『終わりのクロニクル 第1巻(上・下)』(2003年6・7月刊)
『終わりのクロニクル(おわりのクロニクル)』は、川上稔のライトノベル。イラストはさとやす。電撃文庫(メディアワークス)より2003年6月~2005年12月に刊行された。単行本全14巻。
川上稔による架空の世界観「都市世界」における「AHEAD」時代を取り扱った作品。総じてページ数が多く、最終巻は1000ページを超えて当時の電撃文庫における最厚記録を樹立した。
あらすじ
第2次世界大戦(1939~45年)という歴史の裏側にもうひとつ、決して表に出ることのない戦争があった。平行して存在し干渉しあう性質を歯車に例えて「ギア(G)」と呼ばれる11の世界が生き残りをかけて戦ったその戦争は、全ての物事の究極の理由「概念」を奪い合い滅ぼすことから「概念戦争」と呼ばれた。そして概念戦争に勝利したこの世界「Low-G」に全てが隠蔽されてから60年後、ある問題が発生した。
Low-Gのみが所持する「マイナス概念」の活性化。それにより、今や唯一のギアとなった Low-Gは再び滅びの道を歩み始めた。滅びを回避するためには、かつて滅ぼした10のギアの概念の力が必要だった。概念戦争を知り、10のギアを滅ぼした組織「UCAT」は、各異世界の生き残り勢力との交渉のための専門部隊である全竜交渉部隊「チームレヴァイアサン」を編成する。
そこで、ひとりの少年が祖父からその代表たる役目と権利を譲られ、「自分が本気になるために」交渉役を引き受ける。自ら悪役を名乗る少年、その名を佐山・御言。全ての遺恨を収め世界を救うための交渉、全竜交渉(レヴァイアサンロード)が、彼の言葉「佐山の姓は悪役を任ずる」とともに始まる。
ギアと概念戦争
ギア(G)とは、Low-Gと10の異世界の総称。10の異世界は独自の物理法則「概念」とそれに由来する文化・技術を持ち、一定周期で Low-Gに接近することで Low-Gの文化などに影響を与えた。 各ギアとの接点は地球上の特定の地域に多く、そのため各ギアは Low-Gの世界各地における神話の原型であるとされている。 また、地脈の流れから見た世界と日本列島が相似で互いに影響を与えうるとする説「神州世界対応論」により、日本に各ギアへの接点が作られることになる。
後に Low-Gの西暦1999年12月25日に全ギアの周期が重なり、その時最も多くの概念を持つギア以外の全ギアが滅びることが判明する。それによって各ギアが概念核の略奪のために他ギアに侵攻する戦争、「概念戦争」が勃発した。
1st-G(ファースト・ギア)
主要概念 …… 文字が力を持つ概念
対応神話 …… ニーベルンゲンの災い(西暦5~6世紀に Low-Gに伝来?)
対応地域 …… ドイツ / 日本の近畿地方
テーブル型の大地をドーム状の空が覆う内向型構造で、星はドーム内面に張り付き、太陽は地下道を通って周回する。昼夜は太陽の出没で区別し、月は存在しない。大気には1st-Gにとっての文字の役割を担う精霊が存在し、1st-G住人は説得によって自然を操作できた。生物は文字という力が進化と突然変異を繰り返した末に誕生した。そのため1st-G生物は体内に遺伝子として文字があり、多様な能力を持つ反面で1st-G外での生存能力を著しく欠く。
文化はヴォータンという王国が周辺の集落や街を統治する体制をとっていた。土地は狭かったが文字と対話によって事象を操り、不便は少なかった。しかし文字を書くとそれが現実化してしまう危険があったために、筆記系の文化は王族や専門職にのみ与えられ発達しなかった。
1st-Gの概念戦争
元来戦闘力が低い1st-Gは、種族の戦闘力強化や5th-Gの機竜を解析して自前の機竜を開発して抗った。しかし戦争中に王妃を失った1st-G王は世界の「門」を封鎖して概念戦争から離脱し、衝突時間ギリギリで生き残った他ギアに亡命する処置を定めた。しかし、第一王女グートルーネや王弟レギンの庇護を受けていたジークフリート=ゾーンブルクがグラムを強奪、ハーゲンを除く王族とファブニールを殺して概念核の半分を持ち去った。それによって衝突時間以前に1st-Gは滅びたとされている。
Low-G(ロウ・ギア)
主要概念 …… 矛盾許容概念
対応神話 …… 聖書
対応地域 …… 現在の世界全体
本シリーズの舞台となる世界。マイナス概念を有するためにいかなる長所も持たない「最低の世界」。『聖書』の原型とされ、各ギアを神話や伝説として現在に伝えている。
各ギアの負荷を抱え込んだ「吹き溜まり」で最弱と蔑まれたが、概念戦争に勝利して現存唯一のギアとなった。各ギアの亡命者が多数存在しているが、その全てが UCATに恭順しているわけではない。現在はマイナス概念の活性化による自滅の危機に瀕し、全竜交渉によるプラス概念の全解放で危機を脱しようとしている。
Low-Gの概念戦争
元来、他ギアの概念すら知らなかった Low-Gは衣笠・天恭の「神州世界対応論」により地脈という形で他ギアと接触し、そして機竜と武神の残骸を見たことで概念戦争の存在に気付いた。大日本帝国の出雲社護国課は第2次世界大戦終結後に日本UCATとなり、8人の異G調査員が集めた技術、恭順した他ギアの勢力や亡命者らと協力して戦力を整え、調査員たちが概念核を奪うことによって全ての他ギアを滅ぼした。その戦争の影響によって日本では関西大震災が発生した。
作中の専門用語
概念
あらゆる事象の原因にある「それはそういうものだから」と言わざるを得ない、物理法則のようなもの。
自弦振動
概念の力を示す可変一定周期の震動波。大きく分けて「母体自弦振動」と「子体自弦振動」の2つが存在し、あらゆる存在はこの2種を有している。
母体自弦振動
保有している存在がどのギアに所属しているのかを示す自弦振動。人名における「姓」のようなもの。
子体自弦振動
保有している存在の個性を示す自弦振動。人名における「名」のようなもの。
存在率 / 崩壊率
自弦振動は物体の存在を支えるものであり、一定量以上破壊されると物体は存在できなくなりなんらかの形で崩壊する。その破壊の程度を表した用語が存在率と崩壊率であり、5割以上の存在率が失われると崩壊が起きる。
概念空間は周囲の物体の存在率の一部を取り込んでいるため、概念空間内の物体が破壊されると物体の存在率が欠けていき、何度も繰り返すと本体も崩壊してしまう。このルールはギア自体にも適用され、半分以上の概念核が奪取・破壊されるとそのギアは崩壊することとなる。
概念核(がいねんかく)
大規模な概念の塊。基本的にギアを形成する概念の半分以上を占める塊であるため、ギアそのものともいえる重要な存在。Low-Gで用いられる概念は、基本的に他の各ギアの概念核から抽出された劣化複製である。概念戦争を経て、各ギアの概念核は竜または武器(概念核兵器)に封じられている。
マイナス概念
Low-Gの中核を成す概念。プラス概念の負荷として発生し、一切の特性を持たず万物を害する力である。Low-Gには他ギアのマイナス概念も落とし込まれており、概念核の対となるように10個存在している。2005年12月25日に活性化し、Low-Gを内側から滅ぼすことが予測されている。
概念空間(がいねんくうかん)
概念を空間に付加して生まれる擬似的な異世界。空間の母体自弦振動の一部を書き換えることで、存在の一部を異世界側へと分化させて作成される空間であり、残りの母体自弦振動によって現実ともつながっているため、作成するのも戻すのも比較的簡単である。
物体も存在の一部だけを送り込むことはできるが、その際に劣化してしまうため動くたびに徐々に崩壊していってしまう。そのため人間など中で活動する物体は自弦振動を100% 送りこまねばならない。
概念条文(がいねんじょうぶん)
