ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

九月と七月の姉妹

2023-11-21 17:08:29 | 読書
 デイジー・ジョンソン『九月と七月の姉妹』



 カバーに描かれた女性2人の髪が美しく目を引く。

 帯を外すと、飾りのように見えた枝葉は、鎖のようにつるが絡まり、棘があるのではと、目を凝らしてしまった。

 妖しげな雰囲気を醸しているのは、2人が後ろを向いて表情がわからないのに、寄り添っているようにも、反発しあっているようにも見えるからだろうか。


 10か月違いの姉妹と、母の物語。

 3人が海に近い家へ引っ越してくるところから始まる。

 荒れた庭、薄汚れた壁、前の住人の痕跡がくっきりと残る室内。

 こうなったのはあんたたちのせい。

 母はこう言いたいのだと、妹のジュライは思う。

 それは学校で起きた事件のせい。

 以来母は、娘たちに話しかけず、目も合わせてくれない。

 
 姉セプテンバーは気まぐれで、不安定なジュライに優しくしたり突っぱねたり。

 支配する姉と、依存する妹の間に母は入り込むことができない。

 厄介な娘たち。

 物語は今にもバランスを崩しそうな落ち着かない空気に満ちていて、何が起きたのか、これから何が起きるのか緊張しながら一文一文を丁寧に読み進める。


 あれほど美しいと感じていたカバーの絵が、いつの間にか不気味に思えてきた。決して彼女たちの顔は正面から見てはいけないのだと肝に銘じる。

 2人の表情がわかる絵はないけれども。


 装画は榎本マリコ氏、装丁は岡本歌織氏。(2023)



文学フリマ東京37が終わって

2023-11-20 16:58:25 | イベント
 無事に終了しました。

 お越しいただいた方、お買い上げいただいた方、ありがとうございました。


 開場時間前から多くの人が入口前に並んでいて、これは大変なことになると心配しましたが、開場して何分経っても、何時間経っても、ぼくのブースの前は人通りがまばらでした。

 それでも、もしかしたらという希望を持っていたので、なかなかブースを離れてほかの人のところを見に行くことができませんでした。

 終了時間が近くなり、勇気を振り絞って10分ほどほかの人たちの作品を見て回りました。

 戻ってくると「買いたいという人がいらっしゃいましたよ」と隣のブースの人が教えてくれました。「また後で来るって」。

 この広い会場は、一度離れると同じ場所に戻ることが困難です。

 残念ですが、その人とは縁がなかったのです。

 ところが、しばらくしてその人は戻ってきてくれました。



 文学フリマで買った本

 『植物園』
 垂井真 さらさちさ・著



 手のひらサイズの蛇腹の手製本。

 片側は短歌、反対側は詩、2人の共作。

 柔らかな風合いの紙を使用し、薄いインクで印刷された余白も美しい作り。

 芯の強さが感じられる詩と、ユーモアが滲み出る短歌と。

 日曜日の朝に触れると、1日が詩的に彩られていく一冊。

文学フリマ東京37

2023-11-03 16:44:19 | イベント
 文学フリマ東京37に参加します。

 11月11日(土)12:00~17:00
 東京流通センター 第一展示場
 V-26 ロビンソン・ファクトリー

 主催者HP
 https://bunfree.net/event/tokyo37/

 入場無料です。(東京38から有料になってしまいます)


 会場は入口と出口が分けられていて、前回は入ってまっすぐ9番め。物件なら駅近、あるいは目の前がバス停のようなところでした。
 今回は入って左に4列め、奥へ向かって19番め。
 配置図ではわかりませんが、当日会場を歩いてみると、きっと人が多く、面白そうなブースもたくさんあって、たとえここを目指して来ようとしても、途中で力尽きるかもしれません。
 ぼくは以前、探していたブースをなかなか見つけることができず、やっと辿り着いたときには完売して誰もブースにいなかったことがあります。
 人気のパン屋か! と呟きました。

 前回の隣の人は、とても人気のある人でした。
 開場と同時にブースの前に大勢の人が並びました。
 隣人は本にサインをしながら、訪れた人たちとにこやかに話をしています。
 アイドルか!
 本当にアイドルを職業にしている人でした。

 出店者の情報はwebカタログ(https://c.bunfree.net/c/tokyo37)で見ることができます。