昨日は、私の故郷・岡山県の方言「あんごう」を取り上げました。
故郷と言えば、室生犀星の有名な詩、「故郷は遠きにありて思うもの・・・」があります。
この詩はどなたもよくご存知の詩だと思います。
今日は故郷を偲びつつこの詩を取り上げたいと思います。
冒頭の一節に続く詩は室生犀星の詩集「抒情小曲集」に収められている、「小景異情(その二)」と言う題名の詩です。
小景異情
ふるさとは 遠きにありて 思ふもの
そして悲しく うたふもの
よしや うらぶれて 異土(いど)の乞食(かたい)と なるとても
帰るところに あるまじや
ひとり都の ゆふぐれに ふるさとおもひ 涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこに かへらばや
遠きみやこに かへらばや
「詩意」・・・ふるさとは、遠く離れてなつかしく思い出して悲しく歌うべきもので、たとえ異郷で乞食(かたい)に落ちぶれても帰って来る べき所ではない。
ふるさとを遠く離れた都会で、夕暮れには望郷の念に涙ぐむのが常だが、その思いを心に抱いてまた都会に帰って行こう。
「詩の背景」・・・若き日の室生犀星は、複雑な家庭環境のため早くから人生の孤独を知らされ、また愛情に飢えていました。
文学を志して明治43 年5月に上京したのですが、彷徨と貧苦の生活で志を得ず、何度か故郷・金沢との間を往復しています。
「抒情小曲集」の詩編は、こうした生活の中で書きつづられた ものだそうです。
(参考)・・・言葉の意味
小景(しょうけい)・・・心に残るちょっとした風景や光景。また、それを描いた絵や文。
異情(いじょう)・・・・・風変わりな心。
ふるさと・・・・・・・・・・ここでは金沢のこと
よしや・・・・・・・・・・・・たとえ、仮に。
うらぶれて・・・・・・・・みすぼらしくなって
異土(いど)・・・・・・・・故郷・故国と異なる土地。異国。見知らぬ土地。
乞食(かたい)・・・・・・こじき。物もらい。
あるまじや・・・・・・・・・あるまい
かへらばや・・・・・・・・帰りたいものだ
室生犀星のこの詩は学校でも習ったことから、どなたももよくご存知だと思います。
いつ読んでも日本人の心を打つ素晴らしい詩だと思います。
しかし、この詩は遠方にあって故郷を思った詩ではありません。
上京した犀星が志を得ず、郷里金沢との間を往復していた苦闘時代、帰郷した折に作った詩なのだそうです。
故郷は孤立無援の青年には懐かしく忘れがたいが、それだけに、そこが冷ややかである時は胸にこたえて悲しいのです。
その愛憎の複雑な思いを、感傷と反抗心をこめて詠んでいるのです。
私もそうですが、東京や大阪の大都会で暮らす人の多くは地方出身なので、生まれ育った田舎の情景は忘れられないことと思います。
このような遠隔の地に就職したり、嫁いだ女性にとっては故郷の父母、幼友達を懐かしみ、時には涙ぐんだ日々もあったのではないでしょうか?
この詩を詠んで郷愁にかられてみては如何でしょうか?
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金沢の犀川が流れる繁華街の傍に室生犀星の石碑がありますが、そんなことを刻んでいることでしよう。
『故郷忘じがたく』と哭いた韓国の陶芸家がいました。秀吉が日本に拉致した陶芸家の末裔の言葉です。
らいちゃんには、前にご案内しました。
http://blog.goo.ne.jp/iinna/e/ce9791f3eb474a3b7fae422aac0bfdc5