不振のロシア経済に西側の経済制裁が重なることになれば、国民生活は苦しくなる。プーチン政権は欧米との話し合いでウクライナ危機の収拾を図り、内政に軸足を移すべきだ。
二〇一四年のクリミア併合を受けた欧米の経済制裁が響き、ロシア経済は低迷する。一般世帯の可処分所得は減り、これを補うために家計の債務は膨らんだ。
そこに物価高が追い打ちをかける。中央銀行は昨年、政策金利を立て続けに引き上げたが、年間インフレ率は8%を超え、年率4%以内に抑えるという目標には遠く及ばなかった。
金利上昇による景気の一層の冷え込みが懸念されるばかりか、ウクライナ危機に伴って通貨、株式も急落している。
ロシアがウクライナに軍事侵攻した場合、クリミア併合時と比べて格段に厳しい制裁を新たに科す、と欧米は再三にわたって警告している。国民生活に大きな負荷がかかるだろう。
ロシアの独立系世論調査機関「レバダ・センター」が先月に発表した調査結果によると、今年起こり得る危機として、経済危機を予測する人は63%に上り、二年前より14ポイント増えた。
北大西洋条約機構(NATO)との軍事衝突を懸念する人は25%で、二年前より倍近く増えた。ウクライナとの軍事衝突や民族紛争を予測する人も軒並み増えている。社会に不安感が募っていることをうかがわせる。クリミア併合時にはロシア社会に高揚感が広がったが、今は雰囲気が一変した。国民は戦争を恐れている。
プーチン政権はウクライナ国境に十万人規模の大軍を集結させる砲艦外交によって、欧州安全保障に関する交渉の場に欧米を引きずり出した。
ウクライナに隣接するベラルーシではベラルーシ軍との合同軍事演習=写真、AP(ロシア国防省提供)=も実施し、圧力を強めている。武力の威嚇は許し難いし、軍事侵攻はなおさらである。
それよりプーチン政権がなすべきは、足元を見据えて民生の向上を図ることだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます