バーナード・マラマッド『レンブラントの帽子』
特に理由は見当たらないのに、なぜか苦手な人がいる。
そんな気持ちが態度に表れないよう気を遣って接するのだが、相手も何かを感じるのだろう。空気に緊張感が生まれてしまう。
もしかしたら、一番最初に出会った時からお互いに苦手だと感じていたのかもしれない。
この本に収められた3編は、どれも人との微妙な空気を書いている。
『レンブラントの帽子』は、大学に勤める同僚との話。
美術史家は、彫刻家と顔を合わせれば会話をするが、友人ではないと思っていた。それは、人づきあいの悪い相手のせいだと。
あるとき、美術史家の何気ない言葉に、彫刻家が怒りをみなぎらせてしまう。美術史家には理由がわからないが、あからさまに避けられるようになると相手を憎むようになる。
一度壊れてしまった関係を修復するのは難しい。
相手の事情、気持ちは見えないからだ。
もしも相手のことがもう少しわかっていれば、もっと違った接し方があっただろうに。そんな後悔をすることもなく、実際の生活では関係がうやむやのまま消えてしまうことが多い。
この小説は少し悲しく、そして優しく終わる。
表紙の和田誠氏のイラストは優しい。本を手に取りやすくしてくれる。
バーコードは帯に入っていて、表4はイラストと英語タイトルだけで清々しい。失われてしまった原風景を見ているような気分になる。
装丁は和田誠氏。(2021)
この表紙をどこかで見た、紹介文も読んだ…と思い
こちらで探してみたら、1年半前にこの記事を
読んでいたんですね。
(あまりの自分の忘却力!に、毎度感心します)
書いておられるとおりの小説でした。
帯を外したものを図書館で借りたのですが
本当に美しい本でした。
ただそれだけが言いたいために
長々書いてしまいました(^^;
この本の良さを共有できて嬉しいです。