穴にハマったアリスたち

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感想:映画「GANTZ: PERFECT ANSWER」

2011年05月04日 | 映画・コンサート・展示会・テーマパーク
前編・後編、両方とも見れた。原作は連載分まで読んでます。小説やアニメは未読。そんなステータス。

■GANTZ: PERFECT ANSWER

「ヤングジャンプ」連載の有名漫画。
訳も分からぬままに「黒い玉」=「ガンツ」に召喚された主人公・玄野くんが、訳も分からぬままに謎の「星人」と戦い続けるお話です。
映画の第1部では導入から千手観音戦まで。
現在公開中の第2部は、千手との戦闘で倒れた加藤君を生き返らせ、このリアル・モンスターハンターから脱出するために頑張るお話。
原作とはかなり違った展開ですが、基本的にバンパイア戦が下敷きになってる感じ。

連載の方がまだ終わっていない中、かなり良いまとめ方をしたと思います。
ただ、人気漫画原作で、しかもこの手の「謎の設定」を持つお話は、どう映画化しても叩く人は出てくる。
特に副題に「PERFECT ANSWER」と銘打ってることもあってか、「謎が解決していない」というコメントを各地で観ました。

「ガンツとは何なのか」「何故戦わないといけないのか」。
これらに関する回答は、原作でもされてない…というか、「そんなものには意味がない」と問題提起されてます。
手元に本が無いのでうろ覚えですが、ガンツの正体を探る記者が、ようやくのことで真相を知っていると思しき人物と接触した回で、

意味深な人:
 「別に隠すことではない。どんどん公表してくれ」
 「精神に異常のある娘が呟いたうわ言を解析したら、ガンツが作れた」
 「アカシックレコードと接続して語ってるんだよ」
 「戦ってる理由?戦いの様子は大金持ちの賭けに使ってたんだ」
 「さあこれで謎は全部だ。自由に記事にしてくれ」
記者:
 「そんなもの、どう記事にしろっていうんだ…?」
意味深な人:
 「CNNもBBCも同じことを言って手を引いたよ」
 「HAHAHAHAHAHA!」

こんなやりとりがある。
「理由」が分かったところで意味がない。謎は解けたが、だからなんだ。
(この「理由」はただの誤魔化しであって、後々「真の理由」が明かされるかもしれません。でもここで肝心なのは「謎が公開されるかどうか」ではなく、「理由」が単に分かったところで無意味、というところ)

ジャンプ連載の「バクマン」でも、ちょっと似たようなやり取りがあったと思う。
これまた、うろ覚えですが、

サイコーさん:
 「この漫画にはリアリティがない。特殊能力の理由づけがない」
シュージンさん:
 「じゃあルフィは何でゴム人間なんだ?」
サイコーさん:
 「それは悪魔の実を食べたから」
シュージンさん:
 「悪魔の実を食べたら、何でゴム人間になるんだよ」

みたいな。正論だと思う。
別に「どこまで突き詰めても謎は謎のままだ」なんてくだらない哲学を言いたいのではなく、「それでは説明になってないのに、何か納得してしまってる」点が問題。
いいんじゃない?戦ってる理由は「金持ちの道楽」。「ガンツ」の正体は、どこかの娘さんのうわ言で作られたもの。
ちゃんと説明がされてるし、謎はない。
でも納得する人はいないだろうし、面白くもなんともない。

「謎設定」なんてものは、結局はそういうものだと思う。謎解きそのものには大した意味はない。

(蛇足:
 この「説明されてるのに納得がいかず、あれこれ勘ぐる」というのが、現実世界では陰謀論の元になるのだと思う。
 それと、語弊があることを承知で書くと、勉強で躓くケースの一つにもなってると思う。「丸暗記は嫌だから、理由を理解したい」みたいな。
 ずっと以前に「原子があるなんて信じられない。どうして存在するのか」と聞かれたことがありました。
 学生レベルでは「あったからある。そういうものだ」以上の答えは無理じゃないかな。
 原因と結果に、意味なんざない。そこに意味を見出そうとすると、宗教や哲学の領分になる)

映画の劇中でも、玄野くんは星人から「何故、戦うのか」と問いかけられます。
玄野くんからすれば「訳の分からないガンツに命じられて仕方なく」なわけですが、殺戮される星人にとっては堪ったものではない。
向こうも懸命に抵抗する。結果、人間サイドにも死者が出る。それでも戦うしかない。

「争いはなくならない」と書くとかなり陳腐ですが、「何故、人は生きているのか」に近い問いだと思う。
生物は他生物を殺戮しないと生きていけない。何故殺さないといけないのか。そもそもどうして生まれてきたのか。
理由は説明できる。栄養を摂取するためとか、精子と卵子が結合して云々とか。でもそれは回答になってない。

ラストのオチはどうとでも解釈できるけれど、私としては上記のような感じです。
細かいところでは残念だった部分もあるものの(「これで終わりだと思ったら、まだあった」な絶望(ロボット倒しても中身の親がいたとか、大仏倒した後の千手とか)がほぼ丸々カットだったのは悲しい)、まぁ及第点以上の映像化だと思う。
特に、原作と変えることにより恐怖が増大していたり(初戦でスーツを着ていない!)、BGMをバックに説明抜きでミッションをこなしていく演出は良かったんじゃないかな。
夜間戦闘におけるフォトンブラッドの格好よさも、映像ならではだと思う。
原作者さんが絶賛していたのも(多少のリップサービスはあるでしょうが)納得。


(左画像)
GANTZ 1 (ヤングジャンプコミックス)

(右画像)
Sound of GANTZ PERFECT ANSWER


【蛇足1】

刀を振りまわしてる女子高校生様が格好良かった。敵も味方も。
いきなり覚醒して切りかかる優等生の娘さん素敵過ぎます。
「2年前に現役だった」ということは、当時は中学生とかでしょうか。どぎまぎする。
学生の娘さんが、巨漢を相手に五分以上にガチでバトル…とか、意外とハリウッド等々では見かけないですね。
何か規制でもあるんだろうか。需要がないとは思えないのだけれど。

その他「日常的な住宅街や電車の中で、周りを破壊しながらバトル」とかも、日本的だと思った。
古くは「ゴジラ」から続く流れですね。
個人的に、邦画のお涙ちょうだい人情物(特にノスタルジーや動物、病気に絡めたもの)は大嫌いなのだけど、こういう文化は好きなので売りとして残していって欲しいと思う。

【蛇足2】

「状況が分からず混乱→システムを理解する→組織的に抵抗開始→崩壊」という一連の流れが好き。
その後立て直す話はもっと好き。
そんなわけで千手観音やバンパイアをクライマックスに持ってきたのは、非常に納得がいきます。

それと、映像で見て千手観音の強さに唖然としました。
漫画だと効果線とかで誤魔化されてるけど、あの手の数とスピードで攻められたらどうしようもない。
作ってる側も、どうやって倒すのか説得力に困ったんじゃないかという勢い。

同様に、「ガンツ武器と通常武器による銃撃戦」も映像ならではの説得力があった。
ガンツ武器はトリガーを引いてから一定のタイムラグがあるせいで、同時に撃ちあってるはずなのに一方的に打ち込まれてしまう。
一方で、ガンツスーツの防御限界がくるまでは、通常武器のダメージは通らない。
そんなわけで酷く間抜けな一瞬が訪れる。
片方は「ぎょーん」「ぎょーん」と音がするだけの玩具を抱え、片方は効いていないのに無機質に連射を続けまくる…。

そしてタイムラグが経過する前に防御限界が訪れて崩壊する様が切ない。
直後、ラグが解消されて吹っ飛ぶ相手も悲しいし、それでも構わずに連射しまくる様子が恐怖。
あのシーンは意外と意外に盲点だったというか、面白かった。

【蛇足3】

Yahoo!映画のコメント欄に「これらの点が意味不明だった」という内容のものがあったので、失礼ながら投稿者の「謎」の部分を引用してみる。

[引用]
 ●謎その1
 たえちゃんが、「くろいボール」の4人のリストに載ってたのは何故?
 あれって過去に100点出した人だけじゃないの?
[引用終]

