映画『スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪』(2010年10月29日公開 東映 70分)
プリキュアシリーズの映画作品の第11作であり、シリーズ第8作『スイートプリキュア♪』の単独映画作品である。
今までのシリーズの単独映画作品は、TV 本編の流れとは直接のつながりのない番外編という位置づけだったが、本作は初めて本編との関連を明示しており、本編における第36話と第37話(ともに2011年10月放送)の間に発生したエピソードを描き、以降の本編の展開を補填するサイドストーリーになっている。このような連動を行うことになった背景としては、同年3月の東日本大震災の発生に伴い TVシリーズの放送日程にずれが生じ、キュアミューズの正体が判明する時期と映画の公開時期が重なったことが挙げられる。このため、同年2月の時点ですでにシナリオも組み上がっていた映画企画を全部白紙にした上で、本編と連動させる方針に転換したという。
また、これまでのプリキュアシリーズの単独映画作品は、基本的に本編に登場しない異世界(映画『ハートキャッチプリキュア!』のみ現実世界のフランス首都パリが舞台)を舞台にしているが、本作では本編にも登場するメイジャーランドを舞台としており、そこで暮らす少女(本作オリジナルのゲストキャラクター)とその家族の物語となる。
本作で、映画作品としては初めてキュアビートとキュアミューズ、フェアリートーンが登場する。特にキュアミューズについては映画公開直近の第35・36話で正体が判明したため、それを秘匿する意味で、予告編などではこれまでの黒い仮面姿のミューズを登場させていたほか、キャスト部分でも役名などの情報は一切掲載されていなかった。
本作でも映画鑑賞者参加型のシステムは継続され、今回は「ミラクルライトーン」というミラクルライトが中学生以下の観客に配布された。それと同時に、前作では廃止されていたミラクルライトの使用解説シーンが本作では復活し、ハミィとフェアリートーン全員の計9名で解説が行われた(ただし担当声優はハミィ役の三石琴乃、フェアリートーン8名全役兼任の工藤真由の2名)。さらにエンディングでは、CGダンスが盛り込まれる前に説明も挿入され、「前説・本編・後説」の構成になっている。当初はミラクルライトに変わるような、本編のテーマである「音楽」を元にした新しい企画も構想されていたが、映画館で音を出すのは問題があるとしてライトが継続されたという。他にも子どもの鑑賞者には、「ニャンバイザー」と呼ばれるサンバイザーが配布された。
スタッフは、『スイートプリキュア♪』の本編で初めてプリキュア作品に携わった池田洋子を監督に起用、女性監督としては前年の映画『ハートキャッチプリキュア!』の松本理恵に続いて2人目となる。池田にとっても映画作品の監督は本作が初めてだった。脚本は TVシリーズ構成の大野敏哉が、本編との連動のために直接担当した。作画監督も本作のキャラクターデザインを務めている高橋晃が担当し、本作で響たちが着用する私服を書き下ろしているほか、監督の池田の注文で『水戸黄門』のキャラクター「かげろうお銀」の町娘姿をイメージしたエレンの衣装も描いている。
本作のテーマは、TV 本編のテーマである「友情」だけでなく、親子愛、特に「父と娘の関係」を中心に描いている。池田は、「親子愛があり友情があった上で皆の気持ちがひとつになる、という流れになる。」としており、「子供のために親が頑張るシーンがあるので、親御さんにはその辺りも見てほしい。」と語っている。その一方で、本来のテーマの友情についても、「響と奏の二人あってこそのプリキュアチーム。二人の心の絆にも注目して欲しい。」と語っている。プリキュアという作品の描き方についても、「変身してカッコよく戦う行動的なところはあるが、それ以外は普通の女の子と変わらない、ノーマルな普通な女の子の部分もきちんと描きたい。女性スタッフもいるので、女性目線も出していけば作品の幅も広がり、共感してもらえる部分がもっと増えるのでは。」としている。
