
通行人に脱原発などを訴える「脱原発ネットワーク茨城」のメンバーら=2013年12月、つくば市で
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20140325/CK2014032502000152.html
「原発は重要なベースロード電源」と位置付けようとする政府に、東海第二原発(東海村)再稼働に向け準備を急ぐ日本原子力発電(原電)-。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から三年、「大きな力にはかなわない」と、脱原発を訴える県内の市民グループは現状に危機感を強めている。ただし、絶望はしていない。四月には風船を飛ばして、放射性物質の拡散を考える催しを開く。草の根の運動は続いている。 (松尾博史)
「原発事故の原因や責任があいまいなままで、収束への対応も生ぬるい。政府による原発の再稼働や輸出の話はあり得ない。無関心の人も多い」つくば市の市民グループ「脱原発ネットワーク茨城」の共同代表、小張(おばり)佐恵子さん(61)は、もどかしさを隠せない。グループは、原発事故後の二〇一一年夏に発足した。メンバーは約二百五十人で、不偏不党を基本方針としている。小張さんは「考え得るあらゆることをやってきたが、成果が見えづらく、つらい。電力会社や政府などの原発を推進する側はお金や力を持っているので、かなわない部分もある」と苦悩を語る。しかし、「絶望はしていない」と、共同代表の一人、長田(おさだ)満江さん(77)。特定秘密保護法の成立や集団的自衛権の行使容認などを目指す安倍政権を批判し、「『安倍政権はおかしい』と思う人も出てくると思う。頑張れば、時を味方にできるかもしれない」。日本で最初の「原子の火」がともった県内には、原子力関連施設が集積する。脱原発グループは、原子力が身近な街ならではの困難さと闘っている。「原発事故からくらしを守るネットワーク」代表を務める東海村議の相沢一正さん(72)は、「原発に反対の立場でも、口をつぐんでいる住民もいる。反対の運動を広げることには困難が伴う」と明かす。東海第二原発が廃炉になった場合、村の財政や住民の仕事に影響する可能性があるからだ。ただ「原発に反対する若い人が増えている印象」と手応えも感じている。相沢さんらのグループは県内の脱原発グループなどと協力し、四月二十七日に東海第二原発近くの海岸から、風船千個を空に放つイベントを計画している。風船の行方を確認することで、原発で事故が起きた際の放射性物質の拡散状況を考える手掛かりにする。相沢さんは訴える。「東海第二原発の問題は県内はもちろん、東日本に住む人にとってもひとごとではないと知ってほしい」・・・と。