スチュアート・タートン『名探偵と海の悪魔』
約3センチの束幅を持つハードカバーの本は、子どもの頃に図書館で借りた冒険モノを思わせる雰囲気。
カバーの絵は青と黒の2色で、帆船が航行する暗い海に怪獣が潜んでいるのが見える。
長体のかかったタイトル文字は微かな揺れがあり、手書き風に加工したのか、または本当に手書きで、古い本らしさを演出している。
帯には「海洋冒険+怪奇小説+不可能犯罪」とあって、欲張りすぎ、うまくまとまるのかと心配になる。
舞台は17世紀。
積荷を載せ、インドネシアからオランダへ戻るガリオン船に、囚われた男と彼を警護する大男が乗り込もうとしている場面から始まる。
港で突然起こった超常現象が、航海の先行きを暗くする。
犯罪者集団のような船員たちと、船会社から派遣された総督とその護衛たち、怪しげな乗客。
しばしば現れる幽霊と、ついに起こった殺人。
「不可能犯罪」とあるからには、きっとこの不可思議な出来事には裏があるのだろうと想像するのだが、誰が犯人でどんなトリックなのか見当もつかない。
「名探偵」と呼ばれる男が、ずっと囚われたままで何一つ活躍をしない不思議さと、「愚物」と呼ばれるすごい装置らしい物が何なのか説明されないことに、もやもやした気分になる。
解決の糸をほどいていくと、想像以上に絡み合って根が深かかったりする。
この海洋小説、子ども向けではなかった。
装画はJan van der Straet、装丁は城井文平氏。(2022)