おどみゃ島原の ナシの木育ちよ 生まれ育ったのは島原の貧しい家
何のナシやら 何のナシやら 何にもなかった
色気ナシばよ しょうかいな 色気ないから、売られる事もないでしょう
はよ寝ろ 泣かんで おろろんばい 泣かないで早く寝てちょうだい
鬼の池 久助どんの 連れんこらるばい 早く寝ないと、人買い久助が連れに来る
「鬼の池(おんのいけ)」とは、熊本県天草市の地名。
「久助(きゅうすけ)どん」は、天草の鬼池で財を成した女衒。
「鬼池の久助が連れに来るぞ!」と言えば、子供が怖がるほど、知れ渡っていたという。
ほんの手すさび手慰み。
不定期イラスト連載、第百四十五弾は『島原の子守唄』のモチーフになった女性たち、
「からゆき」さん。

幕末から昭和初期にかけ、海を渡った娘たちがいた。
外航船の船底に石炭と一緒に押し込められて港を離れ、
遠く中国や東南アジアなどに渡り、娼館で働いた「からゆきさん」である。
多くが、長崎・島原、熊本・天草などの貧農の子女。
身売りに出された数は、累計20万とも30万ともされる。
異国の地で命を落としたり、病に倒れたり。
不幸な運命を辿った例は、少なくない。
シンガポールでは、マレー方面へ逃走した「からゆきさん」がいたという。
密林で「虎に喰われるか」。
戻って「男に喰われるか」。
--- 過酷な話である。
「島原の子守唄」の作者は、
長崎県・島原市生まれの作家「宮崎康平(みやざき・こうへい)」。
不遇の時代、男手一つで乳飲み子を育てる中で自作の子守唄を歌って聞かせた。
自然と口を突いて出た言葉は、幼い頃から見聞きしていた「からゆきさん」の古事。
後に、練り上げられ「島原の子守唄」として完成した際は、
女性たちの哀切、憐憫、そして「憧れ」も織り込まれた。
あすこん人は二つも あの家の娘は
金の指輪(ゆびがね)はめとらす 金の指輪を2つも嵌めている
金はどこん金 金はどこん金 あの金はどこの金だろうか
唐金げなばい しょうかいな 外国から持ち帰った金らしい
おろおろん おろろん おろろんばい さあさあ もう寝ておくれ
「からゆきさん」の中には、年季を終え、ひと財産を持ち帰る者もいた。
体を張った金。
命を削った金。
自分の何かと引き換えた対価と分かったうえで、
一握りの「成功者」は羨望を集めたのである。
何のナシやら 何のナシやら 何にもなかった
色気ナシばよ しょうかいな 色気ないから、売られる事もないでしょう
はよ寝ろ 泣かんで おろろんばい 泣かないで早く寝てちょうだい
鬼の池 久助どんの 連れんこらるばい 早く寝ないと、人買い久助が連れに来る
「鬼の池(おんのいけ)」とは、熊本県天草市の地名。
「久助(きゅうすけ)どん」は、天草の鬼池で財を成した女衒。
「鬼池の久助が連れに来るぞ!」と言えば、子供が怖がるほど、知れ渡っていたという。
ほんの手すさび手慰み。
不定期イラスト連載、第百四十五弾は『島原の子守唄』のモチーフになった女性たち、
「からゆき」さん。

幕末から昭和初期にかけ、海を渡った娘たちがいた。
外航船の船底に石炭と一緒に押し込められて港を離れ、
遠く中国や東南アジアなどに渡り、娼館で働いた「からゆきさん」である。
多くが、長崎・島原、熊本・天草などの貧農の子女。
身売りに出された数は、累計20万とも30万ともされる。
異国の地で命を落としたり、病に倒れたり。
不幸な運命を辿った例は、少なくない。
シンガポールでは、マレー方面へ逃走した「からゆきさん」がいたという。
密林で「虎に喰われるか」。
戻って「男に喰われるか」。
--- 過酷な話である。
「島原の子守唄」の作者は、
長崎県・島原市生まれの作家「宮崎康平(みやざき・こうへい)」。
不遇の時代、男手一つで乳飲み子を育てる中で自作の子守唄を歌って聞かせた。
自然と口を突いて出た言葉は、幼い頃から見聞きしていた「からゆきさん」の古事。
後に、練り上げられ「島原の子守唄」として完成した際は、
女性たちの哀切、憐憫、そして「憧れ」も織り込まれた。
あすこん人は二つも あの家の娘は
金の指輪(ゆびがね)はめとらす 金の指輪を2つも嵌めている
金はどこん金 金はどこん金 あの金はどこの金だろうか
唐金げなばい しょうかいな 外国から持ち帰った金らしい
おろおろん おろろん おろろんばい さあさあ もう寝ておくれ
「からゆきさん」の中には、年季を終え、ひと財産を持ち帰る者もいた。
体を張った金。
命を削った金。
自分の何かと引き換えた対価と分かったうえで、
一握りの「成功者」は羨望を集めたのである。