」に融解して(または蒸発して)しまいます。なお、関東平野で降雪が起こる場合には、下層で寒気が滞留することが指摘されています。このプロセスについて考えてみましょう。

 まず、南岸低気圧が関東平野に近づく時、日本海側の地域から山を乗り越えて、寒気が関東平野に流入します。この寒気は「冷たく乾いた」状態になっています。


 これと前後して、南岸低気圧の接近に伴う南東の風や北東の風が、関東平野に向かって流れ込みます。これらの海からの空気は、上記の寒気よりも相対的に暖かいものです。


 日本海側から流れ込む寒気と、海から流れ込む空気がぶつかり合って、沿岸地域に収束帯を形成します。この2つの空気は互いに異なる性質を持っているので、この収束帯を「沿岸前線」と言います。


 日本海側から流れ込む寒気は、沿岸前線によって堰き止められる形となり、関東平野に寒気が滞留し始めます。この寒気滞留層の厚さは1km以下となることが多いと言われています。


 関東平野には持続的に寒気が流れ込み、より冷たい空気が下に蓄積されます。また、沿岸前線の近くでは降水を伴うこともあります。この降水が滞留する寒気の中に入ると、そのまま蒸発して、周囲の空気の潜熱を奪っていきます。この結果、対流寒気はさらに冷却されます。


 そして、「降水現象」をもたらす南岸低気圧が近づいてきます。低気圧の中心よりも東側では融解層の高度が高く、地上では「雨」となります。この雨によって、滞留寒気はさらに冷却されます。


 南岸低気圧はさらに東に進み、低気圧の中心より西側では融解層の高度がさらに低くなります。上空の雲からの落下の過程で融け残った「雪」や「みぞれ」がそのまま、地上付近の寒気滞留層を経て、地上に到達します。


 最後のポイントは南岸低気圧の「進路」です。低気圧の進路が北に寄り過ぎると、南からの暖気の影響が強まるので、気温が上がって「雨」になります。しかし、低気圧の進路が南に寄り過ぎると、降水域が関東平野から逸れてしまいます。低気圧の構造については「温帯低気圧と前線形成のイメージ」を御参考下さい。

 このように「北により過ぎず、南に離れ過ぎない」コースを進むことが、関東平野の降雪のための一つの条件として加わります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

順圧大気の不安定化とロスビー波

2018年01月20日 | お天気のあれこれ
 記事「傾圧不安定波のイメージ」では、傾圧不安定波の形成について取り上げました。これは温帯低気圧の発達メカニズムとして重要な理論として知られています。ここで「傾圧」とは、簡単に言えば「等圧面が傾く」性質です。

 一方、等圧面が傾かない場合を「順圧」と言います。傾圧大気と順圧大気の詳しい定義は専門書に譲るとして、両者の取り扱いの大きな違いは、現象の構造を「立体的(3次元)に考える」か「平面的(2次元)に考えるか」です。

 傾圧大気は、「水平方向」に広がる等圧面が「鉛直方向」に傾くので、立体的(3次元的)に考える必要があります。しかし、順圧大気の場合は、等圧面が「水平方向」に広がるだけで「鉛直流は発生しない」ので、水平方向の平面的(2次元的)に考えることが出来ます。

 今、一層の平面的な大気層を考えてみます。判りやすくするために、真っ直ぐに分割する線を引いてみます(但し、仕切りは設けません)。


 この分割された左右の両側で同じ流れとなっていれば、この大気層はそのままの状態(流れ)を維持し続けます。

 一方、左右の両側の流れが異なれば、両者の境界付近で流れの乱れを生じます。この乱れが小さいものであれば、復元力が働くため、流れの乱れは抑えられ、バランスが保たれます(安定)。


 しかし、この乱れが大きくなるにつれて、境界線上では渦度を生じます。この渦度が強められるにつれて、流れのバランスが崩れ、乱れが増幅していきます(不安定)。


 この乱れが増幅すると、やがて渦列や波動を生じます。例えば、JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)上に生じるメソスケールの渦列やロスビー波などが挙げられます。