音楽は TV本編と同様に高梨康治が担当している。高梨は本作でのメインテーマとなる『心の歌』も制作し、歌詞は歌手のRemi によって作詞された。この曲のバリエーションがいくつかの重要なシーンで用いられており、特にラストバトルのシーンでは、監督の池田の意向でこの曲を優しい曲調にアレンジしたものが使用されている。
全国168スクリーンでの公開ながら、2011年10月29・30日の初日2日間で興行収入約1億9700万円、動員数約18万人を記録した。
あらすじ
父であるメフィストが善の心を取り戻し、調辺アコはキュアミューズの役目も終わったとして父と共にメイジャーランドへ帰ることになった。その時、突然街にハウリング音が鳴り響き、街から音楽が消えてしまう事件が発生する。
心配に思った響たちはメイジャーランドに向かうが、いつも音楽で満ち溢れていたかつての面影は無く、音楽が消え世界は荒れ果て、人々は石のように無表情となり、音の鳴らない楽器を弾き続けるままだった。唯一動いていたアコの友達のスズは、このようになったのはアフロディテが突如変貌し、音楽を奪ってしまったからだと言う。真相を確かめるべく、アコとメフィストはアフロディテのいる城へ向かうがアコは囚われ、響たちは走り去るスズを追いかけた先でアフロディテの配下「メイジャー3」と交戦する。
それぞれの戦いの最中、アフロディテがノイズの部下「ハウリング」によって身体を乗っ取られていたという真相が明らかとなる。選択を迫られたメフィストの命がけの行動によって、ハウリングはアフロディテの身体を開放した。
ようやく正体を表したハウリングとプリキュアたちの戦いが始まるが、ハウリングの強大な力にプリキュア達たちはなすすべなく倒されてしまう。だが、倒れたキュアメロディにクレッシェンドトーンの力を与えられ、メロディはクレッシェンドキュアメロディとなって復活した。
アコはこの戦いを通じて、まだ自分の使命が終わっていないことを悟る。そして断腸の思いで再び両親と別れ、すべてを終わらせるために響たちと加音町へと戻っていくのだった。
おもな登場キャラクター、アイテム
北条 響(ほうじょう ひびき)/キュアメロディ/クレッシェンドキュアメロディ …… 小清水 亜美(25歳)
母親であるアフロディテが事件を起こしたと聞いて落ちこむアコを励まし、彼女にアフロディテに会うようにすすめる。
南野 奏(みなみの かなで)/キュアリズム …… 折笠 富美子(36歳)
冒頭で、早朝に自分の部屋のベランダにいたメフィストと出遭って仰天する。
黒川 エレン(くろかわ エレン)/キュアビート …… 豊口 めぐみ(33歳)
メイジャーランドに出向く際には、本で得た知識を参考に時代劇の町娘のような旅装をしていた。
調辺 アコ(しらべ アコ)/キュアミューズ …… 大久保 瑠美(22歳)
冒頭では、父であるメフィストが警察に連行されたことをうけて交番へ向かい、父が問題を起こしたことに謝罪していた。物語の序盤では、自分がプリキュアとしての役目を終えたことでメイジャーランドに帰還することを決め、奏太たちに別れを告げていた。
母であるアフロディテに直接出会い、母が事件を起こしたことを信じないでいたが、アフロディテによって音楽を封じる空間に閉じ込こめられる。
ハミィ …… 三石 琴乃(43歳)
響の早朝ジョギングにつき合っていたが、フェアリートーンに無理矢理メフィストのいる交番まで連れて行かれた。メイジャーランドでは「ヒーリングチェスト」の管理を任されるが、うっかり道中に置いてきてパニック状態に陥る。
フェアリートーン(8名)…… 工藤 真由(25歳 全役兼任)
ハミィたちとともにメイジャーランドへ向かう。
クレッシェンドトーン …… 西原 久美子(46歳)
すべての音を生みだす力として、「ヒーリングチェスト」とともに敵側から狙われる。本作では危機を察知して自ら語りだしたり、スズに助言を送っていた。
アフロディテ …… 日高 のり子(49歳)