概念空間に入った生物の脳裏に聞こえる概念の効果内容。声は聞き手本人と同じ声として聞こえる。聞こえるものは概念空間内で特に強い概念のものであり、条文として聞こえないだけで実際は他にも微細な概念が大量に存在している。
概念兵器
概念を内蔵する武器の総称。主に「機殻(カウル)」の名を冠するタイプとそうでないタイプがあり、概念核を収めたものは「概念核兵器」と称される場合が多い。「概念を内封した戦闘用機械」と定義すれば、機竜・武神・戦闘用自動人形も概念兵器に含まれる。
機殻武器
戦闘目的で運用するために武器の形状を取るタイプ。機殻は内蔵した概念に対する耐久力であると同時に、機能の方向性を定めるために付けられている。作中では「機殻剣(カウリングソード)」、「機殻杖(カウリングストック)」、「機殻槍(カウリングランス)」、「機殻鉄鎚(カウリングハンマー)」、「機殻弓(カウリングアロー)」、「機殻銃(読み不明)」の6種類の機殻武器が登場する。
機殻剣(カウリングソード)
剣の形態をとる概念兵器の総称。登場する中では最も該当する概念兵器が多い。
V-Sw(ヴィズィ)
自意識を持つ6th-Gの概念核兵器で、出雲・覚の専用武装。
6th-Gを維持するために造られた6th-G製機殻剣「ヴァジュラ」に、6th-G概念核「ヴリトラ」を納めたもので、普段は身の丈程もある白い大剣の形態をとる。性格はマイペースでのんびり屋。
聖剣グラム
1st-Gの概念核兵器。
長大な剣であり、また自意識を持つ。概念戦争時代にファブニールの原動力に使われていた概念核の半分を収め、全竜交渉ではファブニール改から残り半分を回収した。性格は人格者。
機殻槍(カウリングランス)
槍の形態をとる概念兵器の総称。登場する物は少ないがいずれも強大な性能を秘めている。
G-Sp2(ガスプツー)
通称「神槍」。自意識を持つ10th-G概念核兵器。風見・千里の専用武装。
普段は身の丈程もある長大な白い槍の形態をとる。性格は従順なペット気質。元々は10th-Gの内乱鎮圧用機殻鉄槌「雷神鉄槌」が、10th-G概念核の保存器兼武器として機殻槍「G-Sp(ガスプ)」に改造さたものだったが、全竜交渉で千里に合わせて改修を受けてG-Sp2となった。
機殻杖(カウリングストック)
杖の形態をした概念兵器の総称。その機能は杖というよりも火器のバズーカ砲に近い。
Ex-St(エグジスト)
Low-G製概念兵器。新庄・運の専用武装。
砲塔の交換によって砲撃の種類を変更し、あらゆる概念下での運用が可能。運の要望により、出力は所有者の意思で調整される。トリガーがボタン型であるため、使い方次第で高速連射が可能であり、ある程度の追尾機能や余剰出力による溜め打ち機能も持つ。
機殻銃
銃の形態をとる概念兵器の総称。特筆するべき高性能の物はないが、平均的な武装として広く使われている。1st-Gの王城派も武装しており、その機構は1st-G概念に基づいたもので、装填した書物に込められた熱意を弾丸として放つ。
ゲオルギウス
詳細不明のグローブ型概念兵器。佐山家・新庄家の専用武装。
プラスのメダルを嵌める左手用と、マイナスのメダルを嵌める右手用の一対で、メダルは脱着が可能。右手用が紛失し、全竜交渉で大城・至からもうひとつを探すように佐山・御言へ左手用のみが託された。概念の増幅や効果を逆転させる機能を持つ。
X-Wi(エクシヴィ)
2nd-G概念対応の飛行用概念兵器。風見・千里が使用。バックパック型。光に力を与える概念を内蔵し、自力で概念空間を展開出来る稀少な機体。
鎮魂の曲刃(レークイヴェム・ゼンゼ)
1st-G冥府管理長の専用概念兵器。大鎌型。冥府と現世の境を切り開いて死者と対話する機能を持ち、時には戦闘力として召喚することもできる。元々はハーゲンが持っていたが、ハーゲンがファブニール改と合一したためブレンヒルト=シルトに預けられた。
賢石
概念を封印した結晶体の総称。所有者の母体自弦振動を変えることなく、概念空間を作らずとも概念を使用することができる。概念兵器の燃料にも用いられる。
機竜
概念戦争時代、単体では最強の戦闘力を誇った竜型の機械。強大な戦闘能力を有しているが、合一搭乗すると搭乗者は二度と分離できない欠陥があり、Low-Gの機竜は通常の搭乗手段を採用している。1st-G、5th-G、Low-Gなどのギアで開発されているが、本家は5th-Gでありその他の機竜は5th-Gの技術の模倣か複製である。
ファブニール / ファブニール改
5th-G機竜の残骸を研究して開発された1st-G製の機竜で、それぞれ出力炉に1st-G概念核の半分を搭載する。陸上戦闘用であり、射撃や高速機動ではなく格闘による戦闘を行う。ファブニールは出力炉が1基しかなく、概念戦争時に出力炉を破壊されて機動停止した。ファブニール改は複製概念を積んだ2つ目の出力炉を搭載し、どちらかが壊れだけでは停止しない構造になっている。
門
自分の母体自弦振動を変化させ、異なる母体自弦振動のギアにも移動できるようにする機能を有した空間の穴で、異なるギアや概念空間への入り口。概念戦争の時代は巨大な装置が必要であったが、現代では人間ほどの大きさなら腕時計型の小型装置で開けるようになっている。
概念符
身体強化系の概念が封じられた符で、札型の賢石ともいうべき物。1st-Gの文字に寄る能力付加などで造られている。
全竜交渉(レヴァイアサン・ロード)
来たる2005年12月25日のマイナス概念活性化に向け、異ギアの生き残り勢力から概念核の使用権を得るために行われる交渉。佐山・薫によって提案され、その交渉役には彼の孫である佐山・御言が推薦されている。
全竜交渉部隊(チーム・レヴァイアサン)
全竜交渉を遂行するために設立された特設部隊。選りすぐりの優秀な課員のみが所属される。監督には大城・至、交渉役は佐山・御言が務める。
UCAT(ユーシーエーティー)
正式名称は「Universal Counter Attack Team」。世界各地に出現する未確認生物(実際は他ギアの生物である)に対応するために設立された世界規模の機密組織。表面上は別の組織を名乗っており、日本では総合企業「IAI」がそれに該当するが、それ以外では各国軍の名を使っている。自国に対応するギアがある UCATは発言力が強いらしく、中でもドイツUCAT、アメリカUCAT、中国UCAT、日本UCATの発言力が特に強い。
日本UCAT
かつての出雲社護国課を前身とする、概念戦争を終結に導いた UCAT。装甲服のカラーリングは白と黒。日本各地に基地が確認されている。所属する者たちは方向性こそ違うものの、全てハイレベルな変態である。日本は神州世界対応論によって最も他ギアの概念に触れたため、概念戦争に深く関わった。
ドイツUCAT
1st-G概念を元にした「術式」の技術に優れた UCAT。魔女が多く所属しているため、装甲服は魔女の服を模している。自動人形の開発にも長けており、Sfを開発したのもドイツUCATである。概念戦争時代はジークフリート=ゾーンブルクが護国課顧問を勤めていた。
尊秋多学院(たかあきたがくいん)
東京都秋川市(現在のあきる野市)にある私立高等学校。佐山・御言を始めとする全竜交渉部隊メンバーが通い、他にもブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクなど日本UCAT関係者も多く所属している。過去には佐山の両親や新庄の母親も在籍していた。学生寮を備え、マラソン用トラックもあるなど設備が整っている。JR五日市線秋川駅に近い。
衣笠書庫(きぬがさしょこ)
尊秋多学院内にある図書室。創立者は衣笠・天恭で、現在はジークフリート=ゾーンブルクが司書を勤めている。非常に大規模で、尊秋多学院2年次普通校舎1階の8教室分と更にその廊下、地階にも広がっている。