 ここからは東西に並ぶ渦列を例に、ロスビー波の西進を考えてみたいと思います。

 次の図の様に、正または負の相対渦度(ζ>0、ζ<0)を持つ渦が東西方向に交互に並ぶ渦列を考えてみます。ここで、緑の線は波動を表しています。正の渦(ζ>0)は波動の下(南)に凸となる位相(トラフ)に相当する一方、負の渦(ζ<0)は波動の上(北)に凸となる位相(リッジ)に相当しています。


 記事「ベータ効果のイメージ」では、「ベータ効果」と「絶対渦度の保存則」の考え方を紹介しました。この記事は、地球自転に伴う台風の北上効果を例に挙げましたが、同じ考え方で、上記の渦列を分解して考えてみます。

 上の図において、波動の「トラフ位相」は「ζが正に変化」する所へ進み、波動の「リッジ位相」は「ζが負に変化」する所へ進もうとします(渦度の移流)。つまり、次の図の様に位相がシフトするのです。


 この結果、波動(渦列)は全体的に西向き(図では左向き)に移動して行きます。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベータ効果のイメージ

2018年01月19日 | お天気のあれこれ
 昨日の記事「絶対渦度と相対渦度のイメージ」では、「渦度」の話を書きました。ある流れ場の中に羽根車を置いたとき、その羽根車を回転させようとする働きのことを「渦度」と紹介しました。今回はさらに「正の渦度」と「負の渦度」について紹介します。

 正の渦度は「反時計回り」の渦度です。右手の4本の指が回転の向き、親指が渦度ベクトルの向きに対応します。


 一方、負の渦度は「時計回り」の渦度です。こちらも右手の4本の指が回転の向き、親指が渦度ベクトルの向きに対応します。


 また、昨日の記事では、「絶対渦度」と「相対渦度」についても紹介しました。以下、簡単に振り返ってみます。

 まずは、コリオリ・パラメーターfです。地球は自転しているので、地球上で運動する物体・流体は既に自転に伴う渦度ベクトルを持っています。

 この大きさ(f)は、地軸上にある極が最大となり、極から赤道に近づくにつれて小さくなります。地球上に存在する者同士では、互いにこの渦度を認識(観測)することはできません。



 続いて、相対渦度(ζ)です。自転する地球上で、fの他に生じる渦度のことです。地球上に存在する者同士が互いに認識(観測)できるのは、こちらの渦度です。


 以上の2種類の渦度(コリオリ・パラメーターfと相対渦度ζ)を合わせたものが「絶対渦度」(f+ζ)です。つまり、「宇宙空間のある地点に固定された場所」から「地球上で生じる渦度」を見た場合には、この「絶対渦度」が認識(観測)されます。

 さらに、「水平面上(2次元)での運動」で、さらに「収束・発散がない」場合は、絶対渦度(f+ζ)は時間に対して一定に保たれます。これを「絶対渦度の保存則」と言います。地球の自転に伴う台風の北上を例にとって考えてみましょう。

 今、北半球上のある緯度に、台風(強い正の渦度を持つ)があると想定します。


 台風を右半分と左半分に分けて考えてみます。

 右側では、南から北に向かう流れとなるため、コリオリパラメーターfも時間と共に「正の向き」に変化します。一方、相対渦度は絶対渦度の保存則に従うため、時間と共に「負の向き」に変化します。


 左側では、北から南に向かう流れとなるため、コリオリパラメーターfも時間と共に「負の向き」に変化します。一方、相対渦度は絶対渦度の保存則に従うため、時間と共に「正の向き」に変化します。



