KOFUKUの家から

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永遠を繋ぐアドベントガーデン~絵描き人

2011-01-26 | 相方さん(米澤観児氏について)


気がつけば大寒も過ぎ、もうすぐ2月、目の前は春です。

燃えるような紅葉の中、天に帰った相方さんも
この日々の間に2回目の月命日を迎えました。

49日が過ぎてから、相方さんにご連絡くださった方、
あたたかい御志をお寄せくださった方、
日頃より親しくしてくださった方、
できる限りの所在の分かっている方々全員に
相方さんと一緒に贈り物を用意してお届けする作業をしていました。

作業は心をこめて集中してやりたかったので、
その間にはブログや雑用はお休みしていました。

その作業も昨日で97パーセントくらいまで進みました。
まだ残ってはいるものの、なんとかかんとか一段落です。

発送作業は時に相方さんに話しかけつつ、共に作業をしながら、
ただただ相方さんの事を考える時間でした。

シュタイナー系のイベントに「アドベントガーデン」と言うのがあります。
冬の始め、クリスマスの訪れを待つ中の行事です。

静かにライアーの流れる暗闇の中、
床には大きな樅の木の枝で螺旋の道。
ところどころに金の星が置かれています。
その渦の中心には大きなキャンドル。
しずかな竪琴の響く中、参加する人々は無言で螺旋の周りに集まります。

そこに現れるのは2人の天使。
一人の天使は螺旋の道を歩み、キャンドルに火をつけます。
そして螺旋の道を戻り、もう一人の天使にろうそくを立てたリンゴを手渡し、
樅の道へといざないます。

リンゴろうそくを手にした天使は静かに暗闇の中、道を進み、
そして火をつけ、道を戻り、灯をつけたリンゴろうそくを
次に来る人の足元を照らすために星の上に置いてきます。

そして天使はアドベントを迎える人々を一人ずついざない
リンゴろうそくを手渡し、樅の道へと送り出すのです。

天使に導かれた人々は天使が見せてくれたように
闇の中の道を進み、明かりをともし、そして道を戻り、
そして自分のともした明かりを人の為に置いていきます。

暗闇は私たちを取り巻く「恐れ」や「困難」などをあらわします。
渦は生命の象徴です。
外から内に向かうらせんは誕生をあらわし、
内から外に向かうらせんはその後の人生をあらわします。
真ん中にある灯は「愛」「勇気」「希望」そういうものの象徴。

始めてこのアドベントガーデンに参加した時、
その聖なる空気が私の中にしみわたりました。
一人ひとりが闇の中、道を歩めた時の感動は言い表せない美しさがあり、
それは知らず知らずのうちに嬉しさで涙を流してしまうほどです。

最初、このアドベントの事を聞いたときは秋のミカエル祭つながりで
(ミカエルは地球を守る大天使です)
闇に立ち向かい自分の心に自ら希望の灯りをともし、
他者の為に尽くせるようにという意味があると聞きました。

でも初めて参加した時、「これは私たちの魂の旅なのだ」と感じました。
そして愛する親しい人々、そして相方さんの旅立ちと人生を体験し
それが真実なのだということが心でわかった気がします。

私は相方さんの最後を一緒に迎えたその日を思い返すたびに
「ああ、なんて素晴らしいアドベントだったのだろう。
なんてうつくしい歩みだったのだろう。
そして彼はしっかりと私たちの為に灯りをともしていってくれた」
と深く感動せずにはいられないのです。

彼はしっかりとその生を受けとめ、そして自分の足でしっかりと歩み、
自らの意思で愛と言う灯りをともし、その灯りを守り、
最後に自らの意思で私たちの為に自分のともした灯りを残して行きました。

今頃は人生のアドベントを観ていてくれた大いなる光たちが
きっと感動しつつ、涙しつつ、彼を迎えてくれていると思います。

私も相方さんのように自分の灯りを守り、
しっかりと自分の歩んで、自分の意思をしっかり持って
次に歩む人に愛と感謝を持って灯りを残していきたいです。




《絵かき人*米澤観児》

相方さんの歩んだ螺旋の道はとても美しいものでしたが、
その道を彩っていたのは「芸術」でした。

彼は俳優でもありましたが、素晴らしい画家でもありました。
若き頃の彼は世界の美しさを切り取り、
それをいかに美しく表現するかを考えた
写実的な絵を描いていました。


