ヤーニス・ヨニェヴス『メタル’94』
若いときはなんでもできる。
それは思い込みに過ぎないが、大人になって知識と経験が邪魔をしてできないことが増えてしまうと、無邪気な10代の頃は、無限の可能性が広がっていたような気がしてくる。
若いからできてしまうことは確かにあった。
バルト三国のひとつ、ラトヴィアに暮らす15歳の少年ヤーニスの物語。
1990年の独立からわずか4年後。
優等生だったヤーニスは、パール・ジャムやニルヴァーナの曲が頭の中に響くようになってから、付き合う友人が少しずつ変わっていく。
タバコを吸い、酒を飲む。
お金がないのに列車に乗り、ライブ会場に潜り込む。
まるで人生のすべてがヘヴィメタに支配されてしまったかのように夢中になる。
登場するミュージシャンのほとんどは名前を聞いたこともない。
でも心配ない。
巻末にリストがあって、ちょっとした解説がついている。
大人になると、若い頃、なぜあんなに夢中だったのかわからないものがある。
多くの時間を費やし、体力を使い、頭の中はそれでいっぱいだったようなこと。
理由はわからなくても、それは必要なことだったのだ。
年を取って純粋さから遠ざかってしまうと、そんな時代を懐かしく肯定するのだ。
装丁は山田和寛氏。(2023)