長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

おれ、『GANTZ』ニガテなのよぉ  ~ぬらりひょんサーガ 第28回~

2011年12月03日 02時42分33秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
《前回までのあらすじ》
 1967年の原作マンガへの登場以来、数多くの「鬼太郎サーガ」に幾度となく姿を現してはゲゲゲの鬼太郎との激戦を繰り広げてきた妖怪ぬらりひょんも、ついに21世紀を迎えるにいたって、本腰を入れて「妖怪の総大将」というステイタスを狙うようになってきた。
 思い起こせば『ゲゲゲの鬼太郎』が世に出るはるか昔、1930年に民俗学の権威がうっかり口をすべらせたところから生まれてしまった「ぬらりひょん=妖怪総大将」イメージ。
 それから半世紀以上の時がたった2000年代、本格的にその座を手にするチャンスをつかんだ彼は、ここぞとばかりにさまざまな作品の中で渾身の大攻勢を仕掛けていくこととなる。
 そんな彼の花舞台は、アニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』や『ぬらりひょんの孫』だけではなかったのだ!!


 ちょこっと振り返ってみたいのですが、「ぬらりひょん」という妖怪が、現在明らかになっているかぎりでいちばん最初に文献の世界に出現したのは、18世紀のはじめ、江戸時代に「商都」大坂を中心に大流行していた大衆小説「浮世草子」の一作『好色敗毒散』(1703年)でのことでした。
 そこから2010年代の現在にいたるまでの300年間、いろーんな世界にいろーんな姿で顔を出してきたぬらりひょん先生ですが、彼が本格的に「妖怪総大将」というリーダー的な呼ばれ方をしてもおかしくない立場を演じていたことは数えるほどしかありません。

 こんなもんですかねぇ。
・1978年『新 ゲゲゲの鬼太郎』での墓の下高校校長ぬらりひょん
・1985~87年『最新版 ゲゲゲの鬼太郎』での妖怪総大将ぬらりひょん
・1986年『激突!!異次元妖怪の大反乱』での妖怪皇帝ぬらりひょん
・1991年『鬼太郎国盗り物語』での正義の妖怪総大将ぬらりひょん
・1994年『忍者戦隊カクレンジャー』での妖怪忍者党頭領ぬらりひょん
・1997年アニメ第4期『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪王編』での妖怪王ぬらりひょん
・2007~09年アニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』でのリニューアルぬらりひょん
・2008年『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』での緒形拳ぬらりひょん


 もちろん、いきあたりばったりでだまくらかした妖怪か朱の盤くらいしか手下のいなかった、アニメ第3期と4期の通常状態でのぬらりひょんはカウントに入れていません。
 最初に妖怪集団のリーダーっぽい位置についた「墓の下高校校長」は、まぁ総大将と呼ぶには規模が小さすぎるんですが、ぬらりひょんが他の妖怪たちの上に立った記念すべきお初なのであえて入れさせていただきました。
 『カクレンジャーぬらりひょん』は友情出演みたいな出番の少なさだったので除外するとして、支配規模やご本人の能力が最も大きかったのは『最新版』と『妖怪王』のどっちかかなぁ。
 でも、私の中では羽織姿を乱すことなく終始落ち着いた態度で采配を振るっていた『国盗り物語ぬらりひょん』の勇姿が忘れられないんですよ! 珍しく正義の味方だったし、あれはカッコよかったなぁ~。

 んで、この流れの最新ヴァージョンが『ぬらりひょんの孫』での「奴良組(ぬらぐみ)初代組長ぬらりひょん」であることは言うまでもないわけです。

 上の一覧を見ていただいてもおわかりのように、ぬらりひょん先生は年を追うごとに「妖怪総大将」の座に執着するようになり、特に21世紀に入ってからは、『妖怪大戦争』(2005年)での風のごとく自由な忌野清志郎ぬらりひょんを唯一の例外として、基本的に登場するときには必ず複数の強力妖怪をしたがえていることが定型となっています。京極夏彦の『ぬらりひょんの褌(ふんどし)』の内容がそれらの真逆をいったものだったことは前にも触れましたね。京極作品らしくぬらりひょんご本人は出てこないけど。


