台湾で街を歩いたとき、つい立ち止まってしまったのが薬屋さん。
勿論漢方の方のくすりです。
立ち込める独特の香りに、店の棚に並んだ得体のしれない生薬の瓶。
つい「中国四千年の・・・・」という言葉が意味もなく浮かんでしまう瞬間です。
昨年暮れ、ソコツ主婦のわたしが、時間のない時に慌てて料理をしていて、
多めの油の中に野菜の塊りを落とし、はねた油で軽傷のやけどをしてしまったと思いなせえ。
いまや銀座にお洒落なサロンを持つまでに出世したホーム・ドクターならぬホーム鍼灸師の
(最近はTOもお世話に)M嬢にそれを言うと、すぐさま
「やけどに効きます」という紫雲膏という軟膏を送ってくれました。
とても効いたかというと、つけなかった場合との比較のしようがなく何とも言えなかったのですが、
その威力を今回の旅行で知る事件が。
旅先で息子が唇のまわりが荒れて、醤油が染みて痛い!と言い出しました。
みれば荒れて真っ赤でいかにも痛そうです。
「早く何か塗るものちょうだい!」と騒ぐくらい本人は辛そうだったのですが、
紫雲膏を持っていたのを思い出し塗ってやると、直後に痛みが治まり、
一晩で不思議なくらい完治してしまいました。
化粧品というものを使わず、冬場は風呂上りに植物油かワセリンを乾き止めに擦りこむくらいの
「放置スキンケア」で毎日を過ごしているわたしですが(でもというか、ゆえに美肌キープ)
唇がかさついたときに試してみると、こういうときにも非常に具合がよろしいようです。
せっかく台湾に来たんだから買っておこう、と思いつつすっかり忘れていました。
ところで、台湾で食べたトンポーロー、実に複雑な味で、ウイキョウやコリアンダー(シャンツァイ)が、
隠し味に入れられていると見ました。
わたしはこのコリアンダー、中国ではシャンツァイ(香菜)、アメリカではチアントロという香草、
メキシカンのブリトーに巻くのは勿論、サラダにだって入れてしまうくらい好きなのですが、
TOと息子は「頭が痛くなる」とか言って食べません。
でも、このトンポーロー、明らかにこのシャンツァイの匂いがしているのに、
二人とも美味しい美味しいとわたしより夢中になって食べていました。
「台湾の中国料理って、何となく日本で食べるのより漢方っぽいよね」
なんていいながら。
「いかにも体に良さそう。医食同源て言うのか」
「中国四千年の神秘っていうのか」
また出ました。中国四千年。
いよいよ帰国の途に就くことになり、空港でちょっと腹ごしらえをしたのですが、
たかが空港のお店程度の台湾料理屋で食べた鶏モモの煮込み、これがまた美味い。
「なにこれー」
「なんか複雑な味で煮込んでるね・・・あっさりしているのに中まで味が沁みてるっていうのか」
「鶏だけ煮込んだら味が出てしまうから水炊きじゃないだろうし」
「これは・・・・中国四千年(略)」
いちいち感心しながら空港のコンビニへ。ここがまた侮れなかった。タイガーバームと並んで売っていた白花油。
何に効くのかさっぱりわからないけど何かに効きそう、なぜなら中国四千年(略)だから、
と買って帰って、切り傷やけど、頭痛やのどの痛みにまで有効であることが分かりました。
スースーするので、鼻づまりには抜群に効きそうです。
冒頭の大きな画像はこの白花油の説明書。レトロな、ていうか昔のままの絵柄がお洒落です。
どうも絵から察するに、水仙から採られた成分を使っているようですね。
このほかにも紫のバージョンもありました。
小さいし、珍しいし、これから台湾に行く方、コンビニで58元(170円くらい)からありますので、
大量にバラまかなくてはいけない女性へのお土産にはこれをお奨めします。
コンビニには他にも、「いかにも中国四千年な絵柄」の湿布が、
日本のと同じようなパッケージの湿布の横にありましたが、日本人観光客がそれを
「うわー、こういうのって、いかにも効きそうだよねー」と言いながら見ていました。
アメリカ人が
「日本人は皆困ったときにはゼンによって悟りを開き、先祖はニンジャかサムライである」
というような、いかにもな先入観ですよね。この「中国四千年」って。
TOはのどがすこし痛くて咳が出ていたので、のど飴を買ってあげました(左)。
しかし、本人はさらに右側ののど飴を購入。その理由。
「なんだか材料が訳わかんなくて中国四千年ぽくて効きそうだった」
またですか。
わたしもいただいてみました。
左はアニス風味でなかなかドロップとしても好(ハオ)。
右は・・・
超絶ゲロマズ(>_<)
生まれてこのかた、こんなまずいのど飴を食べたことがないというくらいのまずさ。
吐き出すのも何なので何となく舐めもしないで口の中に入れていたのですが、
飛行機の中でつい居眠りをして起きたらまだ口の中にあったという・・。
まずいならいつまでも舐めてんじゃない、って話ですが。
TOはこの飴を食べた後、飛行機の中でこの缶を落とし、中身を床にぶちまけてしまいました。
そして「ああ、食べるものを捨てるのは心が痛むけど仕方が無い」と言いつつ飴を捨てました。
もしかしたらわざとやったのかもしれません。
そして、恐るべし台湾のコンビニ。
買うの忘れてた紫雲膏見つけー!
これ、台湾ではコンビニで買えるくらいポピュラーだったんですね。
使ったことのある方はご存じ、まるでそのものか?というくらいごま油が主成分の軟膏。
紫なのは、シコンという薬草の色なんだそうです。
中国四千年かどうかを一応調べてみたら、あらびっくり。
これ、オリジナルは明時代の潤肌膏というものなのですが、紫雲膏そのものは、なんと
それをもとに、あの華岡青洲先生が作ったんだそうです。
日本で、いや公的には世界で最初に麻酔手術を成功させた、
人類の医学史にその名を残す日本人医学者の副業の産物だったとは。
というわけで
紫雲膏は、中国四千年(略)ではなくメイド・イン・ジャパンでした。