音楽を愛するメイジャーランドの女王であったが、突如として変貌し、国中の音楽を否定して音楽を奪うと宣言する。茨のようなものに包まれ、家臣へ指示を下す以外は身動き一つしないなど、普段とは違う様子を見せている。
実はハウリングの襲撃をうけ、やむを得ずハウリングを自身の体内に封印しようと試みて、逆にハウリングに体を操られていた。
メフィスト …… 堀内 賢雄(54歳)
冒頭で、アコの友人である奏太に挨拶するために南野家を訪問するが、誤って奏の部屋にベランダから侵入しようとしたため、駆けつけた警察に連行される。その後は、異変の起きたメイジャーランドへと向かった。
難しい年ごろになったアコの態度もあって、「娘に信用されていない」と、父親としての自分に情けなさを感じている。本編でのキャラクターデザインとは異なり、ノイズに操られていたときと同じ肌の色や顔立ちをしている。
南野 奏太(みなみの そうた)…… 小林 由美子(32歳)
メフィストとの遭遇に驚いた姉・奏の悲鳴を聞き、バットでメフィストに殴りかかろうとしていた。アコが故郷へ帰ると知って残念がるが、アコがそれほど寂しそうな素振りを見せなかったことに腹を立て、喧嘩になる。
調辺 音吉(しらべ おときち) …… 園部 啓一(51歳)
アフロディテの父で、アコの祖父、メフィストの舅にあたる。アフロディテが警察に連行されたという事件を電話で知らされ、愛用のペニー・ファージング型自転車で交番に駆けつける。メイジャーランドの危機を察知して響たちに事件解決を託す。
スズ …… 南 央美(43歳)
メイジャーランドに暮らす少女で、アコの友だち。世界から音楽が消失したことで、両親が音のない楽器を弾き続けるという状態になり、悲しみにくれる。
今回の事件の犯人とされるアフロディテを憎むあまり、アコと喧嘩になる。その後、道中でハミィが置き忘れた「ヒーリングチェスト」を守り、クレッシェンドトーンに音楽を取り戻してくれるように頼み込む。
ハウリング …… 玄田 哲章(63歳)
ノイズの幹部。実体のない煙のような姿をしているが、正体はコウモリのような巨大な怪物。極めて残虐かつ狂暴な性格をしている。非常に強力なパワーをもち、口から破壊光線を放つ。また、相手を石化させる能力も持つ。
音を憎むノイズを迎えるに相応しい新世界を作ることが目的で、音楽を消し去ろうとメイジャーランドに襲来したが、直後にアフロディテの体内に封じ込められた。だが、逆にアフロディテを操ることに成功し、凄まじいハウリング音を発生させてメイジャーランドからすべての音を奪い、住人たちを半石化状態のまま音の鳴らない楽器を演奏させ続ける姿に変えた。
物語中盤で、メフィストの行動によってアフロディテの身体から抜けだして正体をあらわし、プリキュアたちと戦闘する。
担当声優の玄田は次作『スマイルプリキュア!』で、最後の敵であるピエーロを演じている。
メイジャー3(メイジャースリー)
ハウリングの配下で、表向きはアフロディテの家臣として仕えるシャープ、フラット、ナチュラルからなる3人組。ホストのような雰囲気をした美青年たちで、「メイジャーランド初のアイドル」を自称する。
ネガトーンを召喚する能力を持つほか、それぞれ戦闘形態に変身するとプリキュアを苦戦させるほどの戦闘能力を発揮する。「ヒーリングチェスト」を奪おうとプリキュアたちに襲いかかるが、肝心のヒーリングチェストの詳細を知らないため、ハミィが持っていた木箱をヒーリングチェストと勘違いして奪っていた。
シャープ …… 遠近 孝一(40歳)
金髪で色黒の男。赤紫のジャケットを着て、金のブレスレットとネックレスを身に付けている。戦闘形態は全身が赤色のサルのような姿で、攻撃とスピードともに優れている。
敵を焼き尽くす高熱火炎「メガファイア」など、炎系の技を駆使してキュアメロディと激闘を繰り広げる。
フラット …… 真殿 光昭(47歳)
紫色のオールバックの髪型をした男。ブルーリムのメガネをかけている。3人の中では最も口数が多く、捕えられたメフィストを「役立たずの国王殿」と罵倒するなど、陰湿な物言いをする。戦闘形態は全身が緑色のイノシシのような姿で、打撃を無力化するほど弾力のある腹部をもつ。
