ヨシムラ・サイエンス・ラボ

身近な物を材料視点で解説「サイエンスライター」
銅の良さを伝え広める「伝銅師」、金属のお悩みへの相談「メタルソムリエ」

ツールエンジニア 2014年6月号 

2014年05月25日 | 執筆
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

大河出版様から出版されている技術雑誌『ツールエンジニア』に、隔月で連載させていただいている「生活を支える金属 いろはにほへと」。
6月号には、第8回 曲げる・叩く・伸ばす(1)と題して、塑性加工に関して執筆させていただきました。

ぜひ、お近くの書店にてご確認ください。

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『箔が付く』と『箔が落ちる』

2014年05月25日 | 伝統工芸
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。
久しぶりに伝統工芸にまつわる話題をひとつ。

金沢の伝統工芸の一つである金沢箔は、金を1万分の4ミリ以下の厚さに広げる高い技術からなり、金箔の国内生産の98%以上を占めるといわれています。
最近は、九州新幹線の内装やパソコンの記録メディアUSBの装飾にも施されているようで、伝統工芸と現代の融合が盛んです。

そんな金箔をはじめとする箔を装飾する技術を「箔押し加工」と呼び、物に高級なイメージを付加する加工方法として以前から知られています。

慣用句で、『箔が付く』、『箔が落ちる』という言葉がありますよね。
前者は「値打ちが高くなる、貫録が付く」、後者は「値打ちが下がったり、貫禄がなくなったりする」をそれぞれ意味しますが、これらの慣用句は、かつて襖(ふすま)や蒔絵(まきえ)に金箔の装飾が施されたことに由来しているそうです。

なるほどね。

所変われば、お箸も変わる!?

2014年05月24日 | 金属 よもやま話
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

今日は、お箸について金属の観点から述べてみたいと思います。

お箸は食べ物を二本の箸で挟んでお口に移動させるために用いる道具であり、日本、中国、韓国などの東アジア地域で用いられる食器の一種です。
このお箸の材質は、国によって異なっていることをご存知でしたか?

日本では、言わずもがな、塗箸や割り箸など木製のお箸が主流ですよね。
一方、中国では象牙やプラスティックが多いそうです。←少し高級な中華料理屋さんに行ったときにでも確かめてくださいね。
また、お隣の韓国ではステンレス製のお箸が使用されおり、特に韓国の飲食店では、国の規制・法律により、ステンレス製のお箸の使用が義務づけられているそうですよ。
韓国で使用れさているステンレス製お箸の材質は、SUS304と呼ばれるステンレスの代表的な鋼種が使用されています。

私は友人にもらったステンレス製のお箸を愛用していますが、ステンレス製お箸は、錆びずに清潔で長持ちする反面、ツルツルしてつまみにくいのが難点ですね。

「所変われば品変わる」ということわざがありますが、お箸も同じですね。

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ゲストハウスウエディングの鐘の音 その3

2014年05月24日 | 金属
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

前回は、音響の観点から優れた金属を選定する指針の一つとして、『弾性率/密度』を紹介し、その値が高い金属ほど良いことを紹介しました。

今回は、音響の観点から優れた金属を選定するもう一つの指針である、「内部摩擦」について紹介します。
鐘やおりんをたたくと、音が響かずに止まってしまうより、「ゴ~ン」とか「リ~ン」と音の余韻が永く伸びた方が好ましいですよね。
この金属をたたいた時に音の余韻が永く伸びるかどうかは、金属の「内部摩擦値」が関係します。
金属の「内部摩擦値」が小さいと、音の振動が吸収されにくくなるため、金属から発せられる音が、より聴衆の耳に達しやすくなるそうです。
この様な「内部摩擦値」の大小は、金属に限らず、楽器に使用される木材でも重視されています。
例えば、マリンバといった打楽器では出した音の余韻が長く伸びた方が好ましいようで、「内部摩擦値」の小さいローズウッドが使用されているようです。

楽器に使用されてる材料に求められる特性は、金属であれ木材であれ一緒なんですね。

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ゲストハウスウエディングの鐘の音 その2

2014年05月18日 | 金属 よもやま話
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。
いつもヨシムラ・サイエンス・ラボのブログをご訪問頂き、誠にありがとうございます!!

前回は、ゲストハウスウエディング場で「カランカラン」と鳴り響く鐘の音を題材に、響銅「さはり」という鐘や楽器に用いられる銅に錫と鉛を添加した金属を紹介しました。

また、日本のお寺の鐘の音は「ゴーンゴーン」、西洋の寺院の鐘の音は「カランカラン」、というように、日本のお寺の鐘の音と西洋の寺院の鐘の音が違ってることについても、以前、ご紹介しましたよね。
『お寺と寺院の鐘 -日本の鐘の音は「ゴーン」、西洋の鐘の音は「カランカラン」-より』
これは、銅に含まれる錫の添加量の違いによるものでした。

さて、本日はその2として、錫の添加量で音が異なる理由についてふれてみたいと思います。

金属は、鐘、風鈴、おりん、金管楽器、フルート、ギターなど、様々な楽器の素材に使用されています。
音響の観点から優れた金属を選定する指針の一つとして、音の伝播速度があります。
その音の伝播速度の指標として『弾性率/密度』があり、この『弾性率/密度』の値が高いほど良いと言われています。

それでは、実際に錫の含有量の異なるリン青銅の弾性率、密度、弾性率/密度、をそれぞれ確認すると次の通りとなります。

Cu-4%Sn(C5111):弾性率(110KN/mm2)/密度(8.86g/cm3)=12.42
Cu-10%Sn(C5240):弾性率(100KN/mm2)/密度(8.78g/cm3)=11.39

