2018年のブログです
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宮下奈都さんの『羊と鋼の森』(2018・文春文庫)を読みました。
2016年の本屋大賞受賞作で、読むのを楽しみにしていましたが、ようやく文庫本で出ましたので、さっそく読みました。
期待にたがわず、とてもいい小説です。
17歳の秋、たまたますばらしい調律師と出会い、その感動のあまり、自分もそんな存在になりたいと調律師になった青年のこころと魂の成長をていねいに描いた小説です。
あこがれの調律師だけでなく、職場の先輩調律師や女性事務員さんも、それぞれがひとくせもふたくせもありながら、主人公の純粋さと真剣に向き合ってくれます。
主人公は、ひとことでいうと、ねくらで奥手な青年。
北海道の山奥で育った田舎者の青年で、不安や焦りや少しの希望で胸がはち切れそうな状態。
そんなナイーブな青年が少しずつ周囲に助けられて成長していきます。
じーじが一番好きだった場面は、主人公のおばあちゃんが亡くなったお葬式の場面。
大学生となって家を離れた弟が悲しみと不安に耐え切れずに森で泣き出すと、主人公も初めて大声でこころから悲しみの感情を爆発させます。
哀しい時にこころから泣けてよかったな、とつくづく思います。
そんなふうな、若者や人びとの人生や生き様に大切なことがらがぽつりぽつりとちりばめられていて、まるでこころの宝石箱のような小説です。
けっして明るいだけの小説ではないですが、読む価値はあります。
読んで考える価値もありそうです。
いい小説に出会えたことに感謝します。 (2018.2 記)
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同日の追記です
2018年2月20日の「ケサランパサラン読書記-私の本棚-」さんのブログでも本書が取り上げられていて、いい文章です。ぜひご一読を。
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2018年9月の追記です
この小説は今年夏に映画が公開されましたが、撮影地が東川町など大雪山周辺で、地元ではおおいに盛り上がっていました。
映像がとても美しいようで、ぜひ一度、観てみたいと思っています。 (2018.9 記)
わたしはポスターしか見ていないのですが…(宮下さん、ごめんなさい)。
今年の夏、映像のような美しい風景を見に、また大雪の周辺を歩いてみたいと思っています。
ただ、本を読んでの自分のイメージとは当然のことですが、異なっていました~~
その大切なイメージを大事にしたいのもよくわかります。
小説と映画は、同じ題名、同じテーマでも、別な作品かもしれませんよね。
それにしても、どさんことしては、北海道の美しい映像をちょっとだけ見てみたいです。
映画を見るかはまだ
きめてません。
本で自分のイメージが、
かたまったかも!?
です、
ちなみに、宮下さんの『神様たちの遊ぶ庭』の感想文も2017年7月に書いていますので、よろしかったら読んでみてください。
書店で文庫本の帯を見て買いました。
登場人物が、それぞれの境遇を受け入れ、淡々とだけれども、ひたむきに生きている様子が描かれています。
よい話でした。
この方の他の作品も読みたいと思っています。