パワーに長けており、怪力で相手をねじ伏せるとともに、破壊光弾「テラボール」を連射してキュアビートを苦しめる。
ナチュラル …… 金丸 淳一(48歳)
銀髪で色白の男。細身だが筋肉質な体格で、紫のVネックノースリーブシャツを着ている。普段は柔和的な性格だが、本性は狂暴で好戦的。英単語を交じえながら話す。戦闘形態は全身が青色の河童のような姿で、高いスピード能力を誇る。
全身から放つ高圧電撃「ギガサンダー」など、雷系の技でキュアリズムを追いつめる。
ネガトーン …… 大林 洋平(35歳)
本作では、メイジャー3が森に放置されていた楽器を利用して生み出した怪物。金属のような輪を発射して、キュアメロディとキュアリズムの両腕を拘束した。
ミラクルライトーン
本作で使用されるミラクルライト。「音楽」をイメージした作品にちなみ、先端に「八分音符」型の蛍光部分が付いている。劇中ではハウリングとプリキュアの大決戦の最中、スズの呼びかけに応じ、メイジャーランド国民の手に転送され、国民がライトを振ることによって、プリキュアたちはパワーを回復した。
おもなスタッフ
企画 …… 梅澤淳稔(51歳)ほか
脚本 …… 大野 敏哉(42歳)
キャラクターデザイン・作画監督 …… 高橋 晃(40歳)
音楽 …… 高梨 康治(48歳)
監督 …… 池田 洋子
制作 …… 東映アニメーション
主題歌
本作ではオープニング、エンディング共に、TV シリーズ本編での後期主題歌がそのまま使用された。
オープニングテーマ
『ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪ アンリミテッドバージョン』歌唱 …… 工藤 真由
エンディングテーマ
『キボウレインボウ』歌唱 …… 池田 彩
※本作での実質的なエンディングテーマである『心の歌』の後に流れたためテロップは無く、CGダンスシーン用のエンディングテーマとなった。映像は第38話以降のエンディングアニメーションの先行公開。
劇中歌
『心の歌』歌唱 …… Remi
※本作のスタッフロールはこの曲とともに流され、実質的なエンディングテーマとなった。
プリキュアシリーズの映画作品の第11作であり、シリーズ第8作『スイートプリキュア♪』の単独映画作品である。
今までのシリーズの単独映画作品は、TV 本編の流れとは直接のつながりのない番外編という位置づけだったが、本作は初めて本編との関連を明示しており、本編における第36話と第37話(ともに2011年10月放送)の間に発生したエピソードを描き、以降の本編の展開を補填するサイドストーリーになっている。このような連動を行うことになった背景としては、同年3月の東日本大震災の発生に伴い TVシリーズの放送日程にずれが生じ、キュアミューズの正体が判明する時期と映画の公開時期が重なったことが挙げられる。このため、同年2月の時点ですでにシナリオも組み上がっていた映画企画を全部白紙にした上で、本編と連動させる方針に転換したという。
また、これまでのプリキュアシリーズの単独映画作品は、基本的に本編に登場しない異世界(映画『ハートキャッチプリキュア!』のみ現実世界のフランス首都パリが舞台)を舞台にしているが、本作では本編にも登場するメイジャーランドを舞台としており、そこで暮らす少女(本作オリジナルのゲストキャラクター)とその家族の物語となる。
本作で、映画作品としては初めてキュアビートとキュアミューズ、フェアリートーンが登場する。特にキュアミューズについては映画公開直近の第35・36話で正体が判明したため、それを秘匿する意味で、予告編などではこれまでの黒い仮面姿のミューズを登場させていたほか、キャスト部分でも役名などの情報は一切掲載されていなかった。