 さて、そういった中で今回取りあげるのは、堂々の復活を果たしたのにもかかわらず番組の都合で途中退場を余儀なくされてしまったアニメ第5期『ゲゲゲの鬼太郎』へのレギュラー出演とまったく並行したかたちで、ぬらりひょん先生がおこなっていた「別の仕事」です。こっちは第5期の青野ぬらりひょんとはまるで正反対で、セリフはほとんどなくて「パワー勝負」一辺倒のハードなお仕事でしたよ。よく2年間もあのスケジュールをこなせたもんだなぁ……やっぱ若いわ。


ハードSFバトルアクションマンガ『GANTZ 大阪編』(2006年11月~08年10月 作・奥浩哉)


 いや~、とんでもないもんに出ちゃいましたね、総大将!
 『GANTZ』といえば、嵐の二宮和也くん主演で前後編構成の実写映画版が今年に公開されたことも記憶に新しいのですが、言わずと知れた『週刊ヤングジャンプ』(集英社)連載の超人気マンガです。
 作品自体はもう2000年から連載が始まっており、現在32巻のコミックスが発売されているわけなのですが、累計売り上げ部数1800万部を超える大ヒット街道をばく進中ですね。

 連載が始まってもう10年を超えているわけですから、内容も数々のヤマ場やビックリ展開が用意された結果、いくつかの「フェイズ(局面)」のつながりで構成されるかたちになっています。

 かなりざっくりと解釈してしまいますと、その中で、コミックスで言う「第1~8巻」の内容に独自の結末を加えたのが2004年に2シーズンに分けて放送された『アニメ版 GANTZ』(監督・板野一郎)で、「第1~16巻」の内容に独自の結末を加えたのが今年2011年の『実写映画版 GANTZ 2部作』ということになるんですな。
 アニメ版も年齢指定されるほどの過激な描写で話題になりましたが、実写映画版はさらに前・後編ともに公開初日からの2日間だけで興行収入5億円&観客動員数40万人を突破したということでねぇ~。とにかく話題に事欠かないお化けタイトルなんでございますよ。


 そんな『GANTZ』の中でも、我らがぬらりひょん先生の登場した『大阪編』とは?

 どっから説明したらいいのかもわからないし、私の解釈がちゃんと正しいのかも不安な部分があるのですが、まぁ~私の勝手な解釈によるのならば! 『GANTZ』は奥浩哉先生という希代のイマジネイターが再創造した「戦隊ヒーローもの」アクションマンガです。
 いや、この言い方を真に受けて「なぁ~んだ、そんなのか。」と気軽にコミックスを手にとってしまうと大変な目に遭っちゃうんですけど……

 とにかく、なんらかの原因によって現実世界で死んでしまった「はず」の人々が性別年齢、時には生物種さえも超えてランダムに選ばれ、人類をおびやかす存在だという正体不明の怪物「星人」たちを滅ぼす特殊戦闘チームにされてしまうんですからとんでもない。
 選ぶのは、これまた正体不明の巨大な黒い球体「GANTZ(ガンツ)」。GANTZに選ばれた人たちは戦闘の向き不向きに関係なく、強制的にあの黒っぽくてピッチピチしたスーツを着てへんな銃か刀みたいな武器を手にとらなければならなくなってしまうのです。

 いっぽうで、そんなGANTZチームに対峙する「星人」というのもムチャクチャな設定で、ある者はお菓子の「チョコボール」のキョロちゃんそっくりだったり、ある者はお寺の仏像そっくりだったり、ある者は恐竜そっくりだったりと、「人類に敵対している」共通点をのぞいてはまったく造形に脈絡がありません。

 マンガ『GANTZ』の物語は、東京でそんな過酷な闘いの日々を始めることとなった青年「玄野計(くろの けい)」を主人公として進行していくのですが、衝撃的展開をはさんで、2006年の暮れからは主人公が別の青年「加藤勝(かとう まさる)」に代わって連載再開となります。この加藤さんメインの内容が2年間続く『大阪編』なわけなんですね。ちなみに、実写映画版で玄野を演じていたのは二宮くんで、加藤を演じていたのは松山ケンイチでした。平清盛がんばって!