 このように、ζの時間的な変化は、fの変化とは逆向きで、南北方向の移動速度とfの勾配によって生じます。式で書くと「dζ/dt=-βv」と表されます。

 地球上で重要になるのは、相対渦度ζの変化です。右側・左側共に、ζは台風の中心を北向きに押し上げるように変化します。


 このため、地球の自転に伴う効果で、台風は北上する性質があります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

絶対渦度と相対渦度のイメージ

2018年01月18日 | お天気のあれこれ
 次の図のようなベクトル場を考えてみます。


 この流れ場(ベクトル場)の中に、羽根車を置いた場合にどうなるでしょうか・・・。



 流れ場(ベクトル場)の流れの中で、羽根車はクルクルと回りながら下流へと流されて行きます。



 この時、羽根車を回転させようとする効果を表すパラメータが「渦度」です。渦度は、回転軸上の向きを持つ「ベクトル量」として表されます。


 今度は、この羽根車を台の上に乗せ場合について考えてみます。



 この台に向かって横から流れを与えると(ベクトル場を与えると)、この台はゆっくりと回転を始めます。これに伴って、渦度ベクトルを生じます。


 台の上に羽根車を乗せた場合、台と羽根車は一体となって回転するため、両者の持つ渦度ベクトルは共通のものとなります。しかし、これは「台の外から見た場合」の話です。


 羽根車と一緒に「台の上に乗った状態」で、この羽根車を見ると・・・羽根車は止まっているように見えます。つまり、羽根車の持つ渦度(ベクトル)はゼロという事になります。





 回転している台の上で、羽根車にはさらに別の流れを横から加えてみます。これに伴い、羽根車には新たな渦度ベクトルが加わることになります。羽根車には、台の回転に伴う渦度ベクトル(青)と新たに加わった渦度ベクトル(赤)が合わさった渦度ベクトルが働きます。ただし、これは「台の外から見た場合」の話です。



 一方、羽根車と一緒に「台の上に乗った状態」から見てみると、羽根車に加わる渦度ベクトルは次の図のように認識されます。


 以上のように、回転台から一歩離れた所から見た場合と、羽根車と一緒に台に乗った場合とでは、「羽根車に働いている」と認識される渦度ベクトルの大きさは異なります。

 ここで、回転台から一歩離れた所から見た場合の渦度(青+赤)を「絶対渦度」、羽根車と一緒に台に乗った場合に認識できる渦度(赤)を「相対渦度」と言います。

 この「絶対渦度」と「相対渦度」の概念は、地球を取り巻く大気の流れに伴って生じる渦度を考える際に重要になります。「地球上にいる人」が「地球上で生じる渦度」を見た場合は「相対渦度」となる一方、「宇宙空間のある地点に固定された場所」から「地球上で生じる渦度」を見た場合は「絶対渦度」という事です。


 地球は自転しているので、地球上で運動する物体・流体は既に自転に伴う渦度ベクトルを持っています。この大きさは、地軸上にある極が最大となり、極から赤道に近づくにつれて小さくなります。

 これは、(各地点における)自転に伴う渦度ベクトルは、地表面に対して垂直に働くためです。北半球の場合、北極における渦度ベクトルを分解して、地面に垂直な成分が作用すると考えます。この大きさがコリオリ・パラメーター(f=2Ωsinφ、Ω:自転の角速度、φ:緯度)です。

 このように、自転に伴う渦度の大きさ(コリオリ・パラメーター)が、緯度によって変わる効果を「ベータ効果」と言います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

傾圧不安定波のイメージ

2018年01月17日 | お天気のあれこれ
 一昨日の記事「温帯低気圧と前線形成のイメージ」では、次の図のような「寒気と暖気のぶつかり合い」からスタートして、温帯低気圧や前線が形成される様子を描きました。



 この結果、寒気と暖気の接触面と地上が交わる領域上に、前線や低気圧が形成される構造が描き出されました。そして、その上空では西風が強まって偏西風の強い流れが現れます。これは、昨日の記事「層厚と温度風のイメージ」で触れました。