本作でも映画鑑賞者参加型のシステムは継続され、今回は「ミラクルライトーン」というミラクルライトが中学生以下の観客に配布された。それと同時に、前作では廃止されていたミラクルライトの使用解説シーンが本作では復活し、ハミィとフェアリートーン全員の計9名で解説が行われた(ただし担当声優はハミィ役の三石琴乃、フェアリートーン8名全役兼任の工藤真由の2名)。さらにエンディングでは、CGダンスが盛り込まれる前に説明も挿入され、「前説・本編・後説」の構成になっている。当初はミラクルライトに変わるような、本編のテーマである「音楽」を元にした新しい企画も構想されていたが、映画館で音を出すのは問題があるとしてライトが継続されたという。他にも子どもの鑑賞者には、「ニャンバイザー」と呼ばれるサンバイザーが配布された。
スタッフは、『スイートプリキュア♪』の本編で初めてプリキュア作品に携わった池田洋子を監督に起用、女性監督としては前年の映画『ハートキャッチプリキュア!』の松本理恵に続いて2人目となる。池田にとっても映画作品の監督は本作が初めてだった。脚本は TVシリーズ構成の大野敏哉が、本編との連動のために直接担当した。作画監督も本作のキャラクターデザインを務めている高橋晃が担当し、本作で響たちが着用する私服を書き下ろしているほか、監督の池田の注文で『水戸黄門』のキャラクター「かげろうお銀」の町娘姿をイメージしたエレンの衣装も描いている。
本作のテーマは、TV 本編のテーマである「友情」だけでなく、親子愛、特に「父と娘の関係」を中心に描いている。池田は、「親子愛があり友情があった上で皆の気持ちがひとつになる、という流れになる。」としており、「子供のために親が頑張るシーンがあるので、親御さんにはその辺りも見てほしい。」と語っている。その一方で、本来のテーマの友情についても、「響と奏の二人あってこそのプリキュアチーム。二人の心の絆にも注目して欲しい。」と語っている。プリキュアという作品の描き方についても、「変身してカッコよく戦う行動的なところはあるが、それ以外は普通の女の子と変わらない、ノーマルな普通な女の子の部分もきちんと描きたい。女性スタッフもいるので、女性目線も出していけば作品の幅も広がり、共感してもらえる部分がもっと増えるのでは。」としている。
音楽は TV本編と同様に高梨康治が担当している。高梨は本作でのメインテーマとなる『心の歌』も制作し、歌詞は歌手のRemi によって作詞された。この曲のバリエーションがいくつかの重要なシーンで用いられており、特にラストバトルのシーンでは、監督の池田の意向でこの曲を優しい曲調にアレンジしたものが使用されている。
全国168スクリーンでの公開ながら、2011年10月29・30日の初日2日間で興行収入約1億9700万円、動員数約18万人を記録した。
あらすじ
父であるメフィストが善の心を取り戻し、調辺アコはキュアミューズの役目も終わったとして父と共にメイジャーランドへ帰ることになった。その時、突然街にハウリング音が鳴り響き、街から音楽が消えてしまう事件が発生する。
心配に思った響たちはメイジャーランドに向かうが、いつも音楽で満ち溢れていたかつての面影は無く、音楽が消え世界は荒れ果て、人々は石のように無表情となり、音の鳴らない楽器を弾き続けるままだった。唯一動いていたアコの友達のスズは、このようになったのはアフロディテが突如変貌し、音楽を奪ってしまったからだと言う。真相を確かめるべく、アコとメフィストはアフロディテのいる城へ向かうがアコは囚われ、響たちは走り去るスズを追いかけた先でアフロディテの配下「メイジャー3」と交戦する。
それぞれの戦いの最中、アフロディテがノイズの部下「ハウリング」によって身体を乗っ取られていたという真相が明らかとなる。選択を迫られたメフィストの命がけの行動によって、ハウリングはアフロディテの身体を開放した。
ようやく正体を表したハウリングとプリキュアたちの戦いが始まるが、ハウリングの強大な力にプリキュア達たちはなすすべなく倒されてしまう。だが、倒れたキュアメロディにクレッシェンドトーンの力を与えられ、メロディはクレッシェンドキュアメロディとなって復活した。
アコはこの戦いを通じて、まだ自分の使命が終わっていないことを悟る。そして断腸の思いで再び両親と別れ、すべてを終わらせるために響たちと加音町へと戻っていくのだった。
おもな登場キャラクター、アイテム