IAI(アイエーアイ)
日本UCATが表向きに掲げている総合企業。出雲社の出雲航空技研が前身となっており、元々は航空技術を専門とする企業だった。だが神州世界対応論遂行のために設立された護国課が概念戦争に関わったために他Gの技術を触れ、密かにそれを解析して製品に用いて数々の成果を上げ、世界有数の大企業にのし上がった。
手掛ける事業は幅広く、航空旅客事業から自動車・家電製品等の製造、清涼飲料水販売まで取り扱っている。現社長は出雲・烈。息子である覚が次期社長候補である。
護国課(ごこくか)
第2次世界大戦直後、衣笠・天恭が提唱した神州世界対応論を遂行するために出雲社(後の IAI)に設立された部署。衣笠・天恭を中心にして佐山・薫、新庄・要、出雲・全、大城・宏昌、飛場・竜徹が所属し、ドイツから来たジークフリート=ゾーンブルクが顧問を勤めた。神州世界対応論によって世界中の地脈に干渉したことで概念に対する知識と技術を早い段階から取得していた。
後に UCATに吸収されるという名目で協力し、日本UCATに発展したが、衣笠・天恭と新庄・要は日本UCATには所属しなかった。
神州世界対応論(しんしゅうせかいたいおうろん)
衣笠・天恭が提唱した理論。その内容は「日本は世界の地形と対応する、世界全体の地脈の中心である。各国の地脈をそれと対応した日本の地脈と接続、そして日本側の地脈を活性化させれば接続先の国の地脈の活性化につながり、世界全体の情勢を左右出来る。」とするものである。実際にその接続が成功したために、日本は世界全体の情勢管理を担い、他ギアの災厄を一身に背負うことで第2次世界大戦後の占領を免れたとされている。
日本列島を世界大陸に当てはめており、この論によると東北沿岸部は中国大陸からロシアの東側沿岸、東京湾は黄海、伊豆半島はタイ、静岡はインド、伊勢湾はペルシャ湾、紀伊半島はアラビア半島。琵琶湖はカスピ海、大阪湾は黒海、児島半島はギリシャ、呉周辺がイタリア、対馬はイギリス、島根半島はノルウェー、四国がオーストラリア大陸、九州はアフリカ大陸、佐渡が北極の島々となる。北海道については、渡島半島がアラスカ、中部が北米、根室・北方領土が南米となる。この理論における日本は伊豆七島に、富士山はエベレストに相当する。
この理論は他ギアの Low-Gにおける勢力図にも関わっており、他ギアは神州世界対応論で自らの世界に対応した国か地域に門を開いて亡命し、居留地や UCATに従わない残党の拠点の位置もこれに寄る。
八大竜王(はちだいりゅうおう)
概念戦争において10のギアを滅ぼした8名の総称で、護国課の中心人物5名と、後の日本UCAT発足時に他国の UCATから編入して来た3名のことを言う。元々は他ギアの調査員だったが、紆余曲折の果てに担当したギアの崩壊に携わることとなる。佐山・薫と出雲・全がそれぞれ2つのギアを担当したため、ギアの総数と同数ではない。
佐山・薫(護国課特殊技術部長、中尉 4th-Gと8th-Gを担当)1917年生まれ、本作開始前に死亡
出雲・全(護国課大代表、中尉 6th-Gと10th-Gを担当)1915年生まれ、本作開始前に死亡
大城・宏昌(護国課技術部長、中尉 2nd-Gを担当)1906年生まれ、概念戦争時代に死亡
飛場・竜徹(護国課警備部長、曹長 3rd-Gを担当)1919年生まれ、現在も生存
ジークフリート=ゾーンブルク(護国課顧問 1st-Gを担当)1915年生まれ、現在も生存
趙・晴(中国UCAT 7th-Gを担当)生存
リチャード=サンダーソン(アメリカUCAT 5th-Gを担当)未登場
アブラム=メサム(中東UCAT 9th-Gを担当)未登場
関西大震災(かんさいだいしんさい)
1995年12月25日に大阪府で突如発生した大規模地震。その禍根は10年が経過した本作においても色濃く残っている。主要人物の親の多くは救助隊として向かい、そこで死亡した。
Tes.(テス / テスタメント)
各国UCAT共通の言葉で、返事や同意の意味で用いられる。聖書における「契約」を意味する。
バベル
近畿地方のどこかに聳えるとされる巨大な塔型施設。内部にはマイナス概念が収められており、関西大震災の震源地となったとされる。侵入者を拒むが、衣笠・天恭らは内部に入り、中から概念関係の技術を持ち出したとされている。
半竜(はんりゅう)
竜の容姿と人間の形態を併せ持った1st-Gの異種族の一種。1st-G概念を宿した概念空間の中でしか生きることができない。非常に長命で記憶力もあり、文字関係の文化が発展しなかった1st-Gでは語り部の役に就くことが多かった。全身が鱗で覆われた頑丈な体とそれを支える強靭な身体能力を有している。「闇渡り」の能力を持つ半竜もいる。
冥界
1st-Gにおける死後の世界。空想上のものではなく、実際に肉体を失った魂が移送される概念空間である。冥界管理長という役職が存在し、長に与えられる概念兵器「鎮魂の曲刃」は冥界を一時的に開いて冥界の死者と対話することができる。
和平派
概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファーゾルトを長として UCATに恭順した集団で、普段は居住区内で自給自足の生活を送っている。1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、王城側の門から脱出した者たちで構成されている。基本的に争いを好まない性格だが、攻撃的な者たちは王城派に分裂し、ファーフナーが市街派に所属している。
市街派
概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファブニール改ことハーゲンを長に据え、若手リーダーのファーフナーと王族の庇護者ブレンヒルトを中心とする過激派で、概念核を保有するがゆえに強い影響力を持つ。「軍」の協力によって資材や拠点を確保した。派名の由来は1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、市街側の門から脱出したことに由来する。
王城派
概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。和平派から概念空間技術を持って分離した武闘派。戦闘意欲と意思は強いが、これといった特徴を持たず勢力は弱い。王城側の門から脱出した和平派から分離したが、しかし和平を望まないためこれを名乗る。
軍(ぐん)
9th-Gの残党を中心とし、各ギアの UCATに反発する者たちによって構成された、どのギアにも属さない謎の集団。元9th-Gの大将軍ハジをリーダーとし、戸田・命刻、田宮・詩乃らが主力となっている。日本UCATのみを敵と定め、その最終目的はそれを壊滅させることとしている。
主な登場キャラクター
※担当声優は、文化放送『電撃大賞』で2005年11月に放送されたラジオドラマ版(第1巻の内容のみ 全4話)でのキャスティング
佐山・御言(さやま・みこと)…… 平川 大輔(32歳)
全竜交渉部隊交渉役兼リーダー格。尊秋多学院生徒会副会長。2年生。貘を連れている。佐山・薫の義理の孫で、「悪役」になる事を望む少年。現在は天涯孤独で、田宮家の世話になっている。
母・愉命と共に死に瀕した過去から、両親に関わることを考えると狭心症を起こす。薫と飛場・竜徹の教育により文武両道だが、中学時代の空手全国大会決勝で左手を砕き、幻痛を起こす後遺症を持っている。
新庄・運(しんじょう・さだめ)…… 釘宮 理恵(26歳)
全竜交渉部隊メンバーで、前衛援護担当。幼少期から記憶喪失で UCATで育てられた。双子の弟と名乗る「切(せつ)」が尊秋多学院2年生として編入し、御言の男子寮のルームメイトとなるが……?
