タリアイ・ヴェーソス『氷の城』
不親切な小説だ。
謎を見せておきながら種明かしをしない。
解き明かそうと、何度も同じ箇所を読み返してしまった。
まるで捜査資料を読み返すことで、気づかずにいた手ががりのヒントを得ようとする刑事のように。
雪と氷に覆われたノルウェーの小さな町が舞台。
11歳の少女の秘めた友情の話。
ところが突然、事件の様相を呈してきて、凍った道で転倒して天地が逆になってしまったような気分を味わう。
その後は、半透明の氷を通して少女たちの様子を窺うみたいに、どこかはっきりしない居心地の悪さが続く。
「もうわからない」と投げ出してしまいたくなったが、引き止めたのはカバーのイラストと装丁の美しさだ。
画家とデザイナーは、この物語を読んで、作品に何をこめたのだろう。
装画はアイナル・シグスタード氏、装丁はアルビレオ。(2023)
アイナル・シグスタード氏はノルウェーの画家で、この日本語版のために装画を描き下ろしてもらったそうだ。