劇中で玄野くん自身が、「戦いから離脱させないため」と語ってます。
(100点を取って「解放」ではなく「復活」を選択させるため。要は人質)

[引用]
 ●謎その2
 ミッションのターゲットがたえちゃんになった意味がイマイチよく分からない???
[引用終]

劇中で「星人がやってくることを防ぐため」と説明されてます。

[引用]
 ●謎その3
 ニセ加藤は、千手観音星人なの?黒服星人なの?
 千手観音の事を父親って言ってたから千手観音だと思うんですが、手から刀が出てくる描写は黒服星人と一緒だし…うーむ?
[引用終]

ニセ加藤くんの言う「父親」は、加藤くんの実父。(映画版では加藤くんは親父さんを殺害し、服役している)
また千手なのか黒服なのかは、本質的に違わないかと思うし、区別する意味もなさそう。
一応、原作では「千手観音の中の謎の生き物」が千手観音星人なので、そいつが人型に潜り込んでたとか何とかでしょう。

[引用]
 ●謎その4
 黒服星人がGANTZにかけたあの液体って何ですか?
[引用終]

元々千手観音の持ってた武器。
確か映画の前編でも登場してたと思う。
それをなんでそこで採用したかは不明ですが、「正体が千手だと視聴者に伝えるため」「強力な武器の印象が強いので見栄えがする」くらいで、ストーリー上の強い意味(あれが対ガンツ用の神秘兵器といったような)はないと思う。

[引用]
 ●謎その5
 最後、GANTZの部屋で、玄野が加藤に向けて打ったXガンが、加藤を通り抜けて後ろのニセにしくんに当たったのは何で???
[引用終]

隙間から撃った。射撃の名手なんです。それ以外の理由があるんだろうか…?

[引用]
 ●謎その6
 あれだけ大爆発したGANTZの部屋が、即綺麗に元に戻ってたんですけど?(笑)
[引用]

人が復活するのと同じ理由。

[引用]
 ●謎その7
 最後、玄野がGANTZの中に入って、GANTZメンバーが全員生き返ったのは良しとしても、加藤の弟の歩とたえちゃんが生き返ったのは何でなん???
 二人ともGANTZメンバーじゃないよね???(笑)
[引用終]

ガンツメンバー以外は復活できないという説明はなし。
というか関係者しか復活できないとしたら、そもそもの電車事故の際に玄野くんも召喚できない。

[引用]
 ●謎その8
 結局、GANTZって何だったの???
 これが謎のまま終わったらパーフェクトなアンサーではないでしょう(笑)
[引用]

で、これは「理由づけそのものは無意味」が回答の一部だと思う。

【追記】

他サイト様で出ていた件も書いてみる。

 ●「黒い玉」を調査していた謎の人物は何?

警察だか公安だかの人。
「事故などの直後に人が失踪し、翌日何事もなかったかのように現れる」「同じ日に不可解な破壊事件が起きる」件を調査してた人。
劇中で説明されてる。

 ●なぜ卒業生が集められたか?

劇中の説明によれば「ガンツの電池切れを補充するため」。
「戦力を増強したかった」とほぼ同義だと思う。
(新品の玄野くんと置き換わったので、電池切れの件は解決。もっとも何でガンツを維持しないといけないかは謎ですが、そういうものなんでしょう)

 ●モデルさんの元に黒い玉が何故届けられたか?

上に同じ。
何で彼女が選ばれたかは、元々攻撃的だったとかなんでしょう。実際、率先して小島さんを狙い始めましたし。
「どうやって黒い玉を送りつけたのか」「どうやって彼女を操った(?)のか」と突き詰めていけばいくらでも出てくるけど、もはやそれは「どうやって復活させてるの?」「ガンツスーツの科学的根拠は?」と聞くに等しいと思う。


…総じて思うのは、劇中で説明されても見ている側は早々ついていけない、というところかも。
あと「説明が不要」(科学的根拠も宗教的根拠もないのだから、最後は「そういうものだ」で納得するしかない)の部分の切り分けの問題かなと。
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