ジョン・ウイリアムズ『アウグストゥス』
アウグストゥスってローマの?
その程度の歴史知識しかないので、この本は楽しめないのではと心配していた。
カバーは、大理石像のモノクロ写真と慎ましやかな細いタイトル「AUGUSTUS」。
堅い歴史書にも見えるし、文字量の多い小説にも見える。
著者がジョン・ウイリアムズでなかったら手に取ることはなかったと思う。
冒頭に著者による覚書があり、「わずかな例外をのぞき、この小説を構成する文章はわたしの創作である」と書かれている。
その意味を知るのは、この小説が書簡、回顧録、手記といった文献の引用だけで成り立っていると気づいてからだ。
「マルクス・アグリッパの回顧録ー断簡(紀元前13年)」
こうして始まると、その文献はいかにも本物に思える。
しかし小説家が書いた創作なので、文章に澱みがなく、夢中になって読んでしまう。
そして、文献の並びは時代の流れに沿っていない。
その巧妙な仕掛けに翻弄されるのも楽しい。
アウグストゥスとはローマ帝国初代皇帝である。少し歴史に詳しくなる。
装丁は水崎真奈美氏。(2021)