ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

マスク

2021-01-30 15:00:02 | 読書
 菊池寛『マスク』



 表紙にマスクをした男のイラストが描かれていて、書店でとても目立っていた。

 頭の真ん中に「菊池寛」の文字。丸メガネの男は著者の似顔絵なのだ。

 帯を外すとマスクも外れる。コミカルなイラストの全貌が見える。

 表紙をめくると、そのイラストと同じ顔をした男の写真が現れる。気弱そうに感じるのは、帯に書かれた「私も、新型ウィルスは怖い。」の文字のせいだろうか。

 
 「スペイン風邪をめぐる小説集」というサブタイトルがついているが、本の半分は関連のわからない歴史小説だ。このラインナップに戸惑う。

 およそ100年前に流行ったスペイン風邪に対する人々の反応が、現代の新型コロナウィルスと似ているよね、という程度の読み方だと物足りない。

 しかし、ここには何かしら参考になるようなことはなく、ただ物哀しさが漂う。


 一番最後の一編「私の日常道徳」だけ、貂明朝で組まれている。

 古めかしいけれど、どことなく可愛らしくもある独特な書体が、「マスク」で感じられた菊池寛の雰囲気に似合っている。


 デザインは木村弥世氏、イラストは茂苅恵氏。(2021)






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2 コメント

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「菊池 寛」のマスク (エゾ中村)
2021-02-02 17:33:44
私も、「菊池寛」の短編小説『マスク』を 読みました。 当時の新聞を引用し、スペイン風邪の死亡者は、3300人程と 記載されています。 不可解です。 記録によると、37万人が死んだ筈です。 文豪が、情報を過少申告したと思えません。「ロビンソンさん」は、そんな記述に疑問を抱きませんか? 100年以上前の「日米親善野球大会」は、興味深い歴史の一ページでした!
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Unknown (ロビンソン)
2021-02-03 19:51:37
文中の菊池寛らしき人物は、ぼんやりした感じの人で、実像とは少し違うのかもしれません。ぼんやりしているから数字に厳しくなく、かえって愛嬌がある虚像を菊池寛は描きたかったのだろうかと想像してしまいます。ご指摘の死亡者数3337人は、後の文章で「段々減少し」とあるので、累計ではなく月ごとなどの数字かと思われます。恐ろしい数ですが、ユーモアを含んだ文章が救いになる気がします。
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