 上空で西風が強化されるメカニズムについては、昨日の記事「層厚と温度風のイメージ」や過去の記事「「温度風の関係」のイメージを描く・・・」で述べた通りです。

 北半球では、等圧面の高度は「南側の方が高く、北側の方が低く」なります。この高低差は、大気の層の(南北方向の)温度差(寒暖差)に相当します。南北間の高度差(温度差)を生じるという事はつまり、等圧面は南北方向に傾いていることであり、この性質を「傾圧性」と言います。

 上空へ行けば行くほど、等圧面の傾きは顕著になるので、西風成分はより顕著に強化されることになります。


 地上では西風の影響はそれほど強く現れるとは限りませんが、上空へ行けば行くほど、ある程度のバランスを保ちつつ、西風の影響が強まることを意味します。ここで、次の図の様に、バランスが保たれている状態を「安定」な状態と呼ぶことにします。




 この状態から、さらに南北間の温度差が大きくなると、傾圧性が強まり、温度風の関係に基づいて、上空の西風がより強化されていきます。そうすると、上空の西風が著しく強化されることになります。次の図のように、西風のバランスがおかしくなってきます。

 このアンバランスな状態を「不安定」な状態と言います。この不安定な状態は、傾圧性が強められたことによって引き起こされるので「傾圧不安定」と言います。




 不安定(アンバランス)な状態が強まると、やがて(バランスのとれた)安定な状態に戻ろうとする働きが生じます。何らかのアクション(現象)を起こすことで、バランスを取り直そうとします。

 つまり、不安定な状態においては「位置エネルギー」をため込んだ状態であり、この状態を解消すべく何らかのアクション(運動)を起こすことで「運動エネルギー」に変える働きを生じるのです。



 アンバランスな状態では、西風成分が強化され過ぎていました。従って、この西風成分の大きさを、バランスの取れるレベルまで落とすことになります。その際、余剰な成分を南北方向に分散させようとします。このため、全体的な流れは、真っ直ぐの東西流(ゾーナル・タイプ)から、南北に蛇行する南北流(メリディオナル・タイプ)へと変化します。

 この波動は、傾圧性が強化されたことに伴うアンバランス(傾圧不安定)を解消するために生じる波なので、傾圧不安定波と言います。冒頭で示した「寒気と暖気のぶつかり合い」によって、上空でもこのようなメカニズムが働いています。温帯低気圧は、傾圧不安定波としての一面も持ち合わせています。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

層厚と温度風のイメージ

2018年01月16日 | お天気のあれこれ
 数年前に「「温度風の関係」のイメージを描く・・・」という記事を書きました。この記事では数式を用いて温度風の関係を考えましたが、ここではイメージを基に考えたいと思います。

 本来であれば、静力学平衡の関係から層厚の式を導くのが理論的な考え方ですが、ここでは数式を使わずに考えてみます。

 いま、一定に質量を持つ「大気(空気)のブロック(塊)」を考えてみます。このブロックは断熱的に膨張・圧縮するものと仮定します。



 そして、このブロックを何段にも積み上げると、大気の柱(気柱)が出来上がります。下の図では、左側の気柱は4段、右側の気柱は2段のブロックが積み上がっています。

 気柱の上には「おもり」が載っています。これは気柱の上にさらに載っている空気の重さを表します。ここで、左右の気柱の上に載っているおもりの質量(大気の総質量)は等しいと考えます。つまり、左右の気柱の頂面における気圧は互いに等しくなります。



 ここで、空気のブロックは気圧に応じて膨張・圧縮するので、上のブロックは断熱膨張する一方、下のブロックは(上からの重みで)断熱圧縮されます。つまり、左右の気柱の1番上のブロックは同じ温度となりますが、1番下のブロックの温度は左右で異なります。気柱全体の平均的な温度を考えると、左側の気柱の方が高く(暖かく)、右側の気柱の方が低い(冷たい)という事が判ります。