奥多摩の山奥で育てられたためか、常識感覚が現代より10~20年ほど遅れている。
出雲・覚(いずも・かく)…… 谷山 紀章(30歳)
全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会長。現在は留年して3年生。Low-Gと10th-G神族のハーフを父に、10th-G神族を母に持つ青年。幼少時は10th-G居留地で暮らしていた。両親譲りの非常に頑強な肉体を持ち、そのため風見の腕力にも耐えることができる。父親のことを好いておらず、言及されることを嫌う。
風見・千里(かざみ・ちさと)…… 前田 愛(30歳)
全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会計。3年生。Low-G出身の一般人だが、6th-Gと10th-Gの全竜交渉に居合わせたことで UCATに所属する。常識を超える腕力を持つ。父親は TVディレクター、母親はマイナーながら根強い人気を持つ歌手で、自身も学校でバンドのボーカルを勤める。元なぎなた部所属。
日本UCAT
全竜交渉部隊
大城・一夫(おおしろ・かずお)…… 丸山 詠二(75歳 2015年没)
IAI局長兼日本UCAT全部長。佐山・御言とも付き合いのある丸眼鏡の老人。かつては概念戦争において殲滅戦も実行した厳格で冷酷な人物だったらしいが、現在はその片鱗も見せない。シングルファーザー。
大城・至(おおしろ・いたる)…… 中井 和哉(38歳)
全竜交渉部隊監督。大城・一夫の息子。Sfを侍女として帯同する。痩せぎすな初老の男。旧日本UCATから残る唯一の人物で、多くの秘密を知っている。1995年の関西大震災で足に後遺症を負い、鉄製の杖を使う。同時にマイナス概念による不治の病も患っている。不平屋。
Sf(エスエフ)…… 鹿野 優以(21歳)
大城・至専属の侍女。ドイツUCAT製の自動人形。名前はドイツ語の「在るべき婦人(ザインフラウ)」の略。感情を持たない。重力制御で分解した重火器類をスカートの中に隠しており、必要時には即座に組み上げて用いる。
リール=大樹(リール・おおき)
尊秋多学院の英語教師で生徒会顧問、佐山・御言や新庄・運の在籍するクラスの担任。極度の天然ボケで、遅刻や物忘れは日常茶飯事、日本語はおろか英語も読めない問題教師。だがそれが反面教師となってか、担当するクラスの生徒は自主性に富んでいる。
シビュレ
全竜交渉部隊の整備・通信管理担当。長い金髪の少女。
ロベルト=ボルドマン
6th-G人代表。全竜交渉の通常課連携役を担う。
元は帰化したアメリカ軍少佐だったが、母親から6th-G指導者の血筋であることを知らされ、6th-G残党に合流した。その後10th-Gと協力して UCATを襲撃するが、出雲・覚や風見・千里との戦いを経て UCATに恭順した。禿頭を何かとネタにされる。
出雲社護国課
衣笠・天恭(きぬがさ・てんきょう)
神州対応論を提唱した護国課の設立者。八大竜王の長。一切の過去が謎に包まれた隻腕の老人。第2次世界大戦を予言して出雲航空技研や大日本帝国政府に神州対応論を認めさせ、それを通して他ギアの存在を知らしめた。1878年生まれ。故人。
佐山・薫(さやま・かおる)
総会屋の大物。4th-Gと8th-G担当の八大竜王。本作の始まる少し前に死去している(享年88歳)。佐山・浅犠の養父で、祖父として佐山・御言を育てた人物。御言に勝るとも劣らない変人であり、珍奇な技術も含め、多岐に渡る英才教育を施した。
ジークフリート=ゾーンブルク …… 銀河 万丈(57歳)
尊秋多学院にある衣笠書庫の司書。元護国課顧問兼1st-G担当の八大竜王。禿頭で長身の老いたドイツ人。かつては「魔法使い」と謳われた術式使い。実年齢は90歳だが長命化手術を受けている。ブレンヒルト=シルトとは1st-G滅亡に関して遺恨がある。
趙・晴(ちょう・せい)
日本UCAT医療班長。7th-G担当の八大竜王で技術の後継者。少女の外見は延命技術と不老技術によるものであり、実際はかなりの高齢者。
1st-G
ブレンヒルト=シルト …… 豊嶋 真千子(33歳)
尊秋多学院3年生。美術部部長。1st-Gの魔女。「鎮魂の曲刃」を使う。現存唯一の1st-G長寿族の少女。黒猫と小鳥を連れている。市街派に属し、ジークフリート=ゾーンブルクの監視役として尊秋多学院に入学していた。幼年期はナインという名前でグートルーネやレギン、ジークフリートと共に暮らしていた。
黒猫 …… 野田 順子(34歳)
ブレンヒルト=シルトの使い魔。Low-G生まれの猫。一言多いところがあり、よくブレンヒルトに折檻される。思考が硬直しがちなブレンヒルトを導くことが多い。
ハーゲン …… 阪 脩(75歳)
市街派の長。ファブニール改と合一している。1st-G王の弟でレギンの兄。元1st-G冥界管理長で、「鎮魂の曲刃」の本来の持主だった。Low-Gで市街派を維持するためにファブニール改と合一した。
機体とのズレで意識の寿命が近付いている。ブレンヒルト=シルトの過去を知る数少ない人物。長く非戦路線を取っていたが、日本UCATの聖剣グラム運搬を機として全軍を率いて奪取に向かった。
ファーゾルト
1st-Gの半竜で居留地の長。語り部。1st-Gの全竜交渉における事前交渉の相手となる。恭順の証として両翼を自ら断っている。ファーフナーや一部の生き残りには「保身を望んだ軟弱者」とされるが、本人は1st-Gの誇りを見失っていない。長命で幼い頃の大城・一夫や新庄・運を知っている。
ファーフナー …… 竹本 英史(32歳)
市街派の主力で若手のリーダー格。ファーゾルトの息子にあたる半竜。闇渡りの半竜であり、意思の届く範囲ならば影の中を移動することができる。父に反して苛烈な性格であり、1st-G種族である事を誇りつつも帰化2世であるために故郷を知らず、そのことに憤り市街派に属した。
グートルーネ …… 小山 裕香(47歳)
ヴォータン王国の第一王女。故人。概念戦争で傷心した1st-G王に遠ざけられ、レギンの元で暮らしていた。後にブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクを保護し、一時期は4人で家族同様に生活していた。暴走したファブニールによって致命傷を負い、残った民を Low-Gへ避難させて死去。
レギン
賢者と称えられる人物。1st-G王の弟。故人。グートルーネ王女やブレンヒルト=シルト、ジークフリート=ゾーンブルクの身元を引き受けた。かつては侵略者であるジークフリートを疑ったが、後に家族同然の関係を築く。しかし裏切ったジークフリートから概念核を護ろうとファブニールに搭乗、交戦するが殺されて概念核を奪われたとされている。
9th-G
ハジ
「軍」の長。元9th-G大将軍。命刻と詩乃の養父。隻眼で巨躯の老人。
戸田・命刻(とだ・みこく)
「軍」主力。黒髪を後ろで結った長身の少女。黒いサマーコートに茶色のスラックスといった姿。
田宮・詩乃(たみや・しの)
「軍」に所属する少女。命刻の義理の妹。ロングヘアの少女。黒いストールに黒いロングスカートといった姿。
Low-G
田宮・遼子(たみや・りょうこ)
田宮家家長。警備会社の経営者。かなりの天然ボケだが、締めるときはそれなりに締める和服の女性。母に無理心中に迫られたと傷心した若い頃の佐山・御言を抱いたことがある。
田宮・孝司(たみや・こうじ)
田宮・遼子の弟。実質的な田宮家のまとめ役。遼子ともども、佐山・御言を「若」と呼ぶ。非常にしっかりした性格で、姉へのツッコミと尻拭いが主な仕事。遼子の破天荒な振る舞いに毎回引っ掻き回される苦労人。包丁さばきが優れている。
