つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

瞳の誘惑。~ジルベール・コクトー。

2020年05月01日 10時37分25秒 | これは昭和と言えるだろう。
先日の散歩中、一枚のポスターに目が留まった。

「読売新聞」の企画連載「時代の証言者」5月下旬スタート編を告げる一角。
グレーの髪も美しい女性の近影。
「竹宮惠子(たけみや・けいこ)」さん(70)とある。
昔、読み耽った少女マンガの金字塔、「風と木の詩(うた)」の作者が、
古希を迎えた事を知り、時の流れを感じた。

「竹宮惠子」氏については、『マンガで革命を起こす』と見出しが付いた、
同ポスターの紹介文から引用して代わりとする。

< 1970年代、少女マンガの世界に変革が起きます。
   定番だった薄幸の美少女もの、学園恋愛ものなどと一線を画した
   文学性、表現力を持つ作品が登場します。
   中核になったのは、竹宮さんら女性マンガ家たち。
   男性中心の価値観に転換を迫ります。
   「風と木の詩」「地球へ…」の大ヒット後、大学の教授や学長を務め、
   マンガ原画のデジタル保存活動にも取り組みます。その歩みを語ります。 >

代表作「風と木の詩」は、
多くの方がご存知とは思うが簡潔に紹介したい。

時代設定は19世紀末のフランス。
プロバンス地方の都市・アルルの学院(男子校)、マルセーユ、パリなどを舞台に、
思春期の多感な少年達を中心とする物語。
昭和51年(1976年)『週刊少女コミック』で連載開始、途中掲載誌を変え、
昭和59年(1984年)で完結をみた全2部構成の大河ロマン。
「(セックス込みの)少年愛・同性愛」、「性的虐待」、
「近親相姦」、「人種差別」、「貧困」。
物語には、当時のタブーに触れる要素がいっぱい。
しかも、発表の場が青年誌ではなく、小学館発行のメジャー少女誌。

それは、衝撃を与えたと思う。
まさに、革命だった。
今回の本題は、その「風と木の詩」と、
僕(りくすけ)の出逢いのハナシである。

あれは、中学2年のある日。
雨がそぼ降る薄暗い夕方だったと思う。
部活帰りに、今は無き「奈田文房具店」の前を通りかかった。
このお店は、習字道具、半紙、文房具全般に、
プラモデルや玩具、雑誌も取り扱っていて、度々、訪れる定番スポット。
店頭にはブックスタンドがあり、各最新号が表に見えるよう展示されていた。
「少年ジャンプ」が入荷しているかどうか確認しようと、
僕は、ガラス戸に近づいた。

そして、魅入られてしまった。

目当ての少年誌の隣に置かれた、一冊のノート。
表紙に描かれた、射るような瞳の前から動けなくなった。

濡れそぼるバラの花や荊に囲まれた奥から、
こちらを凝視していたのは「ジルベール・コクトー」。
気が付くと、僕はそのノートを手に取り購入していた。

美少年とは思わなかった。
だが女性でもないと思った。
人ならぬ美しい生き物。
---そんな気がした。

数日後、それが「風と木の詩」の主人公の一人と知る。
僕は、単行本を集め、読み慣れた少年マンガにはない、
妖しく壮大な世界に没入しページを捲ったのである。

「ジルベール」と邂逅したノートは、
おそらく、文具メーカーのタイアップ商品だろう。
実際の画は、前掲拙作と構図・デザインが異なる。
また、何十倍も素晴らしかった事は言うまでもない。

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