「国民の皆さんに不安を与え、申し訳なく思う」──。
5日の参院本会議で、そう陳謝したのはマイナカード普及の旗振り役である河野デジタル担当相だ。マイナカードのトラブル続出に「申し訳なく思う」のなら、今すぐ活用拡大を止めて欲しい。家族内で同じ口座を登録した例が多数見つかった問題も、「マイナポイント欲しさ」のデタラメが横行し、血税2兆円超を投じた事業がアダになった可能性がある。
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マイナンバーと紐付けた公金受取口座に本人ではない家族名義の口座が多数、登録されていたことが発覚。公金受取口座は本人名義と決まっているが、子どもに代わって親の口座や家族で使用している口座を登録した事例が相次いでいる。
さらに河野氏は「(公金受取口座を)赤の他人に紐付けすることができるかといえば、それはできる」とシレッと肯定。なりすまし犯罪を誘発する恐れがあるにもかかわらず、「(公金受取口座の登録は)本人の操作によるものであるということを前提に、特別な制御はしていない」(デジタル庁の楠正憲統括官)というから、ムチャクチャだ。再発防止に向けた道筋も不透明だ。
本人ではない家族名義の登録は何件あるのか。松野官房長官が5日の会見で「件数や調査の見通しはデジタル庁に聞いてもらいたい」と言うと、所管大臣の河野氏は「同一口座に複数の人が紐付けられていて名字が同じだということは分かっておりますが、その中の事情については分かりません」などとノラリクラリ。DV夫が別居中の妻の給付をかすめ取る恐れだって否定できないのに、「よく分からん」とはいくら何でもお粗末すぎる。
「国民がこしらえたニンジン」エサに普及促進
デジタル庁は家族名義の口座登録の動機に注意を払っていないが、ネットにあがった理由は「子どもの口座開設に手間がかかる」や「家族への給付を一元的に管理したい」などさまざまだ。加えて、マイナカードがあれば0歳児でも公金受取口座に登録可能。登録すれば、9月末まで期限延長された7500円相当のマイナポイントを受け取れる。親がポイント欲しさに、子どものカードに自分の口座を紐付けるケースが横行した可能性もある。
「小さな子どもにもポイントを付与する仕組みですから、ポイント欲しさに家族内で同じ親名義の口座登録が多発する事態はある程度、予想できたはず。そもそも、カードを取得したくない人もいるのに、ポイントという『ニンジン』を鼻先にブラ下げて普及を促進すること自体、違和感が拭えません。ポイント付与といっても原資は血税。いわば『国民がこしらえたニンジン』です。保険証との一体化で実質的に取得を強制するのであれば、普及促進目的のポイント事業は一体何だったのか。このムダを説明すべきです」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏)
マイナポイントやテレビCMなど普及促進事業につぎ込まれた血税は2兆円超。カード普及を急ぐあまり、「ポイント欲しさ」の多少のインチキに目をつむった結果が、今回の事態を招いたのではないのか。バカげたカード普及策には、もうウンザリだ。
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