台湾の記事にコメントを下さった「はんきち」さんのブログにお邪魔してみたら、
台北で王貞治さんの知り合いに連れて行ってもらった王さんもお気に入りの
ディン・タイ・フォン(鼎康豊)のことが書かれていました。
はんきちさんとは台湾、入れ違いくらいの感じだったんですね。
ブログの写真で見ると、ちゃんとお店のサインに日本語でディンタイフォンって書いてあります。
あまりに違和感が無いので気づきませんでした。
鼎康豊のウェイトレスが皆日本語がしゃべれて、しかも一生懸命働いていると一度書きましたが、
どこの国に限らず若い女の子が笑みを絶やさず、こまねずみのように働いている様子は、
実に見ていてこころ楽しくなる光景です。
今はだいぶ変わっているかもしれませんが、ひと昔前の中国では、
上海などの都会でもまだ共産主義の名残りがあって、とにかく従業員の態度が悪すぎ。
フロアーで従業員同士、大声で会話は当たり前、声をかけると面倒くさそうに来て、
今までの笑いが嘘だったように仏頂面でオーダーを取り「それはできない」というのも、
つっけんどんな「メイヨー」一言。
これをわたしは「いわゆるひとつのメイヨー攻撃」と呼んでいましたが、
同じ中華民族でもここ台湾で「メイヨー」を一度も聞いたことがありませんでした。
(いや、一度だけ、故宮博物館の手荷物預かり所で傘を預けようとしたら
「チーバーサンメイヨー」傘は預かれませんと言われているのは分かったけど、
サン(傘)はともかくチーバーはわからず)
台湾で商売をしている方が
「なんかね、台湾のお店(殿方の行かれるようなところ含む)に行くでしょう。
みんな一生懸命日本語喋るんですよ。で、健気なんですよ。
まるで心が洗われるような気がするんです」
なんておっしゃっているのを聞いて、
「なんだって日本の男は拙い日本語をしゃべる女に弱いのか」などと、
「アグネス論争」のとき、なぜか感情的にアグネス側につくマスコミ男性陣を糾弾していた、
林真理子の論陣を思い出しました。
言っては何だけど、自分の国の言葉を一生懸命喋ろうとしてくれる女性に対して、
「自国ではただの男」である日本人が感じる先進国民の優越的な庇護意識ってもんではないのか?
などとやや、いやかなり否定的な見かたをしていたわけ。
一時韓国におじさんたちが鼻の下を伸ばして行っていたころ、おじさんにとって彼女らキーセンは、
片言の日本語で一生懸命お世辞を言ってくれ、ひたすら尽くしてくれる(ような気がする)、
金銭が介在するにもかかわらず「胸キュン」なお付き合いができる「仮想恋人」だったそうです。
15年も前になりますが、上海で上海雑技団を観に行ったときも、こんなカップルを見ました。
日本人男性・・・・小太り、禿気味、全然イケメンとは逆方向のただのおじさん
中国人女性・・・・おじさんよりは若いけど20代後半、きれいではないが不細工でもない
女性は地味な土色の洋服の中国人の中で、中国人すら着ない、真っ白の、
しかしペラペラの化繊のチャイナ服を着て、ただその格好の特異さだけで人目を引いていました。
中国に工場でも持ったのかもしれないおじさんは、月せいぜい一万円くらいのお小遣いで
「現地妻」を囲える身分になってご満悦の様子。
そして、傍で見ていて気の毒になるくらい甲斐がいしくおじさんの世話を焼く女性。
アイスクリームを買ってきたり、うちわであおいだり。
アイスクリームの塊りを安物チャイナ服にべっとりこぼしてしまっても、気にする風もなく、
むしろおじさんの背広を拭いてあげる始末。
まだ中国人の観光客を日本で見ることがなく、
中国で繁華街を歩くと気が付いたら後ろに何人か中国人がついてきて、
服装や持ち物をガン見されていたころです。
女性がハンドバッグのつもりで持っているのが日本の「サンアイ」ショップの紙袋で、
それがくしゃくしゃになっているのが、また何とも言えない哀しい眺めでした。
さて、ここ日月譚のザ・ラルーというホテルで、そのきめ細やかな、しかしマニュアルではない
暖かみのあるホスピタリティに、すっかり台湾のファンになってしまった我が家の面々ですが、
先日「閉店後なのでもうオーダーできない」と言われ、外の椅子に座って星を観ていたら、
お店の女の子がお菓子とお茶を持ってきてくれ、いたく感動したTOはその筆頭でした。
