ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

名探偵と海の悪魔

2022-06-25 12:00:25 | 読書
 スチュアート・タートン『名探偵と海の悪魔』



 約3センチの束幅を持つハードカバーの本は、子どもの頃に図書館で借りた冒険モノを思わせる雰囲気。

 カバーの絵は青と黒の2色で、帆船が航行する暗い海に怪獣が潜んでいるのが見える。

 長体のかかったタイトル文字は微かな揺れがあり、手書き風に加工したのか、または本当に手書きで、古い本らしさを演出している。

 帯には「海洋冒険+怪奇小説+不可能犯罪」とあって、欲張りすぎ、うまくまとまるのかと心配になる。

 
 舞台は17世紀。

 積荷を載せ、インドネシアからオランダへ戻るガリオン船に、囚われた男と彼を警護する大男が乗り込もうとしている場面から始まる。

 港で突然起こった超常現象が、航海の先行きを暗くする。

 犯罪者集団のような船員たちと、船会社から派遣された総督とその護衛たち、怪しげな乗客。

 しばしば現れる幽霊と、ついに起こった殺人。

 「不可能犯罪」とあるからには、きっとこの不可思議な出来事には裏があるのだろうと想像するのだが、誰が犯人でどんなトリックなのか見当もつかない。

 「名探偵」と呼ばれる男が、ずっと囚われたままで何一つ活躍をしない不思議さと、「愚物」と呼ばれるすごい装置らしい物が何なのか説明されないことに、もやもやした気分になる。


 解決の糸をほどいていくと、想像以上に絡み合って根が深かかったりする。

 この海洋小説、子ども向けではなかった。


 装画はJan van der Straet、装丁は城井文平氏。(2022)



骨を引き上げろ

2022-06-13 17:52:46 | 読書
 ジェスミン・ウォード『骨を引き上げろ』



 モノトーンのシンプルな絵の表紙を開けると、見返しの赤が目に突き刺さる。

 本扉にも絵が入っていて、その赤い塊が、心臓の鼓動、血管を勢いよく流れる血を連想させた。


 この物語は熱い。

 舞台はアメリカミシシッピ州、語られるのは貧しい黒人の一家。

 母は末の子の出産時に亡くなり、父と10代の息子2人、15歳の少女と7歳の弟で暮らしいる。

 父は、やってくるハリケーンに備え、子どもたちに指示を出し忙しく動き回っている。

 窓を覆う板は廃材だし、水を入れるボトルは床下に転がっているもの。

 半端仕事で生計を立てる家族の貧しさが見える。

 例年ハリケーンの直撃を受けないのだが、父はこっちに向かってくるのが感覚でわかると、いささか執拗だ。

 そんな父を傍目に、次男は飼っているピットブルの出産と生まれた子犬の世話にかかりきりだ。

 彼と犬とは相思相愛で、犬はほかの人間を無視している。

 物語の語り手である少女は、自分のことを性の捌け口程度にしか見ていない男の子どもを身籠っている。彼女はまともに相手にされていないとわかっていても、その男のことを好きでたまらない。

 妊娠していることは誰にも言えずにいる。


 やがて父の懸念通り、ハリケーンが襲ってくる。それは巨大な被害をもたらしたカトリーナだった。


 ただ生きることの熱さが、読んでいるうち体に染み込んできて力が湧いてくる。

 いつも一家のそばにいる友人の、大きな優しさが救いになる。


 装丁は水崎真奈美氏。(2022)



ヨコハマハンドメイドマルシェ御礼

2022-06-06 18:28:20 | ハンドメイド


 
 ヨコハマハンドメイドマルシェにお越しいただき、ありがとうございました。
 普段お会いできないような方々とお話ができ、とても面白い時間を過ごせました。
 ただ、あまりに広くて、ほかのブースをゆっくり見ることができないのは残念でした。
 気になる出店者さんはたくさんいらしたのですが、店番を代わってもらっているわずかな時間で回るのは限りがあり、声をかけることすらできませんでした。
 会場が一目で見渡せる程度の広さの方が、ぼくにはちょうどいいかなと感じました。

ミンネで販売を開始しました。
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