ヘンリー・ミラー『愛と笑いの夜』
シリーズの本は、ラインナップを新しくし、装丁を替え、何度か蘇ることがある。
河出書房新社の『Modern & Classic』は、最近書店であまり見かけなくなった。
出版社のHPを見ると、2008年に出版された本が最後で、その多くが重版未定になっている。
雑草に覆われた登山道のように、消えかかっている。
このシリーズの元になったものが、1970年代の『モダン・クラシックス』なのだろうと思っていたが、詳しく二つのラインナップを見ると、重なっていない。
時代によって読まれ方も変化してくるから、不思議なことではないが、似た名前の別シリーズなのだろう。
ヘンリー・ミラーの『愛と笑いの夜』は、1972年出版の『モダン・クラシックス』シリーズの1冊。
古書店で1冊だけ置いてあったので、これが30数冊あるシリーズだと最初は気づかなかった。
シンプルな装丁で、タイトル、著者名すべての文字が小さい。
背の文字はさらに小さく、書店の棚に並べられていたら目立たない。
ただ、これと同じ装丁の本が30冊並べば、また違った印象になるはずで、家の書棚で品良く収まる雰囲気なのかもしれない。
6つの短編が入っている。
ヘンリー・ミラー本人と思われる小説家が登場するものもある。
話の始まりは、どれも面白い。
物語はあっちへ行ったり、こっちに転んだり、どこに終着するのか見当もつかない。
その流れが楽しい。
ヘンリー・ミラーの本は、いまでは新刊で手に入るものが少ないようだ。
ちょこっと文庫で出てきたら、読みやすく、好きになる人はいるだろうに。
装丁は広瀬郁氏。(2019)