ケヴィン・ウィルソン『リリアンと燃える双子の終わらない夏』
貧しい環境から抜け出すために努力をし、優秀な学校に入学したのに、大人の勝手な都合で前途を閉ざされてしまう。
そんな経験をしたリリアンは、28歳になっても適当な生き方しかできずにいた。
彼女のもとへ、かつての親友マディソンが仕事の依頼をしてきた時すぐに応じたのは、このままではいけないと思っていたからだ。
上院議員を夫に持つ元同級生の頼みとは、先妻の子どもたちの面倒をひと夏みてほしいというもの。
タイトルにある「燃える双子」のことで、彼らは本当に身体が発火する不思議な子どもたちだった。
リリアンが退学させられた原因を作ったマディソン。
将来の大統領と目されている夫は、双子に愛情のかけらも持っていない。
親でも教師でもないリリアンは、10歳の問題児たちとどう向き合っていくのか。
ページを繰るたびに好きになっていく物語だ。
リリアンのタフなところ、マディソンのしたたかなところ、傷を負った子どもたちの無邪気なところ。
彼らの幸福な未来を想像してみる。
装画は中島ミドリ氏、装丁はアルビレオ。(2022)