北条 響(ほうじょう ひびき)/キュアメロディ/クレッシェンドキュアメロディ …… 小清水 亜美(25歳)
母親であるアフロディテが事件を起こしたと聞いて落ちこむアコを励まし、彼女にアフロディテに会うようにすすめる。
南野 奏(みなみの かなで)/キュアリズム …… 折笠 富美子(36歳)
冒頭で、早朝に自分の部屋のベランダにいたメフィストと出遭って仰天する。
黒川 エレン(くろかわ エレン)/キュアビート …… 豊口 めぐみ(33歳)
メイジャーランドに出向く際には、本で得た知識を参考に時代劇の町娘のような旅装をしていた。
調辺 アコ(しらべ アコ)/キュアミューズ …… 大久保 瑠美(22歳)
冒頭では、父であるメフィストが警察に連行されたことをうけて交番へ向かい、父が問題を起こしたことに謝罪していた。物語の序盤では、自分がプリキュアとしての役目を終えたことでメイジャーランドに帰還することを決め、奏太たちに別れを告げていた。
母であるアフロディテに直接出会い、母が事件を起こしたことを信じないでいたが、アフロディテによって音楽を封じる空間に閉じ込こめられる。
ハミィ …… 三石 琴乃(43歳)
響の早朝ジョギングにつき合っていたが、フェアリートーンに無理矢理メフィストのいる交番まで連れて行かれた。メイジャーランドでは「ヒーリングチェスト」の管理を任されるが、うっかり道中に置いてきてパニック状態に陥る。
フェアリートーン(8名)…… 工藤 真由(25歳 全役兼任)
ハミィたちとともにメイジャーランドへ向かう。
クレッシェンドトーン …… 西原 久美子(46歳)
すべての音を生みだす力として、「ヒーリングチェスト」とともに敵側から狙われる。本作では危機を察知して自ら語りだしたり、スズに助言を送っていた。
アフロディテ …… 日高 のり子(49歳)
音楽を愛するメイジャーランドの女王であったが、突如として変貌し、国中の音楽を否定して音楽を奪うと宣言する。茨のようなものに包まれ、家臣へ指示を下す以外は身動き一つしないなど、普段とは違う様子を見せている。
実はハウリングの襲撃をうけ、やむを得ずハウリングを自身の体内に封印しようと試みて、逆にハウリングに体を操られていた。
メフィスト …… 堀内 賢雄(54歳)
冒頭で、アコの友人である奏太に挨拶するために南野家を訪問するが、誤って奏の部屋にベランダから侵入しようとしたため、駆けつけた警察に連行される。その後は、異変の起きたメイジャーランドへと向かった。
難しい年ごろになったアコの態度もあって、「娘に信用されていない」と、父親としての自分に情けなさを感じている。本編でのキャラクターデザインとは異なり、ノイズに操られていたときと同じ肌の色や顔立ちをしている。
南野 奏太(みなみの そうた)…… 小林 由美子(32歳)
メフィストとの遭遇に驚いた姉・奏の悲鳴を聞き、バットでメフィストに殴りかかろうとしていた。アコが故郷へ帰ると知って残念がるが、アコがそれほど寂しそうな素振りを見せなかったことに腹を立て、喧嘩になる。
調辺 音吉(しらべ おときち) …… 園部 啓一(51歳)
アフロディテの父で、アコの祖父、メフィストの舅にあたる。アフロディテが警察に連行されたという事件を電話で知らされ、愛用のペニー・ファージング型自転車で交番に駆けつける。メイジャーランドの危機を察知して響たちに事件解決を託す。
スズ …… 南 央美(43歳)
メイジャーランドに暮らす少女で、アコの友だち。世界から音楽が消失したことで、両親が音のない楽器を弾き続けるという状態になり、悲しみにくれる。
今回の事件の犯人とされるアフロディテを憎むあまり、アコと喧嘩になる。その後、道中でハミィが置き忘れた「ヒーリングチェスト」を守り、クレッシェンドトーンに音楽を取り戻してくれるように頼み込む。
ハウリング …… 玄田 哲章(63歳)
ノイズの幹部。実体のない煙のような姿をしているが、正体はコウモリのような巨大な怪物。極めて残虐かつ狂暴な性格をしている。非常に強力なパワーをもち、口から破壊光線を放つ。また、相手を石化させる能力も持つ。
