東京株式市場で9日、平均株価が一時、3万7000円の大台を超え、バブル期後の最高値を更新した。円安の追い風が吹く中、大企業の業績が大幅に上向いていることが株価を押し上げた。一方、中小事業者は倒産が増え実質賃金もマイナスが続く。経済を下支えする中小が苦しみ、大企業ばかりが潤ういびつな経済構造を早急に是正せねばならない。
調査会社の東京商工リサーチによると、2023年の企業倒産は前年比35%増の8690件で1992年以来の増加率を記録。1月も前年同月比23%増の701件で22カ月連続の増加となり、倒産増に歯止めがかからない状況だ。このうち負債総額1億円未満が7割超を占め、飲食を含む小さな企業の苦境が深刻化している。倒産増の背景には原材料費高騰やコロナ禍対応で借り入れた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済、人手不足がある。原材料費高騰を巡っては、取引先の大企業が価格転嫁に難色を示したため、納入品を十分値上げできない中小の経営が追い込まれるという構図が常態化している。国は大企業への監視を強め、身勝手な振る舞いが目に余る場合、法に基づく厳正な措置をためらってはならない。ゼロゼロ融資については業績の悪い企業を延命させたとの指摘はあるが、従業員が簡単に転職できる環境が整っていない中、返済が滞った企業を安易に経営破綻させることは許されない。国や自治体、地域の金融機関は、中小で働く人々の暮らしに寄り添い返済負担の軽減に知恵を絞ってほしい。24年3月期の大企業決算は輸出関連を中心に業績見通しの上方修正が相次ぎ、最高益となる企業が増えるのは確実だが、好業績は政府・日銀による円安政策という強力な下支えも大きな要因だ。今年の春闘で大企業が大幅賃上げに踏み切るのは当然としても、それだけでは不十分だ。内部留保としてため込んだ利益を積極的に設備投資や研究開発投資に回し、資金の好循環を促すことは社会的義務でもある。雇用者の約7割を占める中小で働く人々や、非正規雇用者はいまだ、物価高騰に苦しみながら暮らしている。格差が広がる不公平な経済構造を決して放置してはならない。