『弾性率/密度』の指標のみで判断すると、4%の錫を含む銅合金の方が良いと言えるようです。

日本のお寺の鐘と西洋の寺院の鐘を比べると、日本のお寺の鐘の方が錫量が少ないので、『弾性率/密度』の指標のみからすると、日本のお寺の鐘の方がすぐれていることになりますね。


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ゲストハウスウエディングの鐘の音

2014年05月11日 | 金属 よもやま話
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

初夏を迎えて季節が良いこともあり、最近流行りのゲストハウスウエディング場の近くを通ると、大きく鳴り響く「カランカラン」という鐘の音と共に、鮮やかな色どりの風船が空に舞い上がる風景を見かけることがありますよね。
来月の6月はジューンブライドの時季を迎え、ますます結婚式が多くなりそうです。

ところで、このゲストハウスウエディング場で「カランカラン」と鳴り響く鐘の音。
実は、金属と深い関係があるのです!

これから数回にわたって、金属と音について紹介します。

第1回の今回は、鐘の材質について。
鐘や楽器に用いられる金属は銅に錫と鉛を添加した金属が用いられ、それを響銅「さはり」と言います。
おりんや風鈴などにも使われており、錫の含有量が高いほど澄んだ高音の音色が生まれます。

次回は、音と材質について紹介したいと思います。

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ステンレスのお手入れ法をご紹介しま~す

2014年05月08日 | 金属
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

ステンレスは錆びない金属のため、清潔さや美観が求められる器具に使われます。
例えば、システムキッチンやスプーンなどに使われていますよね。
本日は、ステンレス製品の美観を損なわずに使い続けるためのお手入れについてご紹介します!

具体的には次の通りです。

・使用後は、塩などの塩分はしっかりと除去する
・汚れが付いた場合は、柔らかいスポンジを使用して磨く
・できるだけ乾燥させる

錆びない金属として知られるステンレスも、時と場合によっては錆が発生する場合があります。
愛着のある器具は、上記のお手入れをして、キラリと光る輝きさを保って長年使いたいですよね。

アルミニウムでおもてなし!?

2014年05月07日 | 旅行
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

皆さん、連休中はいかがお過ごしでしたか?
わたしは、昨日、隣県の石川県金沢市に行ってきました。

金沢に行かれたことがある方はご存知でしょうが、JR金沢駅には巨大なトラス構造からなる「もてなしドーム」があります。
トラス構造とは、三角形の構成を基本とし、節点をピンとした 構造のもののことです。
そのトラス構造を構成する部材は、なんとアルミニウム!
その本数は、これまた6,000本!
だそうです。




一見の価値ありです。
皆さんも、石川にお越しの際は、ぜひぜひ。

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身の周りにあった水銀(最終回)

2014年05月06日 | 執筆
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

水銀は体温計や消毒剤などの身近なところで使用されてきましたが、近年は水銀を使用しない代替製品の普及が進んでいます。
6回に渡って、水銀が使用されていた製品について紹介していきます。

最終回(第六回)の今回は、消毒剤として使用していた赤チンについて。

現在、40才なかばの私が子供の頃は、転んで擦りむいたときは、傷口に塗る消毒剤は赤チンでした。
当時は赤チンを塗った子供を良く見かけましたが、いまは見かけませんよね。

この赤チンは有機水銀の一種で、皮膚の表面の殺菌力のある消毒剤でしたが、
1973年にその製造が中止されたそうです。

であれば、赤チンを塗った子供を見かけないはずですよね。

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身の周りにあった水銀(第五回)

2014年05月05日 | 金属
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

水銀は体温計や消毒剤などの身近なところで使用されてきましたが、近年は水銀を使用しない代替製品の普及が進んでいます。
6回に渡って、水銀が使用されていた製品について紹介していきます。

第五回の今回は、虫歯治療に用いるアマルガムについて。

アマルガムとは、銀、銅、錫などの金属粉と水銀を混ぜ合わせた金属で、虫歯で出来た穴に詰める歯科用の金属のことです。
日本では、30年程前からその使用が減少してきており、現在ではほとんど使用されていないようです。
虫歯の穴に詰めるときは柔らかくて、詰め終わると硬くなるため、歯科用金属としては使い勝手が良かったようです。

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身の周りにあった水銀(第四回)

2014年05月04日 | 金属
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

水銀は体温計や消毒剤などの身近なところで使用されてきましたが、近年は水銀を使用しない代替製品の普及が進んでいます。
6回に渡って、水銀が使用されていた製品について紹介していきます。

第四回の今回は、防腐剤として使用してきたチメロサールについて。

チメロサールとは、舌を噛みそうな名前ですが、殺菌作用のある水銀化合物のことで、以前はワクチンに保存剤として添加されていたそうです。
最近ではチメロサールを添加しないワクチンや、チメロサールを減量したワクチンが増え、チメロサールをワクチンの保存剤としてできるだけ添加しない方向にあります。
ちなみに、チメロサールは、人間への毒性が心配されるエチル水銀に分解するそうです。

横浜市衛生研究所サイトより

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身の周りにあった水銀(第三回)

2014年05月03日 | 金属
伝統工芸と身近なものを材料科学でサイエンスするヨシムラ・サイエンス・ラボです。

水銀は体温計や消毒剤などの身近なところで使用されてきましたが、近年は水銀を使用しない代替製品の普及が進んでいます。
6回に渡って、水銀が使用されていた製品について紹介していきます。

第三回の今回は、乾電池。

乾電池の保存性を高めるために、マイナス極材料の亜鉛表面を水銀でカバーしていましたが、1991年(平成3年)にマンガン乾電池で、1992年(平成4年)にはアルカリ乾電池で、それぞれ水銀使用ゼロが実現されたようです。

(一社)電池工業会 なるほど電池Q&Aより


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