トレイシー・シュヴァリエ『ブレイクの隣人』
表紙から背にかけて絵が広がっている。
その上で白く抜かれた日本語のタイトル文字が、最初は少しつかみにくい。
縦に組まれ、表紙の左右両脇に分かれて「ブレイクの」と「隣人」が入っているのだが、絵の一部のように感じられる。
そのタイトル文字に挟まれて、中央に横組みでオリジナルのタイトル「BURNING BRIGHT」と著者・翻訳者名が入っている。
ちょうど緞帳の絵の上にのった著者・翻訳者名が、一番先に目に飛び込んでくる。
よく見ると、サーカスの絵だ。
クレジットから、作中登場する実在したサーカス団だとわかる。
1800年代に描かれた古い絵。
カバーを広げてみると、折り返した袖にまで、観客席の絵が続いている。
そうしてやがて、一番大きいタイトル文字の存在に気づく。
1792年から1793年にかけてのロンドン。
田舎から引っ越してきた椅子職人の家族と、関わる人たちの物語。
猥雑な匂いがプンプン漂ってくる街で、いい人、嫌な奴、様々な人の生き様が描かれている。
はじめは変人に見えたウィリアム・ブレイクが、少年と少女を優しく導いて彼らの成長を助ける。
彼の詩が、この時代に密着している。
大胆で繊細な物語は、丁寧に作り込まれた表紙や、その他の部分の細やかさと同調している。
装丁は柳川貴代氏。(2019)