『終わりのクロニクル(おわりのクロニクル)』は、川上稔のライトノベル。イラストはさとやす。電撃文庫(メディアワークス)より2003年6月~2005年12月に刊行された。単行本全14巻。
川上稔による架空の世界観「都市世界」における「AHEAD」時代を取り扱った作品。総じてページ数が多く、最終巻は1000ページを超えて当時の電撃文庫における最厚記録を樹立した。
あらすじ
第2次世界大戦(1939~45年)という歴史の裏側にもうひとつ、決して表に出ることのない戦争があった。平行して存在し干渉しあう性質を歯車に例えて「ギア(G)」と呼ばれる11の世界が生き残りをかけて戦ったその戦争は、全ての物事の究極の理由「概念」を奪い合い滅ぼすことから「概念戦争」と呼ばれた。そして概念戦争に勝利したこの世界「Low-G」に全てが隠蔽されてから60年後、ある問題が発生した。
Low-Gのみが所持する「マイナス概念」の活性化。それにより、今や唯一のギアとなった Low-Gは再び滅びの道を歩み始めた。滅びを回避するためには、かつて滅ぼした10のギアの概念の力が必要だった。概念戦争を知り、10のギアを滅ぼした組織「UCAT」は、各異世界の生き残り勢力との交渉のための専門部隊である全竜交渉部隊「チームレヴァイアサン」を編成する。
そこで、ひとりの少年が祖父からその代表たる役目と権利を譲られ、「自分が本気になるために」交渉役を引き受ける。自ら悪役を名乗る少年、その名を佐山・御言。全ての遺恨を収め世界を救うための交渉、全竜交渉(レヴァイアサンロード)が、彼の言葉「佐山の姓は悪役を任ずる」とともに始まる。
ギアと概念戦争
ギア(G)とは、Low-Gと10の異世界の総称。10の異世界は独自の物理法則「概念」とそれに由来する文化・技術を持ち、一定周期で Low-Gに接近することで Low-Gの文化などに影響を与えた。 各ギアとの接点は地球上の特定の地域に多く、そのため各ギアは Low-Gの世界各地における神話の原型であるとされている。 また、地脈の流れから見た世界と日本列島が相似で互いに影響を与えうるとする説「神州世界対応論」により、日本に各ギアへの接点が作られることになる。
後に Low-Gの西暦1999年12月25日に全ギアの周期が重なり、その時最も多くの概念を持つギア以外の全ギアが滅びることが判明する。それによって各ギアが概念核の略奪のために他ギアに侵攻する戦争、「概念戦争」が勃発した。
1st-G(ファースト・ギア)
主要概念 …… 文字が力を持つ概念
対応神話 …… ニーベルンゲンの災い(西暦5~6世紀に Low-Gに伝来?)
対応地域 …… ドイツ / 日本の近畿地方
テーブル型の大地をドーム状の空が覆う内向型構造で、星はドーム内面に張り付き、太陽は地下道を通って周回する。昼夜は太陽の出没で区別し、月は存在しない。大気には1st-Gにとっての文字の役割を担う精霊が存在し、1st-G住人は説得によって自然を操作できた。生物は文字という力が進化と突然変異を繰り返した末に誕生した。そのため1st-G生物は体内に遺伝子として文字があり、多様な能力を持つ反面で1st-G外での生存能力を著しく欠く。
文化はヴォータンという王国が周辺の集落や街を統治する体制をとっていた。土地は狭かったが文字と対話によって事象を操り、不便は少なかった。しかし文字を書くとそれが現実化してしまう危険があったために、筆記系の文化は王族や専門職にのみ与えられ発達しなかった。
1st-Gの概念戦争
元来戦闘力が低い1st-Gは、種族の戦闘力強化や5th-Gの機竜を解析して自前の機竜を開発して抗った。しかし戦争中に王妃を失った1st-G王は世界の「門」を封鎖して概念戦争から離脱し、衝突時間ギリギリで生き残った他ギアに亡命する処置を定めた。しかし、第一王女グートルーネや王弟レギンの庇護を受けていたジークフリート=ゾーンブルクがグラムを強奪、ハーゲンを除く王族とファブニールを殺して概念核の半分を持ち去った。それによって衝突時間以前に1st-Gは滅びたとされている。
Low-G(ロウ・ギア)
主要概念 …… 矛盾許容概念
対応神話 …… 聖書
対応地域 …… 現在の世界全体
本シリーズの舞台となる世界。マイナス概念を有するためにいかなる長所も持たない「最低の世界」。『聖書』の原型とされ、各ギアを神話や伝説として現在に伝えている。
各ギアの負荷を抱え込んだ「吹き溜まり」で最弱と蔑まれたが、概念戦争に勝利して現存唯一のギアとなった。各ギアの亡命者が多数存在しているが、その全てが UCATに恭順しているわけではない。現在はマイナス概念の活性化による自滅の危機に瀕し、全竜交渉によるプラス概念の全解放で危機を脱しようとしている。
Low-Gの概念戦争
元来、他ギアの概念すら知らなかった Low-Gは衣笠・天恭の「神州世界対応論」により地脈という形で他ギアと接触し、そして機竜と武神の残骸を見たことで概念戦争の存在に気付いた。大日本帝国の出雲社護国課は第2次世界大戦終結後に日本UCATとなり、8人の異G調査員が集めた技術、恭順した他ギアの勢力や亡命者らと協力して戦力を整え、調査員たちが概念核を奪うことによって全ての他ギアを滅ぼした。その戦争の影響によって日本では関西大震災が発生した。
作中の専門用語
概念
あらゆる事象の原因にある「それはそういうものだから」と言わざるを得ない、物理法則のようなもの。
自弦振動
概念の力を示す可変一定周期の震動波。大きく分けて「母体自弦振動」と「子体自弦振動」の2つが存在し、あらゆる存在はこの2種を有している。
母体自弦振動
保有している存在がどのギアに所属しているのかを示す自弦振動。人名における「姓」のようなもの。
子体自弦振動
保有している存在の個性を示す自弦振動。人名における「名」のようなもの。
存在率 / 崩壊率
自弦振動は物体の存在を支えるものであり、一定量以上破壊されると物体は存在できなくなりなんらかの形で崩壊する。その破壊の程度を表した用語が存在率と崩壊率であり、5割以上の存在率が失われると崩壊が起きる。
概念空間は周囲の物体の存在率の一部を取り込んでいるため、概念空間内の物体が破壊されると物体の存在率が欠けていき、何度も繰り返すと本体も崩壊してしまう。このルールはギア自体にも適用され、半分以上の概念核が奪取・破壊されるとそのギアは崩壊することとなる。
概念核(がいねんかく)
大規模な概念の塊。基本的にギアを形成する概念の半分以上を占める塊であるため、ギアそのものともいえる重要な存在。Low-Gで用いられる概念は、基本的に他の各ギアの概念核から抽出された劣化複製である。概念戦争を経て、各ギアの概念核は竜または武器(概念核兵器)に封じられている。
マイナス概念
Low-Gの中核を成す概念。プラス概念の負荷として発生し、一切の特性を持たず万物を害する力である。Low-Gには他ギアのマイナス概念も落とし込まれており、概念核の対となるように10個存在している。2005年12月25日に活性化し、Low-Gを内側から滅ぼすことが予測されている。
概念空間(がいねんくうかん)
概念を空間に付加して生まれる擬似的な異世界。空間の母体自弦振動の一部を書き換えることで、存在の一部を異世界側へと分化させて作成される空間であり、残りの母体自弦振動によって現実ともつながっているため、作成するのも戻すのも比較的簡単である。
物体も存在の一部だけを送り込むことはできるが、その際に劣化してしまうため動くたびに徐々に崩壊していってしまう。そのため人間など中で活動する物体は自弦振動を100% 送りこまねばならない。
概念条文(がいねんじょうぶん)
