「今後、ジェンダー平等が達成されて、誰もが安心して暮らせる社会になることを、誰もがより幅広い選択肢を持てる社会になることを、そしてこれらが当たり前の社会になることを心から願っております」
秋篠宮家の次女佳子さまは10月、ガールスカウト日本連盟主催の式典でこのようにあいさつをされた。その後、「『少女と女性が自分らしく生きられる社会』の構築に向け、コミュニティーに変化をもたらした活動」に対する表彰式に出席。受賞者の中学生らの活動発表に熱心に耳を傾け、懇談もした。
佳子さまは近年、同様の発信を繰り返している。ガールスカウトの式典でこのようなあいさつをするようになったのは2020年からで、21年、22年も同様のあいさつをしている。今年9月に東北大であった「女子大学生誕生110周年」を記念する式典では、理系を専攻する女性が少ない現状に触れ、背景の一つに「社会の作り出す雰囲気がある」と指摘した。
側近によると、「ジェンダー平等」をはっきりと口にする佳子さまに対し、多くの団体から「佳子さまに来ていただきたい」というお出ましの願い出が来ているという。4月と8月に女子高校野球を観戦したのも、この延長上にある。佳子さまが、ジェンダー平等に取り組むような団体の良き伴走者になっている。
これらの発信に対して「『男子優先』の皇室制度を批判しているのではないか」「皇室にいる自身の境遇に重ね合わせているのではないか」といった論評もある。ただ、皇室関連の執筆を続けるコラムニストの矢部万紀子さんは、ジェンダー平等を巡り世の中は大きく変わっていること、佳子さまがこれまでも会見などで率直に自らの意見を述べてきたことを挙げ、「世の中の空気を普通に感じ、普通に表現している。今を生きる一人の女性としての行動だと思う」とみる。
「普通」の発言が際立って見えるのは、皇室とジェンダー平等という言葉が馴染(なじ)まないままになっているからにほかならない。
岸田文雄首相は昨年1月、安定的な皇位継承策を検討していた政府有識者会議の答申を政府案として国会に報告したが、国会が求めていた女性・女系天皇の是非などの皇位継承策を先送りし、皇族数確保策が軸となっている。
女性天皇賛成の割合が9割近くを占め、女系天皇も容認が8割に上ったという世論調査もある。ヨーロッパ諸国の大半は、男女平等の観点から女性の王位継承権を認めている。しかし、日本では女性・女系天皇の議論すら避けられたままだ。
社会ではジェンダー平等に向けた流れが強まっている。このまま皇室と社会が大きく乖離(かいり)したままで良いのかどうか。あらためて考える時期に来ているのではないだろうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます