ヨシムラ・サイエンス・ラボ

身近な物を材料視点で解説「サイエンスライター」
銅の良さを伝え広める「伝銅師」、金属のお悩みへの相談「メタルソムリエ」

北陸先端大学院大学 伝統工芸MOTコース

2010年09月21日 | 日記
私の生まれ故郷のすぐ近くの石川県能美市に北陸先端大学院大学という大学があります。
その大学で、地域再生プログラムの一環として平成19年度から伝統工芸の世界に革新を巻き起こす人材(伝統工芸イノベータ)の養成を進めており、今年で第4期となります。
具体的には、3つのコース(伝統工芸MOTコース、産地MOT実践塾、商品開発実践プロジェクト)から構成されており、伝統工芸MOTコースからの順で受講できるようになっています。

私は昨年から入講を検討していたのですが、漸く今年の第4期伝統工芸MOTコースへの入講を実現することができました!
第1回目の講義は10月2日に予定されています。
楽しみです。

銅の鍛金技術

2010年09月20日 | 日記
今日、たまたま富山大和に出かけた際に、新潟県燕市の銅の鍛金職人 大橋保隆氏による鍛金(たんきん)の実演と作品の販売が開かれていました。
本日は、この鍛金について紹介します。

鍛金とは、金属を打って伸ばしながら器物をつくる伝統技法の一つで、銅はやわらかい金属のため、鍛金に適した金属材料です。
その一方で、金属は変形させるほど硬くなる性質をもっていますので、鍛金で形造られた器は硬くて丈夫なものに仕上がります。
新潟県燕市は金属製品の製造拠点として古くから知られており、ステンレスの加工で有名です。
有名な燕市のステンレス加工も、元々は銅の鍛金技術が基礎となっているそうです。
いくつか大橋氏の作品を写真に撮らせていただきました。
写真のお皿は、鍛金で形作った後に硫化カリウムという薬品で色づけされています。
深みのある渋い色合いですね。


大橋さん、本日は実演途中にも関わらず取材させて頂き、ありがとうございました。

鐘や銅像の表面にできた緑錆は無害?

2010年09月05日 | 日記
お久しぶりです。
今日は、鐘や銅像の表面にできる錆(さび)について材料科学の観点からサイエンスしてみたいと思います。
屋外に設置されている銅製の鐘や銅像の表面には、緑青(りょくしょう)と言われる銅特有の緑色の錆びで覆われています。思い出してください。アメリカの自由の女神も確か緑色ですよね? 自由の女神の表面もたっぷりと緑青で覆われています。
この表面にできた緑青は錆が進まないようにする効果があり、この緑錆のおかげで、銅製の鐘や銅像は屋外での風雨に曝さわれてもそれ以上にボロボロに錆が進まない様になっています。まさに、“毒をもって毒を制する”ならぬ“錆をもって錆を制する”ですね。
この緑青は銅であれば別に屋外でなくても発生します。
長い間、机の中にしまっておいた10円玉なんかにも緑青は発生します。皆さんは子供の頃に親から、「緑青は猛毒なんだから、触っちゃいけないよ!」って言われた記憶はありませんか? 筆者の私もそのように教えられており、子供の頃に誤って触ってしまい、思いっきり石鹸で手を洗った記憶があります。
しかし、この緑青。実は無害だったのです!

昔の銅製品には、今ほど技術が進化していませんので不純物が多く含まれていました。
また、今ほど金属元素の有害性も明らかになっていませんでしたので、作りやすさなどからヒ素と呼ばれる金属が銅製品に含まれることが多くあった様です。
ヒ素は人体に有害な金属で、和歌山県で起こった毒入りカレー事件もこのヒ素と関係していました。
昔の銅製品には人体に有害なヒ素が含まれていたため、その銅製品の表面に発生した緑青にもヒ素が混じっていました。そのために、「ヒ素が含まれていた銅製品にはヒ素入りの緑青。ヒ素入りの緑青は猛毒。」となったようです。