概念空間に入った生物の脳裏に聞こえる概念の効果内容。声は聞き手本人と同じ声として聞こえる。聞こえるものは概念空間内で特に強い概念のものであり、条文として聞こえないだけで実際は他にも微細な概念が大量に存在している。
概念兵器
概念を内蔵する武器の総称。主に「機殻(カウル)」の名を冠するタイプとそうでないタイプがあり、概念核を収めたものは「概念核兵器」と称される場合が多い。「概念を内封した戦闘用機械」と定義すれば、機竜・武神・戦闘用自動人形も概念兵器に含まれる。
機殻武器
戦闘目的で運用するために武器の形状を取るタイプ。機殻は内蔵した概念に対する耐久力であると同時に、機能の方向性を定めるために付けられている。作中では「機殻剣(カウリングソード)」、「機殻杖(カウリングストック)」、「機殻槍(カウリングランス)」、「機殻鉄鎚(カウリングハンマー)」、「機殻弓(カウリングアロー)」、「機殻銃(読み不明)」の6種類の機殻武器が登場する。
機殻剣(カウリングソード)
剣の形態をとる概念兵器の総称。登場する中では最も該当する概念兵器が多い。
V-Sw(ヴィズィ)
自意識を持つ6th-Gの概念核兵器で、出雲・覚の専用武装。
6th-Gを維持するために造られた6th-G製機殻剣「ヴァジュラ」に、6th-G概念核「ヴリトラ」を納めたもので、普段は身の丈程もある白い大剣の形態をとる。性格はマイペースでのんびり屋。
聖剣グラム
1st-Gの概念核兵器。
長大な剣であり、また自意識を持つ。概念戦争時代にファブニールの原動力に使われていた概念核の半分を収め、全竜交渉ではファブニール改から残り半分を回収した。性格は人格者。
機殻槍(カウリングランス)
槍の形態をとる概念兵器の総称。登場する物は少ないがいずれも強大な性能を秘めている。
G-Sp2(ガスプツー)
通称「神槍」。自意識を持つ10th-G概念核兵器。風見・千里の専用武装。
普段は身の丈程もある長大な白い槍の形態をとる。性格は従順なペット気質。元々は10th-Gの内乱鎮圧用機殻鉄槌「雷神鉄槌」が、10th-G概念核の保存器兼武器として機殻槍「G-Sp(ガスプ)」に改造さたものだったが、全竜交渉で千里に合わせて改修を受けてG-Sp2となった。
機殻杖(カウリングストック)
杖の形態をした概念兵器の総称。その機能は杖というよりも火器のバズーカ砲に近い。
Ex-St(エグジスト)
Low-G製概念兵器。新庄・運の専用武装。
砲塔の交換によって砲撃の種類を変更し、あらゆる概念下での運用が可能。運の要望により、出力は所有者の意思で調整される。トリガーがボタン型であるため、使い方次第で高速連射が可能であり、ある程度の追尾機能や余剰出力による溜め打ち機能も持つ。
機殻銃
銃の形態をとる概念兵器の総称。特筆するべき高性能の物はないが、平均的な武装として広く使われている。1st-Gの王城派も武装しており、その機構は1st-G概念に基づいたもので、装填した書物に込められた熱意を弾丸として放つ。
ゲオルギウス
詳細不明のグローブ型概念兵器。佐山家・新庄家の専用武装。
プラスのメダルを嵌める左手用と、マイナスのメダルを嵌める右手用の一対で、メダルは脱着が可能。右手用が紛失し、全竜交渉で大城・至からもうひとつを探すように佐山・御言へ左手用のみが託された。概念の増幅や効果を逆転させる機能を持つ。
X-Wi(エクシヴィ)
2nd-G概念対応の飛行用概念兵器。風見・千里が使用。バックパック型。光に力を与える概念を内蔵し、自力で概念空間を展開出来る稀少な機体。
鎮魂の曲刃(レークイヴェム・ゼンゼ)
1st-G冥府管理長の専用概念兵器。大鎌型。冥府と現世の境を切り開いて死者と対話する機能を持ち、時には戦闘力として召喚することもできる。元々はハーゲンが持っていたが、ハーゲンがファブニール改と合一したためブレンヒルト=シルトに預けられた。
賢石
概念を封印した結晶体の総称。所有者の母体自弦振動を変えることなく、概念空間を作らずとも概念を使用することができる。概念兵器の燃料にも用いられる。
機竜
概念戦争時代、単体では最強の戦闘力を誇った竜型の機械。強大な戦闘能力を有しているが、合一搭乗すると搭乗者は二度と分離できない欠陥があり、Low-Gの機竜は通常の搭乗手段を採用している。1st-G、5th-G、Low-Gなどのギアで開発されているが、本家は5th-Gでありその他の機竜は5th-Gの技術の模倣か複製である。
ファブニール / ファブニール改
5th-G機竜の残骸を研究して開発された1st-G製の機竜で、それぞれ出力炉に1st-G概念核の半分を搭載する。陸上戦闘用であり、射撃や高速機動ではなく格闘による戦闘を行う。ファブニールは出力炉が1基しかなく、概念戦争時に出力炉を破壊されて機動停止した。ファブニール改は複製概念を積んだ2つ目の出力炉を搭載し、どちらかが壊れだけでは停止しない構造になっている。
門
自分の母体自弦振動を変化させ、異なる母体自弦振動のギアにも移動できるようにする機能を有した空間の穴で、異なるギアや概念空間への入り口。概念戦争の時代は巨大な装置が必要であったが、現代では人間ほどの大きさなら腕時計型の小型装置で開けるようになっている。
概念符
身体強化系の概念が封じられた符で、札型の賢石ともいうべき物。1st-Gの文字に寄る能力付加などで造られている。
全竜交渉(レヴァイアサン・ロード)
来たる2005年12月25日のマイナス概念活性化に向け、異ギアの生き残り勢力から概念核の使用権を得るために行われる交渉。佐山・薫によって提案され、その交渉役には彼の孫である佐山・御言が推薦されている。
全竜交渉部隊(チーム・レヴァイアサン)
全竜交渉を遂行するために設立された特設部隊。選りすぐりの優秀な課員のみが所属される。監督には大城・至、交渉役は佐山・御言が務める。
UCAT(ユーシーエーティー)
正式名称は「Universal Counter Attack Team」。世界各地に出現する未確認生物(実際は他ギアの生物である)に対応するために設立された世界規模の機密組織。表面上は別の組織を名乗っており、日本では総合企業「IAI」がそれに該当するが、それ以外では各国軍の名を使っている。自国に対応するギアがある UCATは発言力が強いらしく、中でもドイツUCAT、アメリカUCAT、中国UCAT、日本UCATの発言力が特に強い。
日本UCAT
かつての出雲社護国課を前身とする、概念戦争を終結に導いた UCAT。装甲服のカラーリングは白と黒。日本各地に基地が確認されている。所属する者たちは方向性こそ違うものの、全てハイレベルな変態である。日本は神州世界対応論によって最も他ギアの概念に触れたため、概念戦争に深く関わった。
ドイツUCAT
1st-G概念を元にした「術式」の技術に優れた UCAT。魔女が多く所属しているため、装甲服は魔女の服を模している。自動人形の開発にも長けており、Sfを開発したのもドイツUCATである。概念戦争時代はジークフリート=ゾーンブルクが護国課顧問を勤めていた。
尊秋多学院(たかあきたがくいん)
東京都秋川市(現在のあきる野市)にある私立高等学校。佐山・御言を始めとする全竜交渉部隊メンバーが通い、他にもブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクなど日本UCAT関係者も多く所属している。過去には佐山の両親や新庄の母親も在籍していた。学生寮を備え、マラソン用トラックもあるなど設備が整っている。JR五日市線秋川駅に近い。
衣笠書庫(きぬがさしょこ)
尊秋多学院内にある図書室。創立者は衣笠・天恭で、現在はジークフリート=ゾーンブルクが司書を勤めている。非常に大規模で、尊秋多学院2年次普通校舎1階の8教室分と更にその廊下、地階にも広がっている。
IAI(アイエーアイ)
日本UCATが表向きに掲げている総合企業。出雲社の出雲航空技研が前身となっており、元々は航空技術を専門とする企業だった。だが神州世界対応論遂行のために設立された護国課が概念戦争に関わったために他Gの技術を触れ、密かにそれを解析して製品に用いて数々の成果を上げ、世界有数の大企業にのし上がった。
手掛ける事業は幅広く、航空旅客事業から自動車・家電製品等の製造、清涼飲料水販売まで取り扱っている。現社長は出雲・烈。息子である覚が次期社長候補である。
護国課(ごこくか)
第2次世界大戦直後、衣笠・天恭が提唱した神州世界対応論を遂行するために出雲社(後の IAI)に設立された部署。衣笠・天恭を中心にして佐山・薫、新庄・要、出雲・全、大城・宏昌、飛場・竜徹が所属し、ドイツから来たジークフリート=ゾーンブルクが顧問を勤めた。神州世界対応論によって世界中の地脈に干渉したことで概念に対する知識と技術を早い段階から取得していた。
後に UCATに吸収されるという名目で協力し、日本UCATに発展したが、衣笠・天恭と新庄・要は日本UCATには所属しなかった。
神州世界対応論(しんしゅうせかいたいおうろん)
衣笠・天恭が提唱した理論。その内容は「日本は世界の地形と対応する、世界全体の地脈の中心である。各国の地脈をそれと対応した日本の地脈と接続、そして日本側の地脈を活性化させれば接続先の国の地脈の活性化につながり、世界全体の情勢を左右出来る。」とするものである。実際にその接続が成功したために、日本は世界全体の情勢管理を担い、他ギアの災厄を一身に背負うことで第2次世界大戦後の占領を免れたとされている。
日本列島を世界大陸に当てはめており、この論によると東北沿岸部は中国大陸からロシアの東側沿岸、東京湾は黄海、伊豆半島はタイ、静岡はインド、伊勢湾はペルシャ湾、紀伊半島はアラビア半島。琵琶湖はカスピ海、大阪湾は黒海、児島半島はギリシャ、呉周辺がイタリア、対馬はイギリス、島根半島はノルウェー、四国がオーストラリア大陸、九州はアフリカ大陸、佐渡が北極の島々となる。北海道については、渡島半島がアラスカ、中部が北米、根室・北方領土が南米となる。この理論における日本は伊豆七島に、富士山はエベレストに相当する。
この理論は他ギアの Low-Gにおける勢力図にも関わっており、他ギアは神州世界対応論で自らの世界に対応した国か地域に門を開いて亡命し、居留地や UCATに従わない残党の拠点の位置もこれに寄る。
八大竜王(はちだいりゅうおう)
概念戦争において10のギアを滅ぼした8名の総称で、護国課の中心人物5名と、後の日本UCAT発足時に他国の UCATから編入して来た3名のことを言う。元々は他ギアの調査員だったが、紆余曲折の果てに担当したギアの崩壊に携わることとなる。佐山・薫と出雲・全がそれぞれ2つのギアを担当したため、ギアの総数と同数ではない。
佐山・薫(護国課特殊技術部長、中尉 4th-Gと8th-Gを担当)1917年生まれ、本作開始前に死亡
出雲・全(護国課大代表、中尉 6th-Gと10th-Gを担当)1915年生まれ、本作開始前に死亡
大城・宏昌(護国課技術部長、中尉 2nd-Gを担当)1906年生まれ、概念戦争時代に死亡
飛場・竜徹(護国課警備部長、曹長 3rd-Gを担当)1919年生まれ、現在も生存
ジークフリート=ゾーンブルク(護国課顧問 1st-Gを担当)1915年生まれ、現在も生存
趙・晴(中国UCAT 7th-Gを担当)生存
リチャード=サンダーソン(アメリカUCAT 5th-Gを担当)未登場
アブラム=メサム(中東UCAT 9th-Gを担当)未登場
関西大震災(かんさいだいしんさい)
1995年12月25日に大阪府で突如発生した大規模地震。その禍根は10年が経過した本作においても色濃く残っている。主要人物の親の多くは救助隊として向かい、そこで死亡した。
Tes.(テス / テスタメント)
各国UCAT共通の言葉で、返事や同意の意味で用いられる。聖書における「契約」を意味する。
バベル
近畿地方のどこかに聳えるとされる巨大な塔型施設。内部にはマイナス概念が収められており、関西大震災の震源地となったとされる。侵入者を拒むが、衣笠・天恭らは内部に入り、中から概念関係の技術を持ち出したとされている。
半竜(はんりゅう)
竜の容姿と人間の形態を併せ持った1st-Gの異種族の一種。1st-G概念を宿した概念空間の中でしか生きることができない。非常に長命で記憶力もあり、文字関係の文化が発展しなかった1st-Gでは語り部の役に就くことが多かった。全身が鱗で覆われた頑丈な体とそれを支える強靭な身体能力を有している。「闇渡り」の能力を持つ半竜もいる。
冥界
1st-Gにおける死後の世界。空想上のものではなく、実際に肉体を失った魂が移送される概念空間である。冥界管理長という役職が存在し、長に与えられる概念兵器「鎮魂の曲刃」は冥界を一時的に開いて冥界の死者と対話することができる。
和平派
概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファーゾルトを長として UCATに恭順した集団で、普段は居住区内で自給自足の生活を送っている。1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、王城側の門から脱出した者たちで構成されている。基本的に争いを好まない性格だが、攻撃的な者たちは王城派に分裂し、ファーフナーが市街派に所属している。
市街派
概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファブニール改ことハーゲンを長に据え、若手リーダーのファーフナーと王族の庇護者ブレンヒルトを中心とする過激派で、概念核を保有するがゆえに強い影響力を持つ。「軍」の協力によって資材や拠点を確保した。派名の由来は1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、市街側の門から脱出したことに由来する。
王城派
概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。和平派から概念空間技術を持って分離した武闘派。戦闘意欲と意思は強いが、これといった特徴を持たず勢力は弱い。王城側の門から脱出した和平派から分離したが、しかし和平を望まないためこれを名乗る。
軍(ぐん)
9th-Gの残党を中心とし、各ギアの UCATに反発する者たちによって構成された、どのギアにも属さない謎の集団。元9th-Gの大将軍ハジをリーダーとし、戸田・命刻、田宮・詩乃らが主力となっている。日本UCATのみを敵と定め、その最終目的はそれを壊滅させることとしている。
主な登場キャラクター
※担当声優は、文化放送『電撃大賞』で2005年11月に放送されたラジオドラマ版(第1巻の内容のみ 全4話)でのキャスティング
佐山・御言(さやま・みこと)…… 平川 大輔(32歳)
全竜交渉部隊交渉役兼リーダー格。尊秋多学院生徒会副会長。2年生。貘を連れている。佐山・薫の義理の孫で、「悪役」になる事を望む少年。現在は天涯孤独で、田宮家の世話になっている。
母・愉命と共に死に瀕した過去から、両親に関わることを考えると狭心症を起こす。薫と飛場・竜徹の教育により文武両道だが、中学時代の空手全国大会決勝で左手を砕き、幻痛を起こす後遺症を持っている。
新庄・運(しんじょう・さだめ)…… 釘宮 理恵(26歳)
全竜交渉部隊メンバーで、前衛援護担当。幼少期から記憶喪失で UCATで育てられた。双子の弟と名乗る「切(せつ)」が尊秋多学院2年生として編入し、御言の男子寮のルームメイトとなるが……?
