つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

憧れのウイグルは涙に暮れているか。

2020年05月26日 16時25分15秒 | 手すさびにて候。
シンセサイザーの幻想的なテーマ音楽が流れはじめ、
夕闇迫る砂の海を、駱駝という船に乗って黙々と往く隊商の列。
そこに重なる、感情を抑えた「石坂浩二」のナレーション。
ブラウン管の前に座る僕の心は、冒頭から旅の空に誘われた。

1980年に始まった、日中共同取材・制作による番組、
「シルクロード 絲綢之路(ししゅうのみち)」は、画期的だったと思う。
特に旅情を搔き立てられたのは、大陸最深部の「西域」。
ソビエト連邦(当時)と国境を接する「新疆(しんきょう)ウイグル自治区」の映像である。

オアシスの木陰で微笑む人々の容姿は、東アジアのそれとは別物。
彫の深い面立ち、こぼれそうに大きな瞳、ほんのり色付いた滑らかな肌。
長い手足を鮮やかな原色の民族衣装で包み、
華やかな髪飾り・装飾品を身に着けた名も知らぬ女性は、
砂漠に実る葡萄のように美しかった。

そんな“憧れのウイグル”が、今、大変な事態になっているという。

ほんの手すさび手慰み。
不定期イラスト連載、第百四十二弾は「ウイグルの涙」。

ウイグル族は、新疆ウイグル自治区を中心に暮らすトルコ系イスラム教徒。
それが「消滅」の危機に瀕しているという。

昨年の報道によれば、100万人のウイグル人が収容キャンプへ送り込まれた。
そこで行われているのは「民族浄化」・「民族同化」という悪行。
長い歴史の中で育まれた信仰や文化・習慣・言語などを棄てさせ、
「中国共産党公認」の文化・言語へ「アップデート」しようとしているんだとか。
--- より禍々しい、耳を塞ぎたくなるニュースも容易に検索できる。

「テロ防止」「独立阻止」などを錦の御旗に掲げた「弾圧」に対し、
国連は「深い憂慮」を表明。
アメリカ国務省は、身柄を拘束された、あるいは消えたウイグル人に言及した。
一方、イスラム諸国は抗議の声を上げていない。
中央アジアから中東にかけ「一帯一路(※)」に参画している国は多い。
沈黙の背景に中国の経済力が見え隠れしている。
また、アメリカの姿勢には大国の思惑が滲む。

確かに、ウイグル右翼によると思われる武力行使はあった。
それは良くない事だ。
しかし、何故テロルを選択したのかも考えなければならない。
さらに、民族の存在そのものを否定するのは間違いだ。
前述の報道が事実なら「ホロコースト」に等しい。

どこの国にも、どの民族にも「自己優位」の傾向は、大なり小なりある。
もっと小さな「個」に照らし合わせても似たようなもの。
僕自身「自己中心」の考えが頭をもたげる事を否定できない。
そもそも歴史を紐解けば、日本も、欧米も、アラブも同じ轍を踏んできた。
同じ穴の貉(むじな)である。
人間は、何と恐ろしく罪深いのだろう。

(※一帯一路は、2013年に提唱された中国の巨大プロジェクト。
  アジア、アフリカ、ヨーロッパ、オセアニア、80近くの国々を
  鉄道、海上交通路、他のインフラ・プロジェクトで結びつける構想。
  現代のシルクロードとも呼ばれる。)
コメント (1)
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