公職選挙法違反(買収)の罪で有罪が確定し、当選無効となった元大阪市議に対し、最高裁は同市が支払った議員報酬の全額返還を命じた。納税者から見れば常識的な判決だ。地方議員に限らず当選無効となった国会議員にも適用できるよう議論を進めてほしい。
この元市議は2019年の大阪市議選で当選したが、運動員を買収したとして逮捕・起訴され、20年に有罪が確定し、失職した。
元市議は当選無効となるまでの間、議員報酬や期末手当合わせて約1千万円、政務活動費約400万円を受け取っていた。
欠席日数に応じた報酬減額を条例で定める自治体もあり、裁判では議員報酬などの返還をどこまで請求できるかが争点になった。
一、二審判決は元市議に、逮捕・勾留中の21日分の報酬と未使用の政務活動費の計160万円に限って返還を命じていた。
それに対して、最高裁は「民主主義の根幹をなす選挙の公明、適正を(買収で)著しく害した」と指摘し、「(任期開始に)さかのぼって職を失った人が市議として活動していたとしても市との関係で価値を有しない」と全額返還を命じた。納得できる判決だ。
問題は、こうした最高裁の考え方が国会議員の給与にあたる「歳費」にも当てはまるかどうか。身分が保障された国会議員の場合、憲法49条に「相当額の歳費を受ける」と規定されているためだ。
国会議員には歳費以外にも調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)や立法事務費などが支給される。仮に有罪確定し、当選が無効になっても歳費などを返還請求できる法制度はない。
19年の参院選広島選挙区での大規模買収事件で当選無効となった河井案里元参院議員を巡り、広島県民が国に歳費返還を請求するよう求めた訴訟があったが、東京地裁は「国民が国に違法な公金支出の是正を求める法律上の規定はない」と訴えを却下している。
しかし、候補者が買収などの罪で有罪が確定した場合、当選を無効にする公職選挙法の規定は、国会議員にも等しく適用される。それを踏まえれば地方議員に限らず当選無効になった国会議員も歳費を返還すべきではないか。
歳費法や国会法などを改正して議員歳費などの支給停止や返還請求ができるよう、法整備に向けた議論を速やかに始めるべきだ。
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