大阪出入国在留管理局(大阪市)の常勤医師が酒に酔った状態で診察していた問題を巡り、大阪入管職員が診察日の翌日に作成した報告書とみられる文書の存在が明らかとなった。6日、野党が行った出入国在留管理庁(入管庁)へのヒアリングの中で、仁比聡平参院議員(共産)が公表した。(望月衣塑子)
◆猫なで声で診察、呼気検査でアルコール検出
一連の問題で、斎藤健法相は「事実確認には時間がかかる」とし、国会などへの報告をしてこなかったが文書には医師の呼気検査の結果などが詳細にわたって記されていた。野党側は国側が早い時期から状況を把握していた可能性が高まったとして、法相の発言の矛盾を追及し、辞任を求めていく構えだ。
仁比議員が、入管庁関係者から入手したとして公表した文書は、A4判5枚と添付資料からなる。大阪入管の入国警備官名で、同入管の診療室長に宛てていた。医師からアルコールを検出した翌日の今年1月21日の日付があった。
文書の記載によると、医師は1月20日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた後、午後3時過ぎに登庁。職員に菓子や即席麺などの手土産を配る一方、笑みを浮かべて陽気に振る舞い、落ち着きや冷静さを欠いていた。診療対象者の1人目には、健康診断結果を通知したが、まぶたが重く、猫なで声だったため、医師を含め診療室にいた計5人の呼気検査を実施した。
医師は計3回の検査で、酒気帯び運転の基準値を上回る呼気1リットル中0.22〜0.36ミリグラムのアルコールを検出。すると医師は「なんすかこれ。なんなんですか」などと言い、飲酒の有無は明言しなかった。入管側は医師に年次休暇を取るよう求めたが「失礼なことを」「無断欠勤でもいい」と言って午後4時に退室、欠勤扱いになったという。
野党ヒアリングで、文書の内容の真偽について聞かれた入管庁の担当者は「お答えできない」と、回答を避けた。
斎藤法相は2日の衆院法務委員会で、医師の飲酒問題を把握したのは「2月下旬」と述べていた。入管庁は4月、医療体制の改善策として「大阪の常勤医師1名(令和4年7月増)」と記した資料をまとめたが、当時、既に常勤医師は診療から外れていた。入管難民法改正案は3月に国会提出され、法相は「常勤医師の確保等の医療体制の強化や職員の意識改革の促進などが着実に表れてきている」(4月19日の衆院法務委員会)などと、入管改革を国会で繰り返しアピールしていた。
◆ウィシュマさん遺族「医療整備、全くうそだった」
名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で2021年に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=の妹のポールニマさん(28)は6日、記者会見し大阪入管の常勤医師が酒に酔って収容者を診療した問題について「(斎藤)法相は姉が亡くなったことで医療体制を整備したといっていたのに全くうそだった」と批判した。
医師は、ウィシュマさんの死亡を受けた収容施設の医療体制強化の一環として大阪入管が昨年7月に雇った。ポールニマさんは「法相は問題を2月に把握しながら公表せず、そのまま改正法案を通そうとしている。無責任だ」と話した。
2人は同日、法相に面談を申し入れたが受け入れられなかった。もう1人の妹ワヨミさん(30)は「入管の医療体制の改善が進んでいるのか聞きたかったが会えずに残念」と話した。
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