デイジー・ジョンソン『九月と七月の姉妹』
カバーに描かれた女性2人の髪が美しく目を引く。
帯を外すと、飾りのように見えた枝葉は、鎖のようにつるが絡まり、棘があるのではと、目を凝らしてしまった。
妖しげな雰囲気を醸しているのは、2人が後ろを向いて表情がわからないのに、寄り添っているようにも、反発しあっているようにも見えるからだろうか。
10か月違いの姉妹と、母の物語。
3人が海に近い家へ引っ越してくるところから始まる。
荒れた庭、薄汚れた壁、前の住人の痕跡がくっきりと残る室内。
こうなったのはあんたたちのせい。
母はこう言いたいのだと、妹のジュライは思う。
それは学校で起きた事件のせい。
以来母は、娘たちに話しかけず、目も合わせてくれない。
姉セプテンバーは気まぐれで、不安定なジュライに優しくしたり突っぱねたり。
支配する姉と、依存する妹の間に母は入り込むことができない。
厄介な娘たち。
物語は今にもバランスを崩しそうな落ち着かない空気に満ちていて、何が起きたのか、これから何が起きるのか緊張しながら一文一文を丁寧に読み進める。
あれほど美しいと感じていたカバーの絵が、いつの間にか不気味に思えてきた。決して彼女たちの顔は正面から見てはいけないのだと肝に銘じる。
2人の表情がわかる絵はないけれども。
装画は榎本マリコ氏、装丁は岡本歌織氏。(2023)