冷たい雨が降る昨日(2024/01/12)の午後、
金沢へ向かい車を走らせていたところ助手席に置いたスマホが鳴った。
電話をかけ直すため、一旦バイパス下の運動公園を目指す。
そこは冬季閉鎖されていて駐車場には入れない。
側道に車を停めようとすると路面を歩く白い鳥を発見。
大鷺(ダイサギ)である。

体長は 1m近く。
羽毛は白一色で、脚と首、嘴(くちばし)が長い。
かなり近づいても道の真ん中を悠然と闊歩している。
彼は解っているのだ。
人っ子一人いない冬は、ここが害のない「楽園」だということを。
大鷺は、アジア南部~オーストラリア~南北アメリカなどに広く分布。
日本には夏鳥として渡来する個体もいて夏の季語の1つだが、
季節的な移動をせず、同じ地域に一年中生息し繁殖をする「留鳥」も少なくない。
これを「冬鷺」とか「残り鷺」と呼ぶとか。
鷺の食物は、魚類、ザリガニ、カエルなど水辺の小動物。
近くの水田や川が、いい餌場になっているのだろう。
雪が積もれば辺りに溶け込んでしまうかもしれないが、
曇天の下、枯野に囲まれていれば実によく目立つ。
観察しながらシャッターを切るうち、能登のいで湯のエピソードを思い出した。
<時代を遡ることおよそ1200年、薬師嶽の西側で温泉が湧き出しました。
これが和倉温泉の開湯となります。
しかし、それから250年程が経った永承年間(1046年~1053年)に地殻変動が起こり、
湧き口が沖合60メートルの海中に移動し、湯の谷の温泉は枯れてしまいました。
ところがある日、和倉に暮らしていた漁師夫婦が、ぶくぶくと泡立っている海に、
傷ついたシラサギが身を癒しているのを見つけます。
不思議に思って近づき海に手を入れると、熱い温泉だということがわかりました。
これが“湯の湧き出づる浦(涌浦)”ということで、
和倉の海で温泉を発見した最初といわれています。>
(※和倉温泉観光協会・和倉温泉旅館協同組合HPより抜粋/引用)
全国各地の温泉場では、しばしば白鷺が源泉の発見に寄与した故事を耳にするが、
「地殻変動」が関わるそれは、あまり見かけた記憶がない。
そんな伝説を持つ石川県七尾市の和倉温泉は、
現在(2024/01/13)すべての温泉旅館が休業に追い込まれている。
「令和6年能登半島地震」の影響だ。

不意に鳥が大地を離れた。
僕との距離が危険レベルに達し、逃げ去ったのである。
あっという間に舞い上がり遠ざかってゆく。
その飛翔を見送りながら、下手な歌を詠んでみた。
冬鷺や 揺れ来りなば 翼持ち
空へはばたく 君を羨む
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