これは高校生の時の習作だそうです。

相方さんは偽りのない魂を愛していたので動物をたくさん描いています。

これは二十歳くらいの時のスペインに住んでいる時に書いた作品。


これはスペインから戻ってきて大学の終わりのころに描いた作品。
畳1枚分くらいの大きな作品です。


そうして彼は絵出会うことで演劇に出会い、
自然主義をベースにした心のリアリズムを模索し始めます。
その中で計算された美ではなく、偽りのない魂の表現に行きつくのです。

そこに行きついてからの相方さんは見たものをいかにきれいに描くかではなく
心の奥に生まれるもの、自分の中の真実を絵描き始めます。
相方さんいわく、本当に描きたかった「自分の絵」です。

彼が描くのは夜空の銀河鉄道が走る線路の下にある
「夢の街」に住んでいる者たち。


「お月さまにようこそ」のポスターになった絵


夢の街のこびとたちが住んでいる街





絵本「夢の島ノア」の中に出てくる動物たち


小坂明子さんのCDジャケットになった絵


彼が最後に描いたのは、実家で長く飼われていた仲良しのマリちゃん。
ご両親の好きな写実タイプで生きているように描かれています。



芝居を始めてからの彼は殆ど絵を描きませんでした。
「絵は人より少しかけるかもしれないけど、絵が描けるわけじゃないよ。
それに俺は絵描きじゃなくて俳優だから」
と言って。

ただ頼まれて受けた絵は食事もせず、音楽をかけながら
ひたすら没頭して丁寧に丁寧に描いていました。


そんな相方さんが、なんのしがらみものなく、
幸せというテーマで心のままに描いた最後の作品は
自分の「家族」でした。

そう、私たちです。



大好きな銀河鉄道の走る夢の街の月夜で楽しそうに遊ぶ私たちの姿が描かれています。
ブランコに乗る私に抱かれているのは彼の愛する娘、ぴーちゃんです。

生まれてすぐに売りに出され、両親を知らないぴーちゃんを
可哀想だ、かわいそうだと言っていた相方さんは
絵の中にぴーちゃんの家族を描きました。

笑顔のお父さんと後ろ姿の優しいお母さん。

お父さんは何が起こってもぴーちゃんを守れるように
ぴーちゃんを見ながらも、しっかりと前を向いています。

お母さんは愛する娘の一瞬も見逃さないように
ひたすらに娘に愛情を向けて見つめているそうです。

お父さんの上には小さなぴーちゃんの妹が浮かんでいます。
一人ぼっちのぴーちゃんがさみしくないようにと
これから生まれてくる妹が一緒にいるんだそうです。

足先の塔のてっぺんには、ラッパを吹きならすぴーちゃんのお友達。
嬉しくて楽しくて音楽を奏でているんだそうです。


相方さんの全ての絵の中には、彼の求め、愛してやまない物の姿、
彼の求める家族の姿、その在り方が描かれているのです。


描きあがった後、すぐに依頼主に持っていかれてしまう絵を
彼は自分で写真を撮って、そして私たちに残してくれました。

彼は原画は手放さない主義です。
なのに、この絵は最初から、依頼主ありきで描き始めました。

「初めて家族を描いたのにどうして手放しちゃうの?」
と聞いたら、

「だって、そんなの、本人たちの目の前にあったら恥ずかしいじゃないか。
手元に残らないから、描けたんだよ。」だって(笑)



誰もしらない彼の絵の秘密があります。
ある日、私だけにこっそりと彼が教えてくれました。

これから相方さんの絵を目にするみなさんに彼の愛を知ってほしいから
秘密を教えましょう。


彼は言いました。


「俺がこういう絵を描き始めた時、
皆は俺の絵を観てこびとやピエロを描いてる
と言ったけど実は違うんだ。

俺の絵の中に出てきているのは、
こびとやピエロや動物に見えるけど、
本当はぜんぶ天使なんだ」



米澤観児は天使と、そして愛を描く絵かき人なのです。