 また、気柱の底面(地上)に加わる重さを考えると、左側の気柱の底面には「おもり+ブロック4段」の重さが加わる一方、右側の気柱の底面には「おもり+ブロック2段」の重さが加わります。つまり、左の気柱の底面の方が(地上)気圧が(相対的に)高く、右の気柱の底面の方が(地上)気圧は(相対的に)低い、という事になります。

 続いて、左右の気柱の頂面と両者をつなげる斜面上は、同じ気圧(おもりの質量)が加わります(つまり、一連の面上では気圧は等しい)。

 同様に、上から1番目のブロックの底面と両者をつなげる斜面は、同じ気圧(おもり+1番目のブロックの質量)が加わります。

 さらに、上から2番目のブロックの底面と両者をつなげる斜面は、同じ気圧(おもり+1番目のブロックの質量+2番目のブロックの質量)が加わります。

 ここで、左右の気柱の頂面やブロックの底面をつなげる斜面は、各々同じ気圧が加わる面ということで「等圧面」と言います。この図のように左右の気柱に挟まれた等圧面は斜めに傾いています。等圧面が傾く性質のことを「傾圧性」と言います。

 さらに、上空に行くにつれて等圧面の傾きが大きくなり、傾圧性が強化されます。そのイメージについては「気柱の平均気温と気柱の高さ・地上気圧の関係」の図をご参照下さい。

 左右の気柱の高さの差が大きくなるにつれて、等圧面の傾きも大きくなります。その様子を次の図に示します。



ここまでをまとめると、次のようになります。

・気柱の背が高いほど平均気温も高くなる。気柱の背が低いほど平均気温も低くなる

・気柱の背が高いほど地上気圧も高くなる。気柱の背が低いほど地上気圧も低くなる

・隣り合う気柱の背の高さの差が大きくなるほど、等圧面は大きく傾く(傾圧性が大きくなる)

・隣り合う気柱の平均気温の差が大きくなるほど、等圧面は大きく傾く(傾圧性が大きくなる)

・上空へ行くほど、等圧面は大きく傾く(傾圧性が大きくなる)



 以上を踏まえ、今度はこのような図を考えてみます。先ほどの図を少しだけ傾けてみました。



 ここで、下の図の様に、高い気柱の上にある「空気塊」を考えてみます。この空気塊は、低い気柱に向かって、等圧面の坂を下っていきます。この際、等圧面の坂道が急になるにつれて、この働きはより強くなります。・・・という事は、このまま真っすぐ坂道を下る様子をイメージしてしまうかもしれません。


 しかし、実際はコリオリの力が働きます。北半球上の運動の場合は、進行方向に対して右向きに働きます。このため、空気塊の進路は右向きに傾いていきます。この結果、空気塊は高い気柱を右手に見るように横向きに進むようになります。


 北半球の場合、南側(赤道側)の方が空気の層は(相対的に)厚く(背が高く)、北側(極側)の方が、空気の層は(相対的に)薄く(背が低く)なります。つまり、上の図の場合、空気塊は「西向き」に運動することになります。

 このような空気塊の運動は、2つの気柱の高低差とコリオリの力によって引き起こされます。そして、この気柱の高低差は、気柱の温度の差にも相当します。従って、このようなメカニズムで生じる風を「温度風」と言います。この関係に従って、南北方向の気温差が大きくなる所では、西風成分が強化されるのです。



 上空では温度風の効果がより強く現れます。この結果、上空の偏西風が形成されます。温帯低気圧や前線との関係は次の図の様に描くことが出来ます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

温帯低気圧と前線形成のイメージ

2018年01月15日 | お天気のあれこれ
 前線は「暖気 vs 寒気」のように異なる2つの気団に伴う流れがぶつかり合う所で形成されます。その前線上に低気圧が発生・発達します。この立体的な構造のイメージを描いてみました。

