つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

旅打ちの醍醐味。

2024年12月28日 05時55分55秒 | 賭けたり競ったり
                              
金沢発 22:55。
梅田着 翌6:00。

夜行バスから降り立った大阪は暗がりの中で微睡んでいた。
程なく朝日が昇ると、街が目覚め、人々が群れをなして動き始める。
次第に活気を帯びてゆく大都会に身を置いた僕は、孤独で自由だった。
「その時」を迎えるまで、まだ半日以上。
夜まで然したる当てもない。
何の下調べもしていない。
梅田~谷町九丁目~日本橋~難波~中之島---。
地下鉄を乗り継ぎ、気ままにぶらつき、腹が減ったら飯を喰った。

聞き馴れないイントネーションの会話と笑い声。
理由は判然としないが物凄い剣幕で駅員を怒鳴りつける男。
客引きの猫なで声。
クラクション、歩行者用青信号の誘導音。
あちこちから流れてくるクリスマスナンバー。
さんざめく街のノイズに包まれながら、心はどこか上の空。
「毒島 誠(ぶすじま・まこと)」から届いた
白い招待状(※前回投稿参照リンク有)」開封の瞬間を待ちわびていたのだ。











2024年12月22日・日曜日「住之江競艇場」。
年間王者を決める舞台には、既に大勢のファンが詰めかけていた。
舟券を買うのも。
食事を買うのも。
手洗に立つのも。
行列、また行列。
混み具合は激しくなる一方。
日が落ちる頃、観戦スタンドは人で埋め尽くされた。
「立錐の余地なし」とは、この事である。





戯れに前座戦に張ってみたがハズレ。
どうも真剣に予想する気にならない。
やはり止めようと思った。

『最終12Rグランプリ優勝戦に手持ちの有り金すべてを賭けよう』

既に心は決まっていた。
舟券は、何があっても「毒島」アタマの二連単総流し。
数年間から、彼が乗艇するレースを買う時は問答無用でそうしてきた。
今回がその集大成になると信じていた。
早々と投票を済ませた僕はひたすら「その時」を待つ。
時折、疲れと寝不足に起因する生欠伸を噛み殺し、
凝り固まった首や肩を回し、屈伸したりしながら同じ場所に立ち続けた。



振り返ればここまでの「毒島」の戦いぶりは安定していた。
3月、地元桐生の一般戦でオール1着の完全優勝。
   今年最初のSG第59回ボートレースクラシックを初優勝。
5月、SG第51回ボートレースオールスター優出。
8月、芦屋競艇G1レース優出。
10月、SG第71回ボートレースダービー優出。
11月、丸亀競艇G1レース優出。
12月、三国競艇と福岡競艇のG1レース優出。
これら積み重ねた成績によって年間賞金ランク2位を確保し、
手に入れた好モーターを駆使してグランプリ予選初日1着→二日目2着→三日目3着。
見事、最終決戦のポールポジションに陣取った。
その威風堂々たる歩みは王座へと続く道のりである。

彼の日本一への挑戦は8年連続11回目。
うち6度もファイナルの舞台に立ち、準Vも2度。
だが頂点は極めていない。
これまで悔しい思いばかりしてきた。
それが、やっと---。
やっとここに置き忘れた「誇り」を取り戻せる。
何度も同じ思考を反芻し、戦前にも拘わらず目頭が熱くなった。

そして、1人のファンが10年間待ち望んだ「その時」が来た。
風一つない鏡のような静水面に6つの航跡が描かれる。
辺りは割れんばかりの大歓声が木霊する。
会場のボルテージはうなぎ上りだ。
皆、応援するレーサーの名前を叫んでいた。
勿論、僕もその1人である。



正直、揉みくちゃの現場ではレース展開がどうなっているのかなどよく分からない。
ただ「毒島」が負けないスタートを踏み込み、追いすがる2号艇を振り切り、
他を置き去りにしてゴールしたのは、確かにこの目で見た。
その一番見たかった景色を味わえたのは束の間。
すぐに涙で霞み朧気になってしまった。

ロクな写真も撮れなかったので、以下に公式youtube動画のリンクを貼っておく。
もしご覧になる際は大歓声音量にお気を付けください。

我こそ王者。毒島誠 悲願のグランプリ初制覇!!│BOATCAST NEWS 2024年12月22日│


わが舟券は勿論的中。
収支はマイナスで懐は痛んだが、今回ばかりは不問。
僕にとってこのレースは特別な意味を持っていたのだ。
この世の「心残り」が1つ減った。

レース終了後、そそくさと住之江競艇場を後にした。
帰りのバス時間が迫っていた。
金沢に到着したら、その足で仕事場へ直行しなければならない。
勝利の余韻を嚙みしめながら帰途に就く。
これもまた旅打ちの醍醐味である。



ブス、おめでとう!
                             
コメント
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