2021年5月のブログです
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ウォルター・ウェストンさんの『日本アルプスの登山と探検』(青木枝朗訳・1997・岩波文庫)を久しぶりに読みました。
ウェストンさんは、初夏に上高地で行なわれるウェストン祭で有名なかたで、登山家。
この本を読むのはおよそ20数年ぶり。
40代後半になって、山歩きをするようになった頃に読んで以来です。
このところ、なぜか明治から昭和にかけての山歩きの本を読んでいて、昔の山の紀行文を読むと、こころが落ち着いてとてもいいです。
田部重治さん、木暮理太郎さん、武田久吉さん、若山牧水さん、などといった人たちの山の文章を読むと、昔の日本の山の美しさに感心させられますし、山里に住む人たちの素朴さにこころうたれます。
古きよき日本の姿がたしかに描かれています。
それは本書でも同様で、本書は明治20年代の日本アルプスの紀行が中心ですが、ウェストンさんのユーモアのある文章ともあいまって、昔の山の美しさと山里の人々の礼儀正しい様子がたくさん描写されていて、読んでいるととてもこころがなごみます。
外国人を初めて見て興味津々の人々や、ウェストンさんを見ても外国人とわからずに、変わった日本人だ、というおばあちゃんなど、愉快な場面も出てきます。
ウェストンさんより少し前に日本各地を旅行したイザベラ・バードさんの紀行文を思い出します。
もちろん、山登りの場面はかなりタフで、じーじなどはとても真似のできない専門的なもののようですが、ウェストンさんがたんたんと記述しているので、文章は重たくありません。
有名な猟師で案内人だった上條嘉門次さんをはじめとするすばらしい案内人のかたがたも登場して、彼らとのユーモラスなやりとりも描かれます。
ウェストンさんの人柄のせいもあるのでしょうが、明治20年代の日本の山と山里がとても魅力的だったことがわかります。
この素敵な風土を少しでも後世に残せればと思います。 (2021.5 記)