パオロ・コニェッティ『帰れない山』
公園を、楽しそうに走り回る小学生の男の子たちを見て、思い出したことがある。
世界は目の前にしかなく、一緒にいる友人は、いつまでもそばにいる。
しかし、成長するにつれ、少しずつ世界は広がり、仲良しだった友人と離れていく。
大人になると、あれほど一緒にいる時間が楽しかった友人が、見知らぬ人になってしまったと気づく。
都会に住む少年は、夏の休暇になると、両親と山あいの村で過ごすようになった。
少年はそこで、牛の放牧を手伝う少年と知り合う。
干し草や土、薪の煙の匂いをまとったブルーノ。
廃屋から挽き臼を転がし、川に落として魚を獲ろうという。
街の少年にとって、この思いつきは無謀で魅力的だ。
子どもらしい2人の友情は、成長とともに変わっていく。
子どもの頃から、同じ場所に住み、まったく変わらないように見えるブルーノ。
生活が変化し、人生に疲れ始めたような主人公にとって、そんな旧い友人の姿は、昔と同じ頼もしく映る。
心の奥の大事なものは、子どもの頃に育まれる。
それは一生消えないのかもしれない。
装画は杉山巧氏。(2019)