ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』と『果樹園の守り手』

2023-05-13 16:47:17 | 読書
 コーマック・マッカーシー『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』




 映像化された作品があまりに印象的だと、あとから原作を読んだとき失望することがある。

 この小説は「ノーカントリー」というタイトルで2007年に映画化されていて、
その強烈なイメージはいまだ頭から離れない。

 読み進めながら主役のハビエル・バルデムの顔がチラついてしまうのはどうにもできなかった。

 ところが、読み終えた後の感触は映画と少し違う。

 年月が経って映画の細部を忘れてしまったせいかもしれない。

 文字の中に潜む虚無感が、じわじわと頭の中に広がっていくのだ。

 徐々に追い詰められていく緊迫感を、鉤括弧を外したスマートな会話が効果的に昂めていく。


 一般市民のモスは、偶然、麻薬密売組織の大金を手に入れる。

 逃げる彼を追うのは組織だけでなく、冷酷な殺し屋シガー。

 そしてモスの身を案じる年老いた保安官。

 シガーの不気味な行動は、見ていると人としての正常な感覚を失わせる。

 ところが、合間に挟まれる保安官のモノローグは、生きているという安心に触れられる。

 タイトルの「オールド・メン」の存在の大きさを知る。



 この小説の前に、同じ著者のデビュー作『果樹園の守り手』を読んでいた。

 状況がわかりにくく、ストレスのかかる読書だった。

 やりたいことはわかる、でも上手くいっていない。後の偉大な作家に、偉そうに助言をしてみる。

 『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』は、それから40年後に書かれたもので、大きな成長のあとが見られる。

 続けることは大事だと、上から目線で語ってみる。

『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』

 装丁は國枝達也氏。

『果樹園の守り手』

 装丁は斉藤啓氏。(2023)



文学フリマ東京36

2023-05-04 16:31:31 | ハンドメイド
 文学フリマ東京36に参加します。
 5月21日(日)
 東京流通センター 第一展示場
 S-09 ロビンソン・ファクトリー

 主催者HP
 https://bunfree.net/event/tokyo36/

 入場無料です。

 昨年11月20日に開催された「文学フリマ東京35」へ初めて行ったとき、会場を包む熱気に驚きました。
 多くのチラシを受け取り、出店者と話をし、10冊ほど本を購入すると2時間が経過していて、立ち止まった途端もう一歩も動けないほど疲れていることに気づきました。
 出店者の多くは、商品を売っているのに積極的には話しかけてきません。
 ブースの前に立って見本を手にすると、そこは小さな書店になり、ゆっくり読むことができました。
 著書が目の前にいる。
 だからつい聞いてみたくなります。
 これはどうして? 次も出ますか?

 表現したいという強い気持ちが会場を覆っていて、その素朴な感情が学園祭に似た雰囲気を作っていたのかもしれません。
 ここでしか出会えないものばかりで、宝探しをしているような気分でした。
 

 「文学」と名前がついたイベントですが、文字の少ない、ほぼイラストの本を出展します。
 制作が間に合うかどうか微妙なものがあって、仕事の合間、毎日少しずつ進めています。