音を憎むノイズを迎えるに相応しい新世界を作ることが目的で、音楽を消し去ろうとメイジャーランドに襲来したが、直後にアフロディテの体内に封じ込められた。だが、逆にアフロディテを操ることに成功し、凄まじいハウリング音を発生させてメイジャーランドからすべての音を奪い、住人たちを半石化状態のまま音の鳴らない楽器を演奏させ続ける姿に変えた。
物語中盤で、メフィストの行動によってアフロディテの身体から抜けだして正体をあらわし、プリキュアたちと戦闘する。
担当声優の玄田は次作『スマイルプリキュア!』で、最後の敵であるピエーロを演じている。
メイジャー3(メイジャースリー)
ハウリングの配下で、表向きはアフロディテの家臣として仕えるシャープ、フラット、ナチュラルからなる3人組。ホストのような雰囲気をした美青年たちで、「メイジャーランド初のアイドル」を自称する。
ネガトーンを召喚する能力を持つほか、それぞれ戦闘形態に変身するとプリキュアを苦戦させるほどの戦闘能力を発揮する。「ヒーリングチェスト」を奪おうとプリキュアたちに襲いかかるが、肝心のヒーリングチェストの詳細を知らないため、ハミィが持っていた木箱をヒーリングチェストと勘違いして奪っていた。
シャープ …… 遠近 孝一(40歳)
金髪で色黒の男。赤紫のジャケットを着て、金のブレスレットとネックレスを身に付けている。戦闘形態は全身が赤色のサルのような姿で、攻撃とスピードともに優れている。
敵を焼き尽くす高熱火炎「メガファイア」など、炎系の技を駆使してキュアメロディと激闘を繰り広げる。
フラット …… 真殿 光昭(47歳)
紫色のオールバックの髪型をした男。ブルーリムのメガネをかけている。3人の中では最も口数が多く、捕えられたメフィストを「役立たずの国王殿」と罵倒するなど、陰湿な物言いをする。戦闘形態は全身が緑色のイノシシのような姿で、打撃を無力化するほど弾力のある腹部をもつ。
パワーに長けており、怪力で相手をねじ伏せるとともに、破壊光弾「テラボール」を連射してキュアビートを苦しめる。
ナチュラル …… 金丸 淳一(48歳)
銀髪で色白の男。細身だが筋肉質な体格で、紫のVネックノースリーブシャツを着ている。普段は柔和的な性格だが、本性は狂暴で好戦的。英単語を交じえながら話す。戦闘形態は全身が青色の河童のような姿で、高いスピード能力を誇る。
全身から放つ高圧電撃「ギガサンダー」など、雷系の技でキュアリズムを追いつめる。
ネガトーン …… 大林 洋平(35歳)
本作では、メイジャー3が森に放置されていた楽器を利用して生み出した怪物。金属のような輪を発射して、キュアメロディとキュアリズムの両腕を拘束した。
ミラクルライトーン
本作で使用されるミラクルライト。「音楽」をイメージした作品にちなみ、先端に「八分音符」型の蛍光部分が付いている。劇中ではハウリングとプリキュアの大決戦の最中、スズの呼びかけに応じ、メイジャーランド国民の手に転送され、国民がライトを振ることによって、プリキュアたちはパワーを回復した。
おもなスタッフ
企画 …… 梅澤淳稔(51歳)ほか
脚本 …… 大野 敏哉(42歳)
キャラクターデザイン・作画監督 …… 高橋 晃(40歳)
音楽 …… 高梨 康治(48歳)
監督 …… 池田 洋子
制作 …… 東映アニメーション
主題歌
本作ではオープニング、エンディング共に、TV シリーズ本編での後期主題歌がそのまま使用された。
オープニングテーマ
『ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪ アンリミテッドバージョン』歌唱 …… 工藤 真由
エンディングテーマ
『キボウレインボウ』歌唱 …… 池田 彩
※本作での実質的なエンディングテーマである『心の歌』の後に流れたためテロップは無く、CGダンスシーン用のエンディングテーマとなった。映像は第38話以降のエンディングアニメーションの先行公開。
劇中歌
『心の歌』歌唱 …… Remi
※本作のスタッフロールはこの曲とともに流され、実質的なエンディングテーマとなった。