ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

キリンの首

2022-12-27 18:42:07 | 読書
 ユーディット・シャランスキー『キリンの首』




 この本が外国語で書かれているように感じられるのは、カバーに日本語がひとつも見当たらないからだ。

 古く見えるのは、くすんだ色の背景、使われている書体、動物の骨格図、さらにはクラフト紙の帯が上手に過去へ導くからだ。

 帯に日本語が入っているのだが、外国の本に解説を巻いたように見えてしまう。

 帯を外すと、カバーにも日本語のタイトルがあることを知る。

 入っていて当たり前だが、その存在感は薄く、洋書を手にしている感覚は消えない。

 カバーを外すと古い博物誌のようで、本を開いて目次を見ると「生態系」「遺伝のしくみ」「進化論」の3つだけ。

 小説を手に取ったはずなのにと、不思議な気分になる。 


 作中の教師は、ぼくが小学生だったときの担任を思い出させる。

 先生は当時50歳くらいだったのだろう。母より年上で、6歳の子から見ればおばあちゃんだった。

 厳しくはなかったが、特に優しくされた記憶もなく、無愛想という印象が残っている。


 インゲ・ローマルクは、ギムナジウムで生物を教える55歳の女性。

 12人の生徒たちのことは、成長中の陸上脊椎動物程度にしか見ていない。

 冷たい人間だが、広い知識を持ち、その独特の視点は、ときにユーモアが混じっているようにも感じられる。

 彼女は、一人の女生徒がいじめを受けていると気づくが、観察するだけで助けようとはしない。

 そんな教師に、生徒が心を開くわけがない。


 知識だけでは、人の感情を理解することはできない。

 残念ながら、ぼくは最後までインゲ・ローマルクを好きになれなかった。


 装丁は水戸部功氏。(2022)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ほどける

2022-12-15 20:31:56 | 読書
 エドウィージ・ダンティカ『ほどける』



 長く束ねた髪。

 ほっそりとした体つきの後ろ姿。

 白いシャツは輪郭があやふやで、背景に溶け込んでいきそうだ。

 タイトルの『ほどける』は、表紙に描かれた人の黒髪の上で、ほかを圧倒して白く浮き出ており、繊細なカバーの中で力強い印象を与える。


 両親と双子の姉妹が乗る車が、突然対向車に追突される。

 意識を取り戻した妹のジゼルは、周囲の人たちの会話を理解できるが、体を動かすことも話すこともできない。

 会話の端々から、姉のイザベルだけが亡くなり、自分が姉と間違えられていることを知る。


 ジゼルはイザベルを思い出す。

 生き生きと描写されるイザベルは、活発で魅力的な女の子だ。

 2人でタイムカプセルを作ったとき、イザベルはこんな手紙を入れる。

 「未来さま、

 わたしを茫然とさせてください。

 びっくりさせてください。

 仰天させてください。

 大喜びさせてください。

 驚かせてください。

 驚嘆させてください!」


 亡くなった人を思い出すと、不思議と心が落ち着くことがある。

 振り返る些細な会話の中に、生きているぼくにとって糸口になるような暗示を感じたりする。

 
 ジゼルとイザベルの関係は、双子だっただけにより強いものだったはずだが、時間の経過とともにほどけていく。

 しかし心の中の存在は決して消えることなく、むしろ確固としたものになっていくのかもしれない。

 
 装画は塩月悠氏、装丁は水崎真奈美氏。(2022)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

手づくりマーケット

2022-12-14 11:49:08 | ハンドメイド
 相模国分寺手づくりマーケット(海老名)に出店しました。

 スケートリンクが設営された公園の一画。

 日差しが届いて暖かな時間帯もありましたが、ほとんどは周囲のショッピングモールの影になり、冷たい風が吹き抜ける厳しい環境でした。

 幸い、近くにスタバがあったので、温かいコーヒーを何杯も飲んで過ごしました。


 お買い上げいただいた方々、お話をしてくださった方々に御礼申し上げます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする