ドメニコ・スタルノーネ『靴ひも』
表紙のイラストは、綺麗な色使いで、一見楽しげに映る。
けれども、よく見ると、家族と思われる4人は、バラバラな方向を見つめていて、冷たさが伝わってくる。
3部からなる夫婦と子ども2人の物語。
最初は、妻のモノローグから始まる。
狂気をはらんでいるように感じられ、先行きが不安だ。その原因は夫にあると示唆される。
次に夫の視点になる。
先の妻の語りとは時代が異なっていて、夫婦関係は良好に見える。
ただ、妻を狂気の淵に追い込んだ原因が、解決されたのかどうか不明だ。そこに老人の曖昧さが加わって、不安に取り巻かれている。
そして最後に子どもたちの視点。
子どもとはいえ、すでに50歳に届く年齢になっている。それなのに、甘えた幼子のような考え方をする。
母の狂気、父の身勝手を受け継いだ子どもたち。
お互いを思いやることがない家族。
そんな心の離れた家族を、靴ひもにまつわるエピソードがひとつにつなげる。
しかし、つながるとは、一体どういうことを言うのだろう。
血のつながりなのか。
一緒に住むからつながるのか。
相手のことを、憎みながらも考え続けることが、つながっていると言うのだろうか。
家族とはなんと面倒な関係なのだろう。
面倒だからといって、簡単に断ち切れないのが家族で、だからさらにややこしくなるのだ。
装画は都築まゆ美氏。(2020)