計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

全てのものには理由がある

2008年05月04日 | 気象情報の現場から
「全てのものには理由がある」
「理由って?」
「お前にはまだ早い!」


 と言う携帯電話のCMが、以前ありましたね。

 さて、理由(reason)となるべき状態には、必ず結果(result)となるべき状態が伴うと言う自然の法則を「因果律」と言います。これは要するに、全ての事象はその必然的関係によって存在する事を意味します。だから「全てのものには理由がある」と言えるわけです。

 この因果律の視点に立って熱流体現象の数値シミュレーションを考えてみると、初期条件や境界条件は「reason」であり、これを数値積分する事によって得られる熱流動の様相が「result」になります。

 これまで何度もお話してきたように、局地的な気象データを分析していると異なる方向の流れが多重構造を形成する場合は散見されますが、これをどのように取り扱うのかが悩み所です。要するに、上層と下層で流れの向きが逆転するような構造になるのです。そのままバカ正直に境界条件に組み込むと、境界面近傍で異常な渦を形成して数値計算が破綻してしまうのです。

 それでも以前は、このような場を何とか上手い具合に境界条件に反映させようとして、様々な解析手法を試みておりました。つまり、局地気象を「result」とした場合に、対象領域を含む周辺場の複雑な流れは「reason」であるという視点に立っていたのです。

 しかし、現象の本質を抉り出す「Simple is Best」の立場に立って、現象を簡単化した状態でシミュレーションを実施した時に、その「result」として複雑な流れ場を生じる事例が幾つも再現されました。つまり、当初は「reason」と考えていたものが、実は「result」と考えた方が良いかも知れない、と言う事です。ここで敢えて「かも知れない」と言う表現に留めおくのは、あくまで私のやり方ではそうだったからに過ぎないためです(「たまたま」かもしれないのです)。

 気象の挙動はある一つの現象がある視点で見ると「reason」であるが、別の視点で見ると「result」であると言う側面を大いに持っています。明確にreason/resultと切り分ける事が困難と言った方が良いでしょう。しかし、広大な3次元空間、時間を含めれば4次元時空間の本の一部だけを切り取って、その部分だけを都合よく解析しようとするため、仮想的な「reason」(初期条件や境界条件etc.)を与えなければなりません(モデリング)。この仮想的な「reason」に対する「result」を得ようとする試みが数値シミュレーションになるのです。

 局地気象の動きを捉える際には、やはり何が「reason」で何が「result」なのかを意識しながら解析しますが、やっぱり奥が深いです。
コメント
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