チャック・パラニューク『インヴェンション・オブ・サウンド』
「キャー!」
恐怖に慄く女性の悲鳴。
瞬間、身体が硬直し、頭の中は真っ白になる。
そんな悲鳴を、いままで間近で聞いたことがない。
記憶にあるのは、俳優が演じる映画やドラマの中だけだ。
それは本当の恐ろしさ、痛みが伴うものではないはず。
では、真実の苦痛がもたらす悲鳴とはどんなものなのだろう。
肉体を傷つけ悲鳴を上げさせる。
それを録音して、映画の音響として使用する。
考えるだけでもおぞましい。
この小説では、それを職業にする女性が登場する。
嘘のような話なのに、実在する映画のタイトルが散りばめられると、どことなくリアルに感じられる。
世界は陰謀に満ちていると信じてしまう人の気持ちが、少しだけわかる気がする。
カバーの紙は傷だらけで、平積みにされていた書店で、思わず下の本を探ってしまった。
傷は、写真に意図してつけられたもの。
不快なところを突いてくるデザインと物語は、悪夢を見そうだ。
装丁はコードデザインスタジオ。(2023)