奥多摩の山奥で育てられたためか、常識感覚が現代より10~20年ほど遅れている。
出雲・覚(いずも・かく)…… 谷山 紀章(30歳)
全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会長。現在は留年して3年生。Low-Gと10th-G神族のハーフを父に、10th-G神族を母に持つ青年。幼少時は10th-G居留地で暮らしていた。両親譲りの非常に頑強な肉体を持ち、そのため風見の腕力にも耐えることができる。父親のことを好いておらず、言及されることを嫌う。
風見・千里(かざみ・ちさと)…… 前田 愛(30歳)
全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会計。3年生。Low-G出身の一般人だが、6th-Gと10th-Gの全竜交渉に居合わせたことで UCATに所属する。常識を超える腕力を持つ。父親は TVディレクター、母親はマイナーながら根強い人気を持つ歌手で、自身も学校でバンドのボーカルを勤める。元なぎなた部所属。
日本UCAT
全竜交渉部隊
大城・一夫(おおしろ・かずお)…… 丸山 詠二(75歳 2015年没)
IAI局長兼日本UCAT全部長。佐山・御言とも付き合いのある丸眼鏡の老人。かつては概念戦争において殲滅戦も実行した厳格で冷酷な人物だったらしいが、現在はその片鱗も見せない。シングルファーザー。
大城・至(おおしろ・いたる)…… 中井 和哉(38歳)
全竜交渉部隊監督。大城・一夫の息子。Sfを侍女として帯同する。痩せぎすな初老の男。旧日本UCATから残る唯一の人物で、多くの秘密を知っている。1995年の関西大震災で足に後遺症を負い、鉄製の杖を使う。同時にマイナス概念による不治の病も患っている。不平屋。
Sf(エスエフ)…… 鹿野 優以(21歳)
大城・至専属の侍女。ドイツUCAT製の自動人形。名前はドイツ語の「在るべき婦人(ザインフラウ)」の略。感情を持たない。重力制御で分解した重火器類をスカートの中に隠しており、必要時には即座に組み上げて用いる。
リール=大樹(リール・おおき)
尊秋多学院の英語教師で生徒会顧問、佐山・御言や新庄・運の在籍するクラスの担任。極度の天然ボケで、遅刻や物忘れは日常茶飯事、日本語はおろか英語も読めない問題教師。だがそれが反面教師となってか、担当するクラスの生徒は自主性に富んでいる。
シビュレ
全竜交渉部隊の整備・通信管理担当。長い金髪の少女。
ロベルト=ボルドマン
6th-G人代表。全竜交渉の通常課連携役を担う。
元は帰化したアメリカ軍少佐だったが、母親から6th-G指導者の血筋であることを知らされ、6th-G残党に合流した。その後10th-Gと協力して UCATを襲撃するが、出雲・覚や風見・千里との戦いを経て UCATに恭順した。禿頭を何かとネタにされる。
出雲社護国課
衣笠・天恭(きぬがさ・てんきょう)
神州対応論を提唱した護国課の設立者。八大竜王の長。一切の過去が謎に包まれた隻腕の老人。第2次世界大戦を予言して出雲航空技研や大日本帝国政府に神州対応論を認めさせ、それを通して他ギアの存在を知らしめた。1878年生まれ。故人。
佐山・薫(さやま・かおる)
総会屋の大物。4th-Gと8th-G担当の八大竜王。本作の始まる少し前に死去している(享年88歳)。佐山・浅犠の養父で、祖父として佐山・御言を育てた人物。御言に勝るとも劣らない変人であり、珍奇な技術も含め、多岐に渡る英才教育を施した。
ジークフリート=ゾーンブルク …… 銀河 万丈(57歳)
尊秋多学院にある衣笠書庫の司書。元護国課顧問兼1st-G担当の八大竜王。禿頭で長身の老いたドイツ人。かつては「魔法使い」と謳われた術式使い。実年齢は90歳だが長命化手術を受けている。ブレンヒルト=シルトとは1st-G滅亡に関して遺恨がある。
趙・晴(ちょう・せい)
日本UCAT医療班長。7th-G担当の八大竜王で技術の後継者。少女の外見は延命技術と不老技術によるものであり、実際はかなりの高齢者。
1st-G
ブレンヒルト=シルト …… 豊嶋 真千子(33歳)
尊秋多学院3年生。美術部部長。1st-Gの魔女。「鎮魂の曲刃」を使う。現存唯一の1st-G長寿族の少女。黒猫と小鳥を連れている。市街派に属し、ジークフリート=ゾーンブルクの監視役として尊秋多学院に入学していた。幼年期はナインという名前でグートルーネやレギン、ジークフリートと共に暮らしていた。
黒猫 …… 野田 順子(34歳)
ブレンヒルト=シルトの使い魔。Low-G生まれの猫。一言多いところがあり、よくブレンヒルトに折檻される。思考が硬直しがちなブレンヒルトを導くことが多い。
ハーゲン …… 阪 脩(75歳)
市街派の長。ファブニール改と合一している。1st-G王の弟でレギンの兄。元1st-G冥界管理長で、「鎮魂の曲刃」の本来の持主だった。Low-Gで市街派を維持するためにファブニール改と合一した。
機体とのズレで意識の寿命が近付いている。ブレンヒルト=シルトの過去を知る数少ない人物。長く非戦路線を取っていたが、日本UCATの聖剣グラム運搬を機として全軍を率いて奪取に向かった。
ファーゾルト
1st-Gの半竜で居留地の長。語り部。1st-Gの全竜交渉における事前交渉の相手となる。恭順の証として両翼を自ら断っている。ファーフナーや一部の生き残りには「保身を望んだ軟弱者」とされるが、本人は1st-Gの誇りを見失っていない。長命で幼い頃の大城・一夫や新庄・運を知っている。
ファーフナー …… 竹本 英史(32歳)
市街派の主力で若手のリーダー格。ファーゾルトの息子にあたる半竜。闇渡りの半竜であり、意思の届く範囲ならば影の中を移動することができる。父に反して苛烈な性格であり、1st-G種族である事を誇りつつも帰化2世であるために故郷を知らず、そのことに憤り市街派に属した。
グートルーネ …… 小山 裕香(47歳)
ヴォータン王国の第一王女。故人。概念戦争で傷心した1st-G王に遠ざけられ、レギンの元で暮らしていた。後にブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクを保護し、一時期は4人で家族同様に生活していた。暴走したファブニールによって致命傷を負い、残った民を Low-Gへ避難させて死去。
レギン
賢者と称えられる人物。1st-G王の弟。故人。グートルーネ王女やブレンヒルト=シルト、ジークフリート=ゾーンブルクの身元を引き受けた。かつては侵略者であるジークフリートを疑ったが、後に家族同然の関係を築く。しかし裏切ったジークフリートから概念核を護ろうとファブニールに搭乗、交戦するが殺されて概念核を奪われたとされている。
9th-G
ハジ
「軍」の長。元9th-G大将軍。命刻と詩乃の養父。隻眼で巨躯の老人。
戸田・命刻(とだ・みこく)
「軍」主力。黒髪を後ろで結った長身の少女。黒いサマーコートに茶色のスラックスといった姿。
田宮・詩乃(たみや・しの)
「軍」に所属する少女。命刻の義理の妹。ロングヘアの少女。黒いストールに黒いロングスカートといった姿。
Low-G
田宮・遼子(たみや・りょうこ)
田宮家家長。警備会社の経営者。かなりの天然ボケだが、締めるときはそれなりに締める和服の女性。母に無理心中に迫られたと傷心した若い頃の佐山・御言を抱いたことがある。
田宮・孝司(たみや・こうじ)
田宮・遼子の弟。実質的な田宮家のまとめ役。遼子ともども、佐山・御言を「若」と呼ぶ。非常にしっかりした性格で、姉へのツッコミと尻拭いが主な仕事。遼子の破天荒な振る舞いに毎回引っ掻き回される苦労人。包丁さばきが優れている。
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