今投稿から2ヶ月後、世界の耳目は“花の都”に集まる。
2024年7月26日「パリ・オリンピック」が開幕するからだ。
フランスに上陸した聖火は、現在、各地の観光名所を経由しながらリレー中。
市内に入って以降は全20区をくまなく回るそうだ。
ルートの1つとして外せないのは「ルーブル美術館」だろう。
その歴史は古く、12世紀まで遡る。
日本ではちょうど鎌倉幕府が成立して間もない頃。
国王・フィリップ2世の命令により城塞として建てられ、後に王の邸宅に改築された。
正式にミュージアムとなったのはフランス革命の勃発から4年後、1793年。
館内には、先史時代~19世紀まで様々な人類の遺産が並ぶ。
すべてを鑑賞するには1週間を要すると言われるほどの点数を誇る。
たとえ美術ファンならずとも知る有名な作品も多い。
3万点以上の常設展示から、三大美女のそれを挙げてみよう。
謎めいた微笑は説明不要「モナリザ」。
黄金比の立ち姿「ミロのヴィーナス」。
そして拙作の題材とした女神像である。
ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第二百三十七弾「幻想、有翼の美神」。
それは、1980年代末。
中庭に金属とガラスのピラミッドが出来る2年ほど前のことだ。
成田発ソ連経由~ギリシャに入りオランダまで。
欧州を南から北へ縦断する旅の途中、僕はパリに立ち寄った。
目当ては、ルーブル美術館の“三大美女アート”鑑賞。
旅程と列車ダイヤの関係で満足な時間が取れず、駆け足の訪問となる。
つまり無理を押して組み込んだのだから、
それなりの思い入れがあったはずなのだが、正直あまり印象は濃くない。
やはり、慌ただしかったせいかもしれない。
前述した通り元は城郭。
とにかく、やたらと広いのである。
3つに分かれた展示スペースのフロアはそれぞれ地下1階と地上3階。
しかも各フロアが中規模の美術館並み。
乱暴に言えば12個の美術館が合体したようなものだ。
当時は日本語の案内が乏しく、どこに何があるのやら。
限られた時間で探し回らねばならず四苦八苦。
楽しむより焦りが先に立った。
ようやく辿り着いた「モナリザ」は、人だかり越しではあまりに遠く小さい。
「ミロのビーナス」はアメリカ人団体観光客の壁に囲まれていて近づけない。
またどちらもレプリカを見過ぎていたせいか、感激は薄かった。
一方、大階段の踊り場にすっくと立つ「サモトラケのニケ」には息を呑んだ。
「サモトラケ」は発見地の島の名前。
「ニケ」はギリシア神話のキャスト。
神々の父・ゼウス、軍神・アテナの使いで、勝利をもたらす幸運の女神である。
古代世界で広く人気を博し、崇拝されたという。
それがなぜ壊されたのか。
詳細は不明ながら“時の趨勢”は無視できない。
ギリシアの気風を受け継ぐローマが地中海全域を治める大国に成長し、
広大な領土と多民族を抱えるようになると、安定のため「象徴」が必要となる。
それが「唯一の皇帝」と「唯一の神」。
統治システムは共和制から帝政へ。
信奉者が拡大していたキリスト教は公認から国教へ。
古(いにしえ)の神々は次第に廃れ、神殿・モニュメントは荒廃していった。
そんな背景がある。
制作時期は紀元前2世紀と推測され、作者は不詳。
1863年、欧亜を分かつエーゲ海の島で見つかった。
まず胴体が掘り起こされ、その周囲に118個のパーツが散乱。
大理石の欠片の殆どは左翼の一部と判明し、修復再現。
右翼の構成物は散逸、左を参考に形成復元された。
彼女は、頭も、両腕も欠くいわば「不完全品」。
にも拘わらず、問答無用の「説得力」を有していた。
風に煽られ棚引く薄布が張り付いた美しい肉体。
背中には力が漲る両翼。
天窓から降りそそぐ光の中に浮かび上がり、
備わった陰影が大理石の印象を有機体に変える。
とても2000年前の代物とは思えない。
まるで血が通っているかのような錯覚を覚えた。
ホントはどんなポーズを取っていたのだろう?
どんな顔をしていたのだろう?
きっと美人に違いない!
観る者の想像を掻き立てずにはおかない「サモトラケのニケ」。
上掲イラストは、ルーブルの女神に捧げる拙いオマージュと捉えてもらえたら幸いである。
今晩は
当方も『ニケ』に魅せられました
圧倒的な存在感
あの場所は彼女に最もふさわしい場所だと思います
ルーブルを再訪出来るなら彼女を一番に見たいと思います
初めてになりますでしょうか?
今後とも拙ブログをよろしくお願いいたします。
さて、サモトラケのニケ。
本文でも書きましたが素晴らしい芸術品。
おっしゃる通り、あの場所の演出も秀逸。
youtubeより動画を貼り付けましたが、
現地での感激には及びません。
もちろん拙作イラストなど足元にも及びません。
また、この目で観てみたいものです。
では、また。
60過ぎて海外旅行の経験がない私には
欧州の旅は夢のまた夢ですね(悲)。
沢木耕太郎さんが言ってた様に
海外旅行は若い時にするべきだって言葉が、今になって身に沁みます。
ところで、”ミロのビーナス”や”サモトラケのニケ”で思い出したんですが、高校の歴史教科書に載ってた、大男が若い女を強引に抱き寄せる彫像が印象に残ってました。
乏しい記憶を元に調べたら、ローマのボルゲーゼ 美術館に収められてる”プロセルピナの略奪”って作品で、写真で見ても肌の質感がこっちまで伝わってくる程です。
こちらは、紀元前ではなくルネサンス期に、若干23歳の青年が作ったものとされますが、この時代のイタリアも優れた芸術家や数学者を輩出してたんですよね。
さてとパリ五輪では、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか?何だか楽しみになってきました。
プロセルピナの略奪、
僕も素晴らしい作品だと思います。
あの肉感・質感はとても大理石と思えません。
ご存じのとおりルネサンスは、復活、再生。
中世キリスト教の鬱屈した表現や価値観を覆し、
古代世界のダイナミズムを見倣った、
温故知新文化運動。
プロセルピナの略奪もやはりギリシア神話と
古代芸術を手本としたものだと思います。
海外旅行、
確かに今の年齢では僕も尻込みしてしまいます。
国内あちこち旅をするのがいいですね。
数冊の文庫本と万札の帯封を持って、
全国の競艇場を旅打ちで回りたいですね。
パリ五輪、
1つでも心動かされるプレーを観たいもの。
僕も期待しています。
では、また。