「少し日本語教えてあげたんだけど、なんかもう、すごーくかわいいの。
いまどきこんなコが日本にいるかなあ、ってくらい純朴で『おしん』みたいなの」
「ふーん」
片言日本語で一生懸命喋る女の子に、こやつも他愛もなく感動してしまっておるわい。
わたしもここにきて台湾の女の子って可愛いわねえ、とは思っていましたが、
ここまで感動するのも男だからかしら、などと思いながら話を聞き流しておりました。
ところがホテル滞在最後の夜。
息子がルームサービスにある「パイナップル入り酢豚」を食べたいというので、
日本語の上手い陳さんに案内してもらってホテル内の中国料理を食べに行きました。
しかし、マネージャーは「あれはルームサービスキッチンで作っている北京料理。
ここは上海料理なので、作れと言われれば作るがきっとがっかりさせる」
といってオーダーを受けてくれません。
「これがお薦めあるよ」と強く勧められたのは自慢のトンポーロー。
念のために?故宮博物館の「肉形石」を並べてみました。
左上のパンに、肉を挟んで「トンポーローバーガー」にしていただきます。
端っこの見えているのがエリンギの紅茶炒め。
これらのお皿に舌鼓を打っていると、冒頭の二人組がレストランに現れました。
左が件の「おしんちゃん」ことアイリスちゃん、右がアンバーさん。
二人は仲良しなのですが、おしんちゃんが
「大学時代日本語を一年半も習ったのに、真面目にやっていなかったから今大変」で英語も苦手
(でも履歴書に日本語ができると書いたので採用された)
というのに対し、アンバーはゲストリレーションで働いているくらい英語が達者。
おしんちゃんは、アンバーちゃんをどうやら日本語が通じないときの英語通訳で連れてきた模様。
カンニングペーパーを見ながら彼女が一生懸命伝えるところによると、
仕事をしてお礼をもらうなんてとても嬉しかった、ということだったのですが、またその言い方が可愛い。
「わたしはだいすきです~」
よっぽど嬉しかったらしく、TOのあげた金平糖のお礼に、地元の紅茶と、ホテルで売っている
「パイナップル味のナツメ」を、わざわざ買って持ってきてくれたのでした。
連絡先を、という彼女にTOが「フロントデスクに僕の名刺を名刺を預けておくよ」というと
「フロントデスク~よくない~」
私が横から
「フロントはどこでもホテルのエリート集団だからいろいろ従業員の言動にはうるさいのよきっと」
と察して、翌朝、アンバーねえさんに名刺を預けることでその夜は別れました。
チェックアウトしてから、アンバーさんを探していると、なぜかおしんちゃん、早く来ていて、
わたしたちをみると、遠くからまるで子犬がころがるように走ってきました。
・・・・か、かわいい。
なぜか思わず抱き合うわたしとおしんちゃん。
うちのTOは学校の先生なのですが、その名刺を見たアンバー、大喜び。なぜなら、
「わたしは日本に旅行に行ったときに、わざわざこの学校を見に行った」そうで、
私達に見せるためにスクールマークの入った名刺入れもわざわざ持ってきていました。
「今度日本に来たら学校の中も案内するよ。二人でおいでよ」
大好き攻撃に加え、憧れの学校の先生であったことで、さらに尊敬のまなざしで見られ、
いよいよ目尻の下がるTO。
二人と別れ、ホテルを後にする車の中の会話。
「TOがメロメロになるのわかる。かわいいよねえ」
「でしょう?たとえばもし日本に遊びに来るのならいろいろしてあげたくなるよね」
帰りの飛行機には、友だち同志らしい二人連れの台湾の女の子が何組もいました。
ウィンズの橘くんの写真を見せてくれたティーハウスの女の子のように、
お気に入りの日本のスターのコンサートにくるのか、原宿でお買いものするのか。
そうかと思えば斜め前の、お洒落なネイルアートをした女の子は、
英語の電子工学のテキストを、何枚も附箋を付けながらずっと読んでいました。
この旅行のいろんなところで目にしたり触れあった台湾ガールズのひたむきな可愛さが、
わたしたちをより一層この国のファンにしてしまったような気がします。
そうそう、「二人の写真を撮らせて」というと「えええ~」と二人は照れることしきり。
アンバーさんは眼鏡をはずして前髪を整え、おしんちゃんは背伸びをしていました。
思わず「若い子はいいのう」とおじさんのようににやにやしてしまったわたしでした。