ペッペ・フェノーリオ『個人的な問題』
第二次世界大戦中、イタリアでパルチザンとして戦う青年の話。
とはいえ、勇猛果敢な戦闘の話ではない。
敵に隠れて移動している最中、かつて訪れたことのある建物を目にしたミルトンは、そこで過ごした平和な日々を思い出し、つい立ち寄る。
そこは、美しい少女フルヴィアが疎開してきた別荘。
幼馴染のジョルジョに彼女を紹介されたミルトンは、彼女と恋仲になったと勘違いする。
16歳の少女には、醜く猫背のミルトンより、裕福でお洒落、美男子のジョルジョの方が魅力的だろう。
フルヴィアとジョルジョが楽しげに踊るとき、ミルトンは決して踊らずレコードを替える役に徹する。
そんな彼にフルヴィアは「頑張って、機械係!」と声をかける。
彼女が好きなのは、友人の方だと気づくべきだ。
ところが、別荘の管理人に2人は付き合っていたようだと聞くと、ミルトンはいてもたっていられず、別の部隊にいるジョルジョに真相を確かめるべく会いに行く。
物語の大半は、ジョルジョを探すミルトンの、危険で混乱した道のりだ。
霧深い山岳地帯は、不意に敵に出くわすかもしれない。
パルチザンがいかに苦しい戦いをしていたのかがわかるが、その中で死にそうになりがらも、あまりにも個人的なことで動き回るミルトンが、哀れで滑稽に見えてくる。
装丁は鈴木一誌氏。(2021)