計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

本番まで一週間を切りました・・・

2009年11月28日 | 気象情報の現場から
 最近は、事業仕分け関連でなかなかスリリングかつエキサイティングな日々を過ごしています。何だかんだ言っても、ここまで政治の動きに興味や関心を持つようになった事は大きいと思います。文部科学省への意見メール送信も終わった所で、気象学の講義の準備も大詰めの段階です。

 そう、いよいよ12月上旬に「計算局地気象学・特論」の特別講義と称して、遂に大学院(機械工学系)の教壇に立ちます(たった2コマですが)。今回は、工科系大学院の学生さん向けと言う事もあり、うっかり理系用語を出してしまったり、複雑な数式の話になってもノー・プロブレム(むしろウェルカム)なのがありがたい事です。担当の先生からは「内容は自由(一切をお任せ)、とにかくわかりやすく解説する事」と言う御要望なので、換言すると「私のやりたい放題」と言う事になります。

 それならば!と、かつて気象予報士試験の勉強していた当時の私が「こんな解説を受けたかったんだよ!」と思えるような内容を目指しつつも、限られた尺(時間)の中で効率よく進めなければならず・・・と言った感じで、日夜解説の仕方の研究も進めています。これまで、自分の専門分野についてこのような形で講義をする機会が無かったので、今は何をどのように解説するのが良いのか?と、試行錯誤の連続です。いくら塾講師の経験があるとは言えども、塾の場合は良く出来たテキストがしっかり用意されており、カリキュラムも明確に(厳格に)定められています。一方、今回の講義は公式テキストもなければ、ガイドラインとなるカリキュラムさえありません。全てが手探りの手作りです。

 巷では、気象予報士試験については数学や物理が苦手であっても合格は十分可能と言われています。これは、紛れも無い事実です。天気図等の各種資料を読みこなし、大気の壮大な動きや挙動を把握・認識し、これを堪能するのであればそれでも良いでしょう。しかし、様々なデータを科学的に解析し、物理学の法則に立脚した解析モデルや理論の構築を図るのであれば、これは全く別の話です。この能力は一朝一夕に涵養できるものではなく、十分な数式操作のトレーニングや物理現象に対する理解や考え方を身に着ける必要があります

 大学院の学生さんがこれまで大いに学び、存分に鍛え上げてきた数学や物理の諸理論や専門知識(特に熱や流れ、乱流に関する諸工学)が、どのように身近な物理現象である気象にリンクしていくのか、そしてどのようなプロセスで新たな理論構築(解析モデルの構築)を図っていくのか、と言う部分を解説したいと考えています。だからこそ、私は講義内容のレベルについては、一切下げるつもりはありません。それは逆に言えば、講師の側にとっては物凄く高いハードルを自らに課すようなものです。ハイレベルな理論や概念を、限られた時間の中で、わかりやすく解説しなければならないからです。これはある意味・・・「賭け」です。

 もし、講師の側(=私)が楽をしようと思えば、それこそ中学校の理科2分野で学ぶようなお天気の内容を中心に解説すれば事足りるのです。しかし、そのような内容であるならば、私が講義をする意味はありませんし、何より相手に対して失礼な行為であると考えます。むしろ、自分がこれまでに試行錯誤を経て至りついたある種の「悟り」を説く事が、今回の講義では求められているのだと思っています。

 かつて私は悩んでいました。地衡風の式、温度風の式、大気大循環、ジェット気流・・・これらの概念がどうやって一つの全体像の結びつくのか。これらの概念が一つの流れやイメージとして結びつく姿が掴めなかったのです。2種類の通信講座を受講した際に、色々と質問して、参考になる回答は頂いたのですが、自分の満足のいくものではありませんでした。確かに、物理的なイメージというものは掴むのも去ることながら、これを直感的なイメージに表現する事が難しいのは事実です。

 あれから幾年月が流れ、今度は私がこの問いに対する答えを講義する立場になりました。今ではパワーポイントという便利なツールもあるので、色々なイメージを簡単に書く事が出来ます。私の講義では数式も出しますが、数式の誘導よりもむしろ数式に込められた物理的な意味を直感的なイメージでわかりやすく解き明かしたいと考えています。これは勿論、受講生となる学生さんへ向けたものであると同時に、かつて独りで悩んでいたあの頃の自分に対する「回答」でもあるのです。実は、今回の講義の準備を通じて「なるほど、これはそう言うことだったのか!」と漸く疑問が氷解した局面が何度もありました。この感動をどこまで伝えられるかはわかりませんが、出来る限り、しっかりと伝えたいですね。

 配布資料も既に大学側にメール送信しており、先方で印刷及び事前配布してくれていると助かるのですが・・・。

コメント
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