ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

子どもの意思,その本音と建前のせつない言葉により添うことの大切さ-「おとな」の親になるために

2024年11月11日 | 「おとな」の親を考える

 たぶん2011年ころのブログです

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 夫婦の間で不幸にして離婚の話が出てしまい, 子どもさんの親権などで揉めてしまったような時に,「子どもの意思を尊重する」という親ごさんがいらっしゃいます。

 一見,ものわかりのよい,子どものことを考えている,とても立派な親ごさんのように見えます。

 しかし,これは親ごさんの無責任の裏返しだと思うのです。

 親ごさんの都合で離婚をしようというのに,子どもに親権者を選ばせるというのは非常に残酷なことです。

 子どもの本音は,どちらかに虐待や暴力でもないかぎり,お父さんもお母さんも大好きで,できれば別れないでほしい,というのが大多数だと思うからです。

 子どもの意思を尊重する,というのなら,離婚をしてもいいかどうか,というところから「子どもの意思を尊重」しなければならないと思います。

 また,「子どもの意思」は,一応,刑法では14歳からその有責性が問われ,民法では15歳から一定の権利が認められていますが,じーじの経験では,それくらいの年齢でも,自分の選択をあとになってから悩む例を多く見ます。

 おとなが自分の選択で悩むのは仕方ありませんし,そうやって少しずつ本当の「おとな」になっていくのだと思いますが,子どもが親のせいで悩むのは酷なことです。

 できれば,親ごさんがその責任をきちんと負わなければならないと思います。

 そして,その場合,親権をもらうことだけでなく,親権を譲ることも含めて,子どもの幸せを考える責任があると思います。

 仮に,親権を譲っても,面会交流で子どもとの関わりあいは十分に可能です。

 いつも一緒にいることだけが親ごさんの愛情とは限りません。

 子どもに責任を負わせずに,真に「子どもの意思」や「気持ち」を尊重できる「おとな」,そういう「おとな」の親ごさんが大切になると思います。       (2011?記)

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 2019年冬の追記です

 親ごさん同士がいつの間にか信頼できなくなっても、親子の間はまったく別物です。

 親ごさん同士の憎しみとは関係なく、子どもは虐待がない限り、親ごさんを慕っていることが多いと思います。

 面会交流で親子の間での信頼の様子を互いに見ることで、親ごさん同士の関係も少しだけ客観的に変化する可能性もあるのかもしれません。      (2019.1 記)

 

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佐伯一麦『ショート・サーキット-佐伯一麦初期作品集』2015・講談社文芸文庫

2024年11月11日 | 小説を読む

 2018年のブログです

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 佐伯一麦さんの『ショート・サーキット-佐伯一麦初期作品集』(2015・講談社文芸文庫)を読みました。

 またまた佐伯さんの小説で、このところ、じーじは(佐伯)一麦ワールドと(樋口)有介ワールドにハマってしまった感じです。

 佐伯さんが初期に書かれた小説から選ばれた作品集ですが、なかなか読み応えがあります。

 あらためて思ったのは、佐伯さんは文章がうまいな、ということ。

 丁寧で、美しい日本語です。

 誰が下手とはいいませんが(?)、佐伯さんの文章が端正なので、小説で描かれている世界が、夫婦の不和や仕事上の大変さなど、かなりヘビーな内容なのですが、気分はあまり悪くなりません。

 むしろ、悪戦苦闘をしながらも、誠実に生きている様が、丁寧な文章に乗って、淡々と、時には、すがすがしく、描かれているように感じます。

 印象的だったのは、子どもとのやりとりが描かれた場面。

 例えば、乗り物が苦手な長女が電車の中で気分が悪くなって吐いてしまった時、それを自分の洋服で受けて、子どもを守る父親の姿が描かれますが、弱い者を守る父親の姿がとてもいいです。

 人は弱い者を守ることでおとなになっていくんだな、とつくづく感じられます。

 そういうふとした場面を大切にしている小説家なんだな、ということがわかります。

 人と人の行き違いも描かれますが、淡々とどちらにも偏らずに描いているという感じがします。

 勧善懲悪ではない世界、人と人が支えあいながらも、迷惑を掛け合い、しかし、ともに生きていく、そんな感じでしょうか。

 したがって、読後感はとてもよくて、充実した感じがします。

 また、数年後に再読したいな、と思いました。          (2018. 10 記)

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 2023年4月の追記です

 つまらないことかもしれませんが、人は弱い者を守ることでおとなになっていくんだな、という一節がじーじは自分で少し気に入っています。        (2023.4 記)

 

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