珊瑚の時々お絵かき日記

夫と二人暮らし、コロナ自粛するうちに気がついたら中国ドラマのファンになっていました。

母の入院 2

2014年07月27日 | 母のこと

母の入院している病院は、山の中腹にある。

我が家からは車で40分ほど。

午後降りだした雨を見ながら、母に会いに行こうかどうか迷う。

なじみのない地域、途中の急な坂、激しくなっていく雨足。

最近はとみに運転に自信がなくなっている。

でも、日一日と悪化する母の認知症状を思うと、私のことを憶えている可能性すら

すぐに消えてしまうだろう。

やっぱり行こう、と決めて夫に「行ってくれる?」と声をかけると「いいよ」と言ってくれた。

次からは一人で行くつもりだから、運転は私がした。

母のところへ着くと、土曜日で病院はひっそりとしている。

母は眠っていた。

起こそうかどうしようか・・・

タオルケットの上の置いた手をそっと握ると、母が目を開けた。

私だとわかっただろうか。

「調子はどう?」

話しかけると、無言で目が泳ぐ。

誰か大切な人だとはわかっているが、名前は思い出せない

そんな感じでは、もうなかった。

この人は誰?なぜ、親しげに話しかけるの?

そう言っているようだ。

覚悟はしていたけれど、やはりもう私のことも消えてしまったようだ。

お昼食べた?ときくと頷いた。

でも、美味しかった?と訊くとあちらを向いてしまった。

表情に浮かぶのは困惑。

手を握っても、足をさすってもどこか居心地悪そうで落ち着かない様子が見える。

そうだろう、母にしたら誰か知らない人が話しかけたり、足に触ったりしているのだ。

きっと不愉快なことだろう。

しばらく一方通行の会話をして、また来るね、そう行って帰ってきた。

母の魂はもう去った。

あのベッドに寝ているのは、抜けがらの身体だけ。

つなぎ止めようという努力は、もういらない。

肉体が魂の後を追うまで、ただ穏やかに見守ろう。

そんな気持ちにさせられた日だった。