(1) 寒気と暖気が接触することから始まります。
  この時の両者の接触面を前線面(前面)と言います。



(2) 寒気は下降しながら暖気側へ進む一方、暖気は上昇しながら寒気側に進みます。
  この時、寒気は暖気の下に潜り込むため、全体的に盛り下がります。
  一方、暖気は寒気の上に乗り上げる形となるため、全体的に盛り上がります。
  ここで、前線面(前面)と地上が交わる線状の領域を前線と言います。



(3) 地球の自転に伴い、北半球では進行方向に対して右向きにコリオリの力が働きます。
  このため、寒気の下降流と暖気の上昇流も互いに右向きに回転します。
  暖気側から見ると、前線面の右半分では暖気が寒気の上を乗りあげる形(温暖前線)となります。
  一方、前線面の左半分では、寒気が暖気を下から押し上げるような形(寒冷前線)となります。



(4) 横幅を拡張し、高気圧まで併せて描いてみます。
  暖気と寒気の境界で前線や低気圧が形成される様子が判ります。
  また、低気圧の付近では上昇気流となり、これに伴って雲域が広がります。
  一方、その隣では下降気流となり、真下には高気圧が現れます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

等圧線から風向きを読む

2017年01月24日 | お天気のあれこれ

 例えば、次のように平行な等圧線があり、下の方が気圧が高く、上に行くにつれて気圧が低くなるような場合の風向きを考えてみましょう。


 とりあえず、空気は気圧の高い方から低い方に向かって移動するわけですから、気圧の高い方から低い方に向かって等圧線と直角に矢印を引きましょう。


 さらに、北半球の場合は、進行方向の右手向きコリオリの力が働きます。また、地上付近では摩擦の力も働きますので、先ほどの矢印を少し右手向きに傾けましょう。どれくらい傾けるかは一概に言えませんが、とりあえず45°くらい傾けます。


 ここで、気圧の差に伴う力(気圧傾度力)、コリオリの力摩擦力、そして風の向きにはこのような関係があります。


 続いて、このように高気圧低気圧の中心を、等圧線が渦状に取り巻く場合を考えてみましょう。


 とりあえず、気圧の高い方から低い方に向かって等圧線と直角に矢印を引きましょう。


 さらに、先ほどの矢印を少し(45°くらい)右手向きに傾けましょう。高気圧の中心からは時計回りに風が吹き出して行く一方、低気圧の中心に向かって反時計回りに風が吹き込んでいます。


 それでは、前線を伴う低気圧(温帯低気圧)を取り巻く風の流れを読み解いて行きましょう。


 とりあえず、気圧の高い方から低い方に向かって等圧線と直角に矢印を引きましょう。


 さらに、先ほどの矢印を少し(45°くらい)右手向きに傾けましょう。


南からの暖気北からの寒気がぶつかり合い、前線が形成される様子が浮かび上がってきます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寒冷渦のイメージを描く

2016年08月27日 | お天気のあれこれ
 上空に現れる「寒冷渦寒冷低気圧)」のイメージを描いてみました。左側は大気層の重なりのイメージで、右側は鉛直断面のイメージです。


 上空の偏西風(図では「強風軸」と表記)の蛇行が激しくなると、南に凸となる部分(トラフ)が寒気を囲むように分離するような状態に至ることがあります。上空に寒気の核が形成され、その周囲を(低気圧性の)大きな渦で取り囲むような感じにも見えます。

 その一方、対流圏界面付近では暖気核となっています。これは圏界面が垂れ下がることに伴って、その上にある下部成層圏の空気も下がってきて、断熱圧縮され、気塊の温度が上がるものです。

 地上天気図では余り明瞭には現れないものですが、下層では寒冷渦の中心の東側では暖気の流れ込み、西側では寒気の流れ込むため、寒冷渦の南東側では激しい現象を伴う可能性があります。


 ちなみに、高層天気図の等高度線を見ると、まるで大きな目玉のようにも見えます。そして、その中心には寒気核が蓄えられています。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする