政府は15日の閣議で、第2次岸田再改造内閣の副大臣26人・政務官28人の人事を決定した。2001年に現行の副大臣・政務官制度が始まって以来初めて、内閣発足時の女性起用がゼロとなった。政府は「社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合」を20年代の可能な限り早期に30%に引き上げる目標を掲げている。目標に逆行する人事に、自民党内からさえも「さすがにひどすぎる」と批判の声が上がっている。
◆旧態依然の「派閥推薦」重視の結果か
岸田文雄首相は今回の内閣改造で、閣僚には過去最多と並ぶ5人の女性を起用した。ただ、首相を除く閣僚・副大臣・政務官の「政務三役」の計73人で見ると、女性比率は7%弱にとどまる。国会議員全体での女性比率は約16%、自民の約12%にも届いておらず、政務三役への登用率の低さが際立っている。
計11人の副大臣・政務官が起用された昨年8月の内閣改造と対照的な人事となった背景には、党内の各派閥からの推薦を基に調整したためだとみられる。副大臣経験者の女性議員は「派閥推薦がそもそも男性ばかりだった」と指摘。「首相は当選回数を無視して女性閣僚を増やしたのに、副大臣・政務官の女性数を減らしたら意味がない」と不満を漏らす。
◆口をそろえて「適材適所」と説明 野党から疑問の声
女性副大臣・政務官ゼロの評価を記者会見で問われた鈴木俊一財務相は「適材適所でやった結果、女性がいなかったということだと思う。女性が活躍する場を持ってもらうことが望ましい」と言葉を選んで話した。加藤鮎子女性活躍担当相は会見で「副大臣・政務官の人事にコメントすることは控える」と述べるにとどめた。一方で「女性が有権者の52%を占めており、政策決定への女性参画が拡大することは、多様な国民の意見を反映させるために必須だ」と付け加えた。
野党からも「女性活躍を推進する気概が全く感じられない」(立憲民主党の西村智奈美代表代行)、「あれだけ人数がいても自民の女性議員が育っていない」(日本維新の会の藤田文武幹事長)と疑問視する声が上がっている。
首相は記者団に、「適材適所でご覧のような男女バランスとなった。チームとして人選した結果だ」と釈明。「女性ならではの感性」で職務に当たることを女性閣僚に求めたこともあり、一貫性を欠いた人事にさらに批判が高まりそうだ。(小椋由紀子、山口哲人)
東京家政学院大の野村浩子特任教授(女性活躍推進)の話 政治分野で女性リーダーの登用が著しく遅れるなか、女性大臣を5人増やして目立つ所を整えただけで、次の大臣候補となる副大臣・政務官が異例のゼロというのは女性活躍に逆行しており、考えられない人事だ。政府は東証プライム市場の上場企業に2030年までに女性役員30%以上を達成するよう求めているが、政治の世界こそ「隗より始めよ」だ。女性をリーダー層に積極的に引き上げていかないと、多様性のある意思決定は実現できない。
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