 『大阪編』は読んで字のごとく、それまで東京で活動していた加藤チームが初めて東京以外の地域・大阪に送り込まれ、道頓堀川から出現した大量の「星人軍団」とグチャグチャドロドロの血みどろバトルを展開するという、現在の日本での映像化はおそらくムリかと思われる内容となっております。

 で、で、この『大阪編』に現れた星人軍団のキャラクター造形のしばりが「妖怪」で、まさに「百鬼夜行」とも言うべきそれらの頂点に立っていたお方こそが!! ぬらりひょん先生だったということなんですなぁ。

 特に多くの時間をさいてGANTZ チームと激戦を繰り広げた妖怪(星人)は「お歯黒べったり」「泥田坊」「あみきり」「一本だたら」「烏帽子鬼(えぼしおに)」「蛇骨婆」「般若」「小面(こおもて)」「牛鬼」「餓鬼」といったあたりなのですが、それ以外にもモブとしてさまざまな有名妖怪たちが顔を出していましたね。このへんの面々が、奥浩哉先生ならではのリアルタッチで復活して道頓堀に跋扈する光景はかなり壮観! でも、そのすぐあとに目も当てられない壊滅っぷり……
 そんな中で一頭抜きんでた場所にいたのが、総大将格のぬらりひょんと、副将格の「天狗」と「犬神」だったわけで。
 ……あ、そう、朱の盤じゃないんすか……朱の盤、どこにも出てないの? 総大将は「鬼太郎サーガ」以外のお仕事には絶対に朱の盤をついてこさせないんですよねぇ。これもなにかのツンデレ表現なのかなぁ?


 それはともかく、ここでのぬらりひょん(星人)は、どっからどう見ても「最強」!

 姿を現した序盤こそ、「小柄ではげた頭だけ大きな老人」というコテコテの風貌だったものの、その眼光は鋭く、戦うたびにより強力な筋肉隆々の巨体になったり、かと思えば際限なく分裂して集団戦法をしかけてきたりと、まるでフリーザ様が大阪にふらっと遊びに来たかのような「絶望的に強い」肉弾キャラになっているのです。こえぇ!

 まぁ……この辺の恐ろしさは、実際に『GANTZ』のコミックス第21~25巻(カバーが白いやつ)を読んでいただくより他はありません。説明はムリ!

 ともあれ、やっぱりどんなに強くても敵キャラは敵キャラなので最終的には華々しく散ってしまうわけですが、道頓堀川からわらわらと百鬼夜行(星人)が出てきて、そんで最後の1体であるぬらりひょんが倒されるまで、実時間にしてたぶん数時間くらいのものであるはずなのに、それが連載2年間・コミックス5巻ぶんの濃度になってるんですからね……知性はよくわかんなかったですけど、肉体的に歴代最強なのがこの「GANTZ ぬらりひょん」であることはまず間違いないでしょう。映像化できないのが惜しいな~。


 しっかし総大将。
 日曜の朝からやってた子どもも安心して観られるアニメや『ジャンプ』のマンガに出ていたかと思ったら、こんなえげつないお仕事もやってらっしゃったんですねぇ……どんな精神バランスとってるんすか!?

 全然関係ないんですけど、20世紀には『マガジン』とか『コミックボンボン』といった感じで講談社を活動の拠点にしていたぬらりひょん先生、21世紀に入ったら『ヤンジャン』に『ジャンプ』と、集英社に思いっきり鞍替えしちゃいましたね。超大型移籍だ!!


 ま、こんなわけで、今回とりあげたお仕事は単純な「バトルアクションの強敵役」だったし、その上わけのわからない「星人」という存在だったため、ぬらりひょんの中の「悪の親玉」という部分を最大限に拡大したに過ぎない活躍だったということで、特にこれといって、「妖怪ぬらりひょん」の属性に新たに追加されるべきオリジナルな要素は組み込まれていませんでした。口ヒゲをはやしてたってくらいかなぁ、新しかったのは。


 なので、今回の「ぬらりひょんサーガ」はここで終わりにしちゃってもいいのですが、せっかくなので、おしまいに個人的なことをつぶやかせていただきたいと思います。


おれ、『GANTZ』ニガテなのよねぇ~!! ほんとにだめ!


 もう、なんちゅうかねぇ、「絵がうますぎる」のがほんっっっっとに好かないんですよ。
 絵がうまいからこそなのかも知りませんが、奥先生、自分のキャラクターにムチャクチャしよるでしょ~!? 暴力描写でも性描写でも。
 もう残酷さがきわだっちゃってねぇ、見てらんないんですよ……これはもう、「褒め言葉」として理解していただきたい。
 私もう、奥先生の作品は『変 HEN』シリーズの頃から苦手でしてねぇ。
 絵がいくらうまくて魅力的でも、理解不能・予測不能な展開のマンガはおおむね観ていて疲れるので敬遠しています。

 それなのに、ぬらりひょん先生が出てきたのが悪名高い『大阪編』なんですもん!
 奥先生って……大阪、きらい?
コメント (1)
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