きょうの潮流
自分は生まれてからほとんどいつも何かしらとたたかっていた。自由のため、平等のため、基本的人権のために。いまそれは若い世代に引き継がれている―▼今年7月に80歳で亡くなった米下院議員のジョン・ルイスさんは公民権運動の闘士でした。非暴力の学生組織の委員長を務め多くの運動に参加。1963年のワシントン大行進では23歳の最年少演説者として「目覚めよ、アメリカ。私たちはもう待てない」と訴えました▼頭の骨を折られたアラバマ州セルマのデモ行進。「血の日曜日」といわれ、警察の激しい暴行が暴かれたことは、後の投票権法の成立を後押ししました。彼の道のりは全米図書賞(児童文学部門)を受けたコミック『MARCH』に描かれ、次世代の手にとられています▼人びとを「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動に立ち上がらせたジョージ・フロイドさんの死から半年。いまも新たな目覚めをもとめる声は米国をはじめ世界でも▼初の女性副大統領となるカマラ・ハリスさんは、勝利演説のなかで民主党の大先輩でもあるルイスさんの言葉を引いて呼びかけました。「民主主義は状態ではなく、行動である」▼自由と平等と正義をかちとる未完のたたかい。闘病の最後の日々でさえ、それを受け継ぐ若者たちを励ましていたというルイスさん。「あきらめてはいけない、絶望してもいけない。知識と勇気をもって」。苦難をのりこえてきた先人のマーチ。それは歴史が進むことを教えてくれます。
不起訴なら特捜に無駄な役所認定を/政界地獄耳
★唐突ともいえる東京地検特捜部の「桜を見る会」前夜祭のカネの動きについて前首相・安倍晋三事務所関係者ら20人余りが事情聴取を受けていることが分かった。23日の読売新聞のスクープだ。しかし、この日の1面トップは「Go To札幌除外へ」で、「安倍前首相秘書ら聴取」は肩だ。普通のセンスなら1面トップを飾る記事がなぜ肩になったか。そして、その2つの記事の真ん中には「首相の厚遇 二階派の春」と題した記事。首相・菅義偉、党幹事長・二階俊博、そして安倍の扱いから複雑な政治の機微が見え隠れする。読売の後にはNHKが昼ニュースでそれ以上の材料を出してきた。いずれも親安倍メディアと揶揄(やゆ)されてきた媒体だ。
★政界ではさまざまな分析がある。ある自民党ベテラン議員は「なにしろ桜を見る会は森友・加計学園事件とは違って安倍事務所本体の疑惑だから。ほかの政治家に累が及ばない安倍案件だ。最近、元気になって露出を増やしている前首相に政権がけん制したのではないか。ポスト菅は安倍というムードを断ち切りたい」と分析する。一方、「秘書のミスとして収支報告書の修正、最悪でも秘書が起訴されるだけ。告発に対しての検察のポーズで捜査の体裁を取っただけ」と楽観論を解説する議員もいた。
★しかし、国会であれだけ問題になり、安倍自身が事務所からの説明として会見でも国会の答弁でも前夜祭での「安倍事務所からの支払いはない」と言い続けたものの、報道では安倍側から少なくとも800万円以上を負担したことがホテル側作成の領収書に記載されていれば、既に安倍の答弁が虚偽だったことがはっきりした。また「桜を見る会」には政府の催しでありながら怪しげな招待客たちが相次ぎ、マルチ商法の広告塔のようなありさまだったことは既に明らかになっている。これを不起訴にしたり大したことはないとするならば行革相は東京地検特捜部を無駄な役所に認